ほとんどの女の子の猫にとって、避妊手術は「初めての関門」です。
避妊手術は、病気のリスクを減らしたり、行動を落ち着かせたり、望まない繁殖を防いだりと、さまざまなメリットがあります。
手術自体は決して難しくありませんが、何よりも安全に行うことが大切です。
ご家族の不安や心配も、大きいと思います。
今回は、雑種の猫のエリーちゃんの例をもとに、
手術前の検診でのチェックポイント、手術当日のタイムライン、術後の注意点、抜糸までの流れをわかりやすくまとめました。
手術前検診:雑種猫、こむぎちゃん
8ヶ月の雑種猫の女の子、こむぎちゃん。
避妊手術前の検診に来てくれました。
実はこむぎちゃん、ここ1週間くらい発情が始まって、ご家族は困っていました。


こむぎの鳴き声がうるさくて・・・寝られません。
避妊手術で落ち着くんでしょうか?

雌猫の発情、大変ですよね💦
避妊手術によって、速やかに落ち着いてくると思います。
避妊前の検診🩺、していきますね!
身体検査
手術前の検診では、体の成長具合に問題がないか、生まれつきの心臓病など麻酔に影響する病気が隠れていないかを確認します。
- 心音(雑音がないか)
- 呼吸音
- 体温
- 臍・鼠径ヘルニアの確認
- 乳歯の遺残の確認
- 発情の状況(女の子)

特に、臍・鼠径ヘルニアや乳歯遺残がある場合、同じ麻酔で一緒に治療することができるので確認します。
⬇️避妊・去勢手術と同時に行われる治療についての記事はこちら✒️
血液検査

「問題なく麻酔をかけられる身体状態か?」を確認するために、
血液検査は安全な手術に欠かせないチェック項目です。
🐱 雌猫の発情(ヒート)とは?

猫は季節発情動物で、日照時間が長くなる春〜夏に発情が始まりやすいです。
🐱 発情中は、何が起こるの?
出血はほとんどないのが犬との大きな違いです。
猫ちゃんは擦り寄ったり、体をくねらせたり、夜通し泣き続けたりします。
発情は数日〜1週間ほど続き、交尾がなければ数週間おきに繰り返します。


雌猫の発情が始まってしまったら、ご家族の安眠を妨害し、しかもこれが落ち着いたと思ったら1週間経たず再開し、平安な日常をおびやかすことになります💦
生後何ヶ月から始まるの?
初回発情は生後6〜10か月頃に来ることが多い。


交尾しない状態で発情を繰り返すと、子宮蓄膿症や卵巣嚢胞、乳腺腫瘍などのリスクも上がります。
初年度のワクチンが終了する、5ヶ月齢を過ぎたあたりで避妊手術を行うことをお勧めします。
こむぎちゃんの手術計画 📝
🔵臍ヘルニア、鼠径ヘルニアなし。
🔵血液検査など、そのほかの項目に異常なし。

予定通り避妊手術を行いましょう!
基本的に入院は一泊。次の日のお返しになります。


こむぎ、頑張ってね!
手術当日の注意点 ⚠️
🟠 朝から絶食


麻酔前は誤嚥を防ぐため、絶食が必須(前日夜12:00〜当日朝まで)です。
水は飲んでOKです。
(注:それぞれの動物病院の指示に従ってね!)
🟠 体調がいつもと違うときは必ず相談
- 朝から下痢・嘔吐
- 元気がない
→ 無理に手術をしない方が良い場合もあります。
避妊手術、当日。

こむぎ!頑張ってね!明日、迎えに来るからね!

(🐱 朝ごはんもらってないよ💦お腹すいたにゃ〜)
- 11:00☀️来院・受付
体調・絶食OKか確認し、お預かりします。

- 11:30手術前の準備
体重を確認。
いったんケージの中で、手術の時間を待ちます。
- 13:00麻酔の導入、手術開始!
こむぎちゃんは、
避妊手術なので、お腹を開ける手術です。
麻酔をかけている時間は、処置の内容にもよりますが、
だいたい30〜60分程度になります。
- 14:00手術終了、覚醒
今日は入院です。ケージでお休みします。

- 翌日8:30朝の診察☀️
手術後の状態を確認します。

- 9:00〜お迎え・手術後の説明

🐶 手術翌日、退院。
お母さんがこむぎちゃんのお迎えに来ました。


こむぎちゃん、本当によく頑張りましたね!これから、手術後の注意事項についてお話します。
① 安静について
- 今日はゆっくり休ませ、明日からは激しい運動は控えてた方が良いですが、ケージなどに閉じ込める必要なく、日常生活は行って問題ありません。
- 傷口を舐めたり噛んだりしないように、エリザベスカラーもしくは術後服を着用してください。

🐱 術後服は抜糸まで、着たままでOK。トイレも可能でお勧めです!⬇️
② 食事・水
- 手術後は代謝が変わり、体重が増えやすくなります。
ごはんの量をきちんと計量して与えるようにすれば、太り過ぎを防ぐことができます。
🐱 去勢・避妊手術後のご飯を利用するのもお勧めです。 ⬇️
手術後の体重管理や健康維持をサポートするために作られたフードです。
③ 傷の観察
- 赤み・腫れ・出血・膿が出ていないかチェック
- 触って痛がる場合も注意
④ 薬の管理
- 抗生物質・痛み止めなど指示通りに与える
- 投薬を途中でやめない

⑤ 注意すべき症状
- 元気がない・食欲がない
- 嘔吐・下痢が続く
- 傷が赤く腫れる、膿が出る
→ 早めに動物病院へ相談

こむぎ!!おかえり!!よく頑張ったね!!

(🐱 お迎えうれしいにゃ〜!!)

こむぎちゃん、今朝は朝ごはん食べてくれています。
1週間〜10日くらいで、抜糸をして終了です。
また動物病院で待ってますね!
10日後、抜糸して終了!



お腹の傷は問題なく、抜糸できました。
これで術後服も着なくて、大丈夫です!

避妊手術、無事に終わって一安心です。
発情も落ち着いて、平和な日常に戻りました💦
こむぎ、これからも元気でよろしくね!!
🐱 まとめ
避妊手術は特別に難しい手術ではありませんが、ほとんどの雌猫にとっては最初の大きな試練です。
手術前の検診では、麻酔を含めて安全に手術が行えるか、さらに乳歯や腹壁ヘルニアなど、同時に処置が必要な問題がないかを確認します。
私たち獣医師も、元気な子を元気なままお返しできるよう、常に細心の注意を払って手術に臨んでいます。
小麦ちゃんの避妊手術の一例、参考にしていただければ幸いです。



※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
日本獣医麻酔外科学会編.『小動物外科教科書』インターズー, 2020.
Ettinger, S.J. & Feldman, E.C. “Textbook of Veterinary Internal Medicine.” Elsevier, 8th ed., 2017.
BSAVA Manual of Feline Practice: A Foundation Manual. BSAVA, 2020
コメントやご相談もおまちしています。






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