歯みがきしていたのに歯周病に?スケーリング・抜歯が必要になった犬の一例

歯肉炎

毎日歯磨きをしていても、歯周病が進行してしまうことはあります。
特に小型犬では体質的に歯肉炎が起こりやすく、
年齢とともにスケーリングや抜歯が必要になる場合も少なくありません。

今回は、歯科処置を行ったペコちゃんの一例をご紹介します。


症例:チワワのペコちゃん 🐶

チワワの11才、ぺこちゃん、男の子です。

お父さん
お父さん

毎日、欠かさず歯磨きをしているんですが、どうやら前歯が少しグラグラして、奥歯も磨くと血がついてくるんです。

私(獣医)
私(獣医)

毎日歯磨き、素晴らしいですね!
では、口の中を見てみましょう。


診察 🐾

ご家族の毎日の歯磨きの努力は、口腔内を確認するとよく分かります。
歯石の付着は、全体として比較的少ない印象です。

一方で、一部に歯肉の後退が認められ
特に奥歯では歯石の付着がやや目立つ状態でした。

私(獣医)
私(獣医)

ぺこちゃんは、前歯の歯肉の後退が顕著で、軽く指で押すと動揺します。
残念ながら、すでにぐらついている歯を元に戻すことはできません。

お父さん
お父さん

毎日、歯磨き頑張っていたのになあ・・・


歯肉炎になりやすい犬種 🐾

特に小型犬種で多くみられます

  • トイ・プードル
  • チワワ
  • ポメラニアン
  • ヨークシャー・テリア
  • ミニチュア・ダックスフンド
  • マルチーズ
  • シーズー
  • パピヨンなど

小型犬で歯肉炎が多い理由(細菌との関係)

小型犬で歯肉炎が多い理由のひとつに、口腔内細菌と炎症反応の起こりやすさが関係していると考えられています。

  • 歯垢(プラーク)に含まれる歯周病菌の影響を受けやすい
  • 小型犬では、同じ量の細菌刺激でも炎症が起こりやすい傾向がある
  • 体が小さい分、歯周組織の防御力に余裕が少ない可能性がある

このため、小型犬では歯石の量が多くなくても、
歯肉炎が進行してしまうケースが珍しくありません。

私(獣医)
私(獣医)

歯石の量だけでなく、体質や炎症の起こりやすさも大きく関係しています。

あまり歯石が付いていないのに歯ぐきが赤い
という状態は、小型犬ではよく見られます。

歯磨きは、歯周病の重症化を防ぐうえでとても重要です。
ただし、歯磨きを続けていても、年齢とともに歯肉炎が進行してしまうこともあります。


歯周病が重症化するとどうなる?

歯周病が進行すると、口の中だけの問題では済まなくなります。

  • 顔が腫れる(歯の根の感染が原因)
  • 顎の骨が溶ける・骨折することもある
  • 痛みで食欲が落ちる、元気がなくなる

さらに進行すると、

  • 歯周病菌が血流に入り、全身の臓器に悪影響を及ぼすことがあります。
    肺・心臓・腎臓・肝臓など全身に悪影響を及ぼす可能性があります。
私(獣医)
私(獣医)

「口が臭い」「歳だから仕方ない」
と思われがちですが、
早めのケアで防げるトラブルも多い病気です。

⬇️ 「根尖膿瘍(こんせんのうよう)」でほっぺが腫れてしまった犬のお話はこちら🐶


お父さん
お父さん

歯磨きしていても、ある程度は仕方がないってことですね。
無駄ではなかったですか?

私(獣医)
私(獣医)

そんなことはありません!

歯肉炎は重症化すると、顎の骨を弱らせたり、内臓の病気の原因になったりするなど、全身に悪影響を及ぼすことがあります。

歯磨きは、歯肉炎や歯周病の重症化を防ぐうえで、とても重要なケアです。


診断 🐾

【 歯肉炎(動揺歯を伴う、抜歯適応) 

私(獣医)
私(獣医)

すでに歯石がある程度付着している場合、歯磨きだけで取り除くことは難しくなります。
また、歯肉炎があると、歯磨き自体が痛みを伴うこともあります。

ぐらついている歯を抜歯することで、口腔内の細菌数を減らし、痛みや違和感が軽減され、生活の質(QOL)の向上が期待できます。

全身麻酔は必要になりますが、
スケーリング(歯石除去)と抜歯を行う歯科処置をおすすめします。


スケーリングと抜歯について 🐶 

お父さん
お父さん

歯を抜いちゃって、ぺこは大丈夫ですか?!

なんとか治すことはできませんか?

私(獣医)
私(獣医)

残念ながら、すでにぐらついている歯を元に戻すことはできません💦
しかし、抜歯後の生活が困難になることはあまりありません。


抜歯後🦷の犬の生活は?🐶

残念ながら、すでにぐらついている歯を元に戻すことはできません。
しかし、犬は基本的にご飯をあまり咀嚼せず丸呑みすることが多いため、歯がなくなっても生活に大きな支障はありません。

ただし、注意点もあります。⚠️

  • 下の犬歯の場合、舌の収まりが悪く口からはみ出すことがある
  • 抜歯した歯の数が多い場合、唇が内側に入り込み、よだれが増えることがある
私(獣医)
私(獣医)

むしろ、ぐらついている歯を残しておくと、食事時に痛みや違和感の原因になりやすいため、抜歯によって快適に過ごせる場合もあります。


スケーリングに麻酔はどうしても必要?🐾

お父さん
お父さん

麻酔が、ちょっと心配だなあ。
麻酔なしで歯石取りするところもあるって聞いたけど・・・

私(獣医)
私(獣医)

そうですね。麻酔なしで行う施設も確かにあります。
しかし、獣医療ガイドラインでは、麻酔下での処置が推奨されています。

麻酔しないで犬のスケーリングを行うと?🐾

  • 誤嚥のリスク🦠
    歯石や歯垢に含まれる雑菌を飲み込んでしまい、最悪の場合、呼吸器に入ることがある
  • 中途半端な処置になりやすい
    犬は口を大きく開けてじっとしていられないため、
    歯肉ポケットや奥の歯の汚れが十分に取れないことがある
私(獣医)
私(獣医)

麻酔下でのスケーリングなら、安全に口を開けてしっかり歯石・歯垢を除去できるため、誤嚥のリスクを大幅に減らすことができます。


麻酔前検査へ 🐾

お父さん
お父さん

どうやら、ここらでスケーリングと抜歯、した方が良さそうですね!

よろしくお願いします!

私(獣医)
私(獣医)

そうですね。高齢になると、心臓や腎臓に負担がかかり、全身麻酔が難しくなることもあります。

もちろん、ぺこちゃんも全身麻酔の前には血液検査、レントゲン検査、超音波検査など、スクリーニング検査(人間でいう人間ドックのような、ドッグドックですね)を受けていただきます。

お父さん
お父さん

ぺこも、もう11歳だし、他に病気がないか調べる良い機会かもしれませんね!


スケーリングと抜歯を実施 🐾

スクリーニング検査で問題のなかったぺこちゃんは、
後日、全身麻酔下でスケーリングと抜歯を行いました。

歯石を削って、歯肉ポケットの汚れも取って、磨いて・・・
一番奥の歯も、グラグラしていたので1本抜きました。
上の前歯4本も抜歯して。

見違えるようにピカピカになりました!
口臭もなくなって、実にさっぱりしました!

夕方、お父さんがお迎えに来ました。

お父さん
お父さん

ぺこ〜、迎えに来たぞ!よく頑張ったな!

(おとうさん!!おむかえうれしいな〜🐶✨)

私(獣医)
私(獣医)

ぺこちゃん、本当によく頑張ってくれましたね👏
お疲れさまでした。

現在、口から血が混じった涎が少し出ていますが
明日にはしっかり止まることがほとんどですのでご安心ください。

ご飯については、
抜歯をしても 特別にやわらかくしなくても、カリカリのまま食べられる子が多い です。
もし食べにくそうな様子があれば、しばらくの間は
ふやかすなどして工夫してあげてくださいね。

そして、傷が落ち着いたら、
また歯磨き、がんばっていきましょう!


⬇️ 指サックタイプの歯ブラシは操作性がよく、
これから歯磨きを始めてみようという方🔰におすすめです🐶。

⬇️ 味付き歯磨き粉は、
「おやつみたい!」と感じてくれる子も多く、歯磨きのハードルを下げてくれます🐶


まとめ 🌼

歯周病は、口臭や歯を失うリスクだけでなく、
顎の骨の骨折や顔が腫れる「根尖膿瘍(こんせんのうよう)」、さらには心臓病や腎臓病など、
全身の病気の原因になることもあるため、毎日の歯磨きはとても重要です。

一方で、特に小型犬では体質的に歯周病が進行しやすく、
毎日しっかり歯磨きをしていても、年齢とともにスケーリングや抜歯が必要になる場合があります。

そのため、定期的に動物病院で口腔内をチェックし、
その子に合った治療や処置について相談していくことが大切です。

今回ご紹介した、
毎日歯磨きを続けながら、スケーリングと抜歯を行ったペコちゃんの一例が、
少しでも皆さまの参考になれば幸いです。


※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

日本獣医歯科学会:犬と猫の歯周病について
(日本語・飼い主向け解説あり)

AVDC(American Veterinary Dental College):Periodontal Disease in Dogs

Harvey CE, Emily PP:Small Animal Dentistry(Mosby)

コメントや、ご相談もお待ちしています。

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