犬がかゆい原因は食事?アレルギー検査と除去食で改善した症例紹介

アレルギー性皮膚炎

犬が体を痒がるから、食事のアレルギーかな?食事を変えてみようかな?

皮膚に良いとか、アレルギーに考慮、と書いてあるご飯って結構ある・・・

犬の痒みと食事について、何を選んだらいいのか、効果はあるのか?悩ましいですよね。

犬のアレルギー性皮膚炎のうち、食事が原因となる「食物アレルギー」は
おおよそ、 10〜20%程度 とされています。

つまり、痒みのあるすべての犬が、食物が関連しているというわけではありません。

今日は、体の痒みの原因が、
『食事アレルギー』が関連しているとわかった、犬の一例を紹介し、食物アレルギーの食事療法の注意点について解説します。

食物アレルギーが疑われる時の特徴

実は、食事アレルギーの子には、アトピー性皮膚炎と少し違った特徴があります⬇️

  • 季節性がない(1年中症状がある)
  • 消化器症状(下痢・軟便・吐き)を併発することがある
    明らかな下痢でなくても、
    ”持つと潰れるくらい柔らかい便” や、
    ”1日3回以上の排便” も怪しい症状です。
  • 痒みが顔・耳・足先・肛門周囲に出やすい
  • 若齢(1歳未満)でも発症しやすい

このような特徴があった場合、食事との関連を疑います。

症例:10ヶ月齢の柴犬、最近、体が痒い・・

きなこちゃんは、10ヶ月齢、柴犬、女の子、
1ヶ月くらい前から体や顔を痒がる
とやってきました。

お父さん
お父さん

暇さえあれば、肉球を舐めています。口の周りも擦っています。

きなこちゃんが痒がった場所

痒い場所
  • 口周り:赤くなって、少しカサカサしている
  • 肉球の間の皮膚が、四本足とも、赤くなって毛が茶色くなっている
  • お尻、陰部の周りも少し赤くなっている
  • 背中の皮膚はきれいだけど、腰の周りだけ痒みがある。

ノミダニ予防

フィラリア予防と一緒に、飲み薬で行っています。

下痢や嘔吐は?
お父さん
お父さん

きなこは下痢はしてないよ!
朝、昼、晩、寝る前、散歩の時と食事後と、1日4回くらい、快調です!

お父さん、快調ですとおっしゃていますが、犬の便の回数は、通常1日1、2回。
(散歩の時に分けてするのは1回として、だいたい朝、晩の2回くらい)
1日3回以上の排便は、回数が多めと考えます。

食物アレルギーの血液検査:リンパ球反応検査

私(獣医)
私(獣医)

痒みの場所から、アレルギーの関与が疑わしいのですが、
きなこちゃんはまだ1歳。実は、アトピー性皮膚炎の発症には少し早いです。
排便回数が多いことからも、食物アレルギーの可能性もあります。

きなこちゃんは食物アレルギーの血液検査をしてみることにしました。

リンパ球反応試験

食物アレルギーが疑われるときに行う検査に「リンパ球反応試験」があります。
これは、血液中のリンパ球が特定の食材にどれだけ反応するかを調べる検査です。

犬の皮膚炎で行われるアレルギー検査での注意点です⬇️

実際のアレルギーに関与する要因は、様々(IgE、IgA、リンパ球など・・)です。
実際の検査では、そのうちの一部の反応を見る、限定的なものです。

なので、原因が確定するわけではなく、実際の症状と合わないこともあります。

しかし、様々なアレルギー用のご飯の中で、何から試すべきか?を選択するヒントになります。

検査をするタイミングに注意⚠️

検査をするのは、治療をする前の、
症状が出ている時、痒い時がベストです。

すでに治療をしていて、痒みが落ち着いている時は、休薬期間を設けてから検査します。

食物アレルギー検査の結果

きなこちゃんの血液検査の結果は・・・
小麦、とうもろこしなど、植物性タンパク質に対するアレルギー反応が強く出ていることがわかりました。

除去食試験 🍽️

除去食試験とは、アレルギーを起こしにくい特別な食事に変えて、症状の変化をみるテストです。

除去食試験の注意点⚠️
  • 8週間(最低6週間)は続ける。
    症状が軽くなっていくのは1ヶ月前後で、徐々に改善していきます。
    下痢や嘔吐などの消化器症状は1週間くらいで改善があります。
  • おやつなどは禁止。
    他のものは口に入れない❌
    完全にそのご飯だけ。が大前提です。
    ご飯のトッピングで少し、もダメです。

使用するご飯(加水分解食、新奇タンパク質食)🍽️

除去食試験で使われるご飯は、大きく分けて、以下の2通りです。

タイプ特徴代表例
加水分解食タンパク質を細かく分解 → 免疫が反応しにくいアミノペプチド(ロイヤルカナン)、HA(ピュリナ)、ヒルズ z/d など
新奇タンパク質食“今まで食べたことがない”肉や魚を使うカンガルー、馬、鹿、ウサギ、ナマズなどを使用した療法食

一般的に市販されている、 ”皮膚に良いご飯” や、”アレルギーの子にもお勧めのご飯” は、食物アレルギーの治療で使われる除去食とは異なる場合があります。
獣医師に相談の上、適切なご飯を選択することをお勧めします。

①加水分解食の例です⬇️

②新奇タンパク質食の例です⬇️

きなこちゃんは、植物由来タンパク質を含まない、新奇タンパク質食を選び、除去食試験を開始しました。

その後・・・

きなこちゃんは、その後、合うドッグフードを見つけ、継続することで、痒みがほとんど出なくなりました。便の回数も減って、1日2回に落ち着きました。

お父さん
お父さん

除去食試験は大好きなおやつも食べれず、大変だったけど、きなこは食物アレルギーだったと、原因と対策がわかってよかったです!

きなこちゃんは、食事を変更することでとてもうまくいきましたが、なかなかうまくいかないこともあります。⬇️

食事療法がうまくいかない理由

  • 効果が出てくるのに時間がかかっている
    実際にはステロイドなど、痒みに対する飲み薬を併用しながら除去食試験を行うことが多いです。
  • 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎を両方持っている
    食事による炎症を抑えても、アトピー性皮膚炎の治療を並行して痒みのコントロールをする必要があります。
  • 次第に、食物アレルギーの原因(アレルゲン)が変化する
    療法食を試して調子が良くても、次第に痒みや消化器症状が出てきてしまうことがあります。
    除去食中のタンパク質に対してもアレルギー反応が出てしまうことが原因のようです。
    その場合、改めて除去食試験を行う必要があります。

まとめ

食物アレルギーで痒みが出てくる子は、全体の薬10〜20%で、
除去食試験を行うことで、合うご飯を見つけていきます。

除去食試験は、約2ヶ月、決まったご飯以外は食べることができない
ひとつがうまくいかなかったら、他のご飯をまた2ヶ月・・・
ちょっと覚悟が必要な試験です。

⚠️ 食物アレルギーで使う除去食と、いわゆる ”皮膚に良いご飯” は、
  目的が違うので、注意してください。

食物アレルギーではない子で使用するのは、有用なこともあります⬇️

きなこちゃんの例では、食事療法によって痒みのコントロールができましたが、様々な理由で、治療が難航するケースもあります。

また、持っていたり、
、同じ療法食でもうまくいかなくなったりと、
実際には試行錯誤、アレルギーと付き合っていくことが多いです。

きなこちゃんはまだ10ヶ月齢ですが、
基本的には一生涯、付き合っていく必要があるアレルギー。

愛犬にも、ご家族にも、なるべく負担少なく、快適な生活を送っていけるように、治療を検討し、提案させていただいています。

食物アレルギーのきなこちゃんの一例、参考にしていただけましたら幸いです。

参考文献
Miller’s Anatomy of the Dog Dermatology
Griffin CE, et al. Small Animal Dermatology. Saunders.
日本獣医皮膚科学会:犬のアレルギー性皮膚炎
https://jsvd.jp/public/dog_atopy

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。


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