猫の突然の血尿はストレスが原因⁉ 特発性膀胱炎の症例と治療ポイント

尿路

「血尿が出ている」「トイレに何度も行く」
そんな症状で来院した猫ちゃんに、検査をしても原因が見つからないことがあります。

今回は、新しい猫ちゃんを迎えたことをきっかけに発症した、
特発性(突発性)膀胱炎のマルちゃんの診察例を通して、
この病気の特徴と、治療・生活環境で大切なポイントを解説します。

症例:雑種猫のマルちゃん🐱

猫のマルちゃんは、待合室からずっとミャオミャオ、泣いて待っていました。

診察台では、瞳孔がまんまる。尻尾はボワッと、
タヌキのように膨らんでいます。

お母さん
お母さん

今朝から、急にマルちゃんのおしっこが真っ赤になったんです。

私(獣医)
私(獣医)

マルちゃん、かなり緊張してますね💦

お母さん
お母さん

そうなんです。もともと神経質な子なんですが、最近、実は子猫を迎えて、そのことの関係があまり良くなくて。さらに神経質になっています。


診察 🐱

私(獣医)
私(獣医)

興奮させないように、そ〜っと診察しますね!

お腹を触ってみても、膀胱は触れません。ほとんど尿が溜まっていないようです。

次に、超音波検査で膀胱の様子を確認してみましょう。


検査 🐱

超音波検査

猫の膀胱炎が疑われる場合、超音波検査は痛みが少なく、体への負担が少ない検査としてとても有用です。

超音波検査で分かること

  • 膀胱壁の肥厚
     炎症があると、膀胱の壁が厚くなっていることがあります。
  • 膀胱内の沈渣や結晶❄︎
     砂状の沈殿物や結石の有無を確認できます。
  • 膀胱内の異物・腫瘤
     腫瘍やポリープなど、膀胱炎以外の原因を除外できます。
  • 尿量の確認
     尿が溜まっているかどうか、尿閉の有無の評価が可能です。

私(獣医)
私(獣医)

超音波で確認すると、本来は薄い膀胱の壁が、かなり腫れて厚くなっています。
おしっこはほとんど溜まっておらず、膀胱結石は見当たりません。

お母さん
お母さん

あ!マル、今おしっこ出ちゃったみたいです!ごめんなさい、拭かなきゃ・・・💦

私(獣医)
私(獣医)

いえいえ、頻尿感と緊張で、マルちゃん、少し出てしまったようですね。
それより、採尿のチャンスです。そのおしっこを使って、尿検査をしましょう。


尿検査 🐱

猫の膀胱炎が疑われる場合、尿検査は原因の特定と治療方針の決定に欠かせない検査です。

尿検査で分かること

  • 炎症の有無🔥
     血尿や白血球の増加から、膀胱に炎症が起きているかを確認できます。
  • 細菌感染の可能性🦠
     細菌の有無を調べ、抗菌薬が必要かどうか判断します。
  • 結晶・結石の兆候🪨
     ストルバイトなどの結晶がないかを確認し、結石形成のリスクを評価します。
  • 尿の性状(比重・pH)
     尿の濃さや性質を調べ、特発性膀胱炎や再発リスクの判断材料になります。

診断 🐱

【 特発性(突発性)膀胱炎の疑い 】

私(獣医)
私(獣医)

尿検査では、炎症細胞や細菌、結晶成分は見つかりませんでした。
これらの結果から、今回は特発性(突発性)膀胱炎の可能性が高そうです。

お母さん
お母さん

特発性膀胱炎、って、何が原因でなるのでしょうか?!


特発性(突発性)膀胱炎とは?

特発性膀胱炎は、細菌感染や結石が見つからないにもかかわらず起こる膀胱炎で、特に猫に多くみられます。

⬇️ シュウ酸カルシウム結晶についてはこちらも参考にしてください 🐱

主な特徴

  • 尿検査で細菌や結晶が確認されない
  • 血尿、頻尿、トイレに何度も行くなどの症状が出る
  • ストレスが発症や悪化の大きな要因になることが多い

考えられている原因

  • 環境の変化(引っ越し、同居動物の増加など)
  • 緊張や不安などの精神的ストレス
  • 膀胱の粘膜バリア機能の低下
私(獣医)
私(獣医)

ストレスや性格が大きく関与すると考えられていますが、明確な原因が見当たらない場合でも発症することがあります。

治療と対策

  • 痛み止めや抗炎症薬などの対症療法が中心
  • 生活環境を整え、ストレスを減らす工夫
  • 水分摂取量を増やし、尿を薄める工夫
  • 療法食(尿量を増やしたり、リラックス効果を期待)
私(獣医)
私(獣医)

ストレス軽減に加えて 水分摂取や療法食 が役立つとされています。


マルちゃんの治療 🐾

今回は、鎮痛消炎剤と、皮下輸液で水分補給を行いました。

私(獣医)
私(獣医)

 特発性膀胱炎は原因が特定できないこともありますが、今回は新しい子を迎えたことで感じているストレスが関係していそうですね。

(新入り子猫の登場は、一大事だにゃ🐱!!)

お母さん
お母さん

そうですか・・・早く仲良くなってほしいなあと思って、一緒にするようにしてたんですけど・・・

私(獣医)
私(獣医)

実は多頭飼育は、猫にとって想像以上のストレスになることがあります。
猫が安心できる環境を整えてあげることが大切です。


多頭飼育で大切な、猫のストレス対策

猫にとって、新しい猫を迎えることや多頭飼育は、大きなストレスになることがあります。
特に先住猫は、環境の変化に敏感なため、慎重な配慮が必要です。

多頭飼育で気をつけたいポイント

  • 先住猫ファーストを意識し、今まで通り甘えられる時間を確保する
  • 猫同士の接触は焦らず、少しずつ面会時間を延ばす
  • キャットタワーや別室など、逃げられる安全な場所を用意する

⬇️ 猫は高いところを好むため、キャットタワーなどの安全な居場所を複数用意してあげると安心です。🐱

  • 食事・水飲み場・寝床を取り合いにならない配置にする
  • トイレは猫の数+1個を目安に設置する

私(獣医)
私(獣医)

多頭飼育では、「仲良くさせよう」と急がず、
猫それぞれのペースを尊重することが、ストレス軽減とトラブル予防につながります。

お母さん
お母さん

新しい子を迎えたことが、思っていた以上にマルの負担になっていたのですね。
しばらくはマルを第一に考え、安心して過ごせる環境づくりを心がけていきます。

私(獣医)
私(獣医)

新しい猫ちゃんとの生活が楽しいものになるよう、環境づくりのアドバイスに加え、サプリメントや精神安定剤、食事の工夫などもご提案しています。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

⬇️ 特発性膀胱炎に、精神的な健康(リラックス効果)も配慮して作られた療法食もあります。🐱

⬇️  不安感の強い猫ちゃんには、サプリメントの利用も有用です。🐱


まとめ 🌼

特発性膀胱炎は、原因が特定できない膀胱炎のひとつで、猫の下部尿路疾患(FLUTD)の中でも最もよくみられています。

細菌や結晶が関与しないにもかかわらず、急な血尿や頻尿などの症状が起こります。ストレスや性格が発症・悪化の要因と考えられています。

環境の変化など、はっきりしたきっかけが分かる場合もありますが、原因の特定が難しいケースも少なくありません。また、猫の特発性膀胱炎は再発することが多い疾患です。

治療は、消炎鎮痛剤や補液などの対症療法が中心となります。
それに加えて、安心して過ごせる環境づくりや、精神安定を目的とした療法食・サプリメント、必要に応じて精神安定剤を使用することもあります。

今回ご紹介した、新しい猫ちゃんを迎えたタイミングで特発性膀胱炎を発症した、先住猫マルちゃんの一例が、皆さまの参考になれば幸いです。


※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

星 史雄:猫の特発性膀胱炎とその管理,日本獣医師会雑誌

Buffington CAT, et al.:Feline idiopathic cystitis: current understanding of pathophysiology and management, Journal of Feline Medicine and Surgery

Gunn-Moore DA:Feline lower urinary tract disease, Journal of Feline Medicine and Surgery

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