「専用のご飯なのに…?」猫のおしっこが出なくなった一例
― ストルバイト結晶による尿道閉塞 ―
猫のストルバイト結晶は、
血尿や頻尿、尿道閉塞を引き起こすことがあります。
今回は、療法食から一般食に変更したことで再発してしまった症例を通して、
尿路疾患の管理で大切なポイントをまとめました。
症例:猫のらんまるくん🐱
猫のらんまるくん、3歳の男の子。


らんまる、トイレから動かず、苦しそうに鳴いています。
おしっこがまた出なくなってしまったかもしれません。

らんまるくん、ちょうど1年くらい前に、尿道閉塞で入院していましたね。
1年前のらんまるくん・・・
1年前、2歳頃のらんまるくん。

ストルバイト結晶という、細かい砂状の結晶が膀胱内に大量にたまり、
猫の細い尿道に詰まって尿道閉塞を起こしていました。
すぐに尿道の閉塞を解除しましたが、
血液検査では腎臓の数値が著しく悪化しており、
緊急入院が必要な状態でした。

幸い、2日後には腎臓の数値はすっかり改善し、
おしっこも順調に出ているので、退院になりました。

⬇️ 猫の尿道閉塞についてはこちらも参照にしてください。🐱

それから、おしっこ系のご飯を続けていたんですが、今日になって1年前と似たような感じになりました。

以前、こちらで紹介したご飯を継続してくれていたのでしょうか?


いえ、近くのスーパーで売っていた、「猫の尿路の健康に配慮」って書いてある、違うキャットフードです。
猫のストルバイト結晶とは?🐱

- ストルバイト結晶は、リン・マグネシウム・アンモニウムからなる結晶で、
猫の尿路トラブルでよくみられます。
⬇️ 特発性(突発性)膀胱炎についてはこちらも参考にしてください。🐱
ストルバイト結晶はどんな時にできる?
① 体質・生活環境が関与する場合

- 体質や食事、生活環境の影響で形成されます。
- 主な要因
- 水をあまり飲まない
- 尿が濃い状態が続く
- 尿がアルカリ性に傾きやすい

猫のストルバイト結晶の多くは、
この体質・環境要因によるものです。
② 感染🦠が関与する場合

- 尿路感染症(細菌感染)によって、
尿をアルカリ性にする細菌が増えることで形成されます。 - 治療には抗菌薬が使われます。
どのような症状が出る?

- 結晶が増えると、膀胱内で砂状にたまったり、
結石となって血尿・頻尿・排尿痛などの症状を引き起こします。 - 特にオス猫では、細い尿道に詰まりやすく、
**尿道閉塞(おしっこが出なくなる)**を起こすと命に関わることがあります。
診断と治療のポイント

- 尿検査で結晶の有無や尿pHを確認する。
- 食事療法(療法食)で尿pHを調整する。
- 水分摂取量を増やし、尿を薄く保つことも重要です。
らんまるくんの診察 🐱


今回も、らんまるくんはお腹を触ると、
張りつめた硬い膀胱が触知されました。
尿道が閉塞している可能性が高い状態です。

速やかにカテーテルを用いて尿道の詰まりを解除し、
あわせて尿検査と血液検査を行いますね。


お願いします!
処置🚨:尿道閉塞の解除

らんまるくんに鎮静剤💉を使って、体の緊張をとってから、尿道の閉塞の解除を行います。


尿道の入り口から約1cmの位置で、
細かい砂状の結晶による尿道閉塞が確認されました。
閉塞は無事に解除でき、膀胱内にたまっていた尿を排出することができました。
あわせて採尿も行えたため、
この尿を用いて尿検査を行いますね。

検査 🐱
血液検査

尿道閉塞を起こすと、腎機能低下と高窒素血症、電解質異常が起こることがあります。
尿検査 🐱

猫の尿石症が疑われる場合、尿検査は原因の特定と治療方針の決定に欠かせない検査です。
尿検査で分かること

- 炎症の有無🔥
血尿や白血球の増加から、膀胱に炎症が起きているかを確認できます。 - 細菌感染の可能性🦠
細菌の有無を調べ、抗菌薬が必要かどうか判断します。 - 結晶・結石の兆候🪨
ストルバイトなどの結晶がないかを確認し、結石形成のリスクを評価します。 - 尿の性状(比重・pH)
尿の濃さや性質を調べ、特発性膀胱炎や再発リスクの判断材料になります。
検査の結果 🐱
【 ストルバイト結晶が原因の尿道閉塞(再発) 】


1年前と同じ状態ですね。
今回は動物病院を受診してくれたタイミングが早かったため、
高窒素血症には至っていませんでした。

腎臓の状態が大丈夫で本当によかったです。
やはり、食事を変更したのが悪かったでしょうか?


らんまるくんの場合、そのごはんでは
ストルバイト結晶の予防としては不十分だったと考えられます。
実は、「尿路疾患に配慮」と書かれていても、
一般食と療法食では目的や効果に大きな違いがあります。
一般食と療法食の違い🐱🍽️

基本的に、一般食は健康維持が目的、
療法食は、病気の管理・再発予防が目的で作られています。
療法食とは🍽️❓

- 特定の病気の管理・治療補助を目的に作られたフードです。
- 尿路疾患用療法食では、
- 尿pHの調整
- ミネラル量の厳密な管理
- 尿量を増やす設計
などが行われています。
- 獣医師の指示のもとで使用することが前提です。
「尿路疾患に配慮」などと書かれた、一般食の注意点⚠️

- 一般食は結晶を溶かす・再発を防ぐ効果が保証されていません。
- 尿道閉塞や再発歴のある猫では、
一般食では管理が不十分になることがあります。 - 尿路疾患の既往がある場合は、
療法食を選ぶ方が安全です。

一般食と療法食の違いは分かりにくいかもしれませんが、
尿路疾患のある猫では、
「尿路疾患に配慮」などと書かれた一般食ではなく、療法食が基本となります。

療法食は、必ず獣医師の指示のもとで使用してくださいね。
⬇️ こちらは、動物病院でも推奨されている、
ストルバイト結晶のある猫に使用される療法食の例です。🐱
治療 🐱


また療法食に戻して、頑張りますね🍽️。
1年前に入院するほど大変な思いをしたのに、
少し油断してしまいました。

猫の尿道はとても細く、
炎症を繰り返してダメージが蓄積すると、さらに狭くなってしまい、
重症の場合には手術が必要になることもあります。

これからも油断せず、
療法食の継続と定期的な検診を一緒に頑張っていきましょう。

しゅ、手術にならないように、
これからは油断せず、しっかり気をつけていきます!
⬇️ 飲水量を増やす工夫も有用です。猫は流れる水に興味を示しやすく、循環式の給水器などを使うことで、飲水量が増えることがあります。🐱
まとめ 🌼
ストルバイト結晶やシュウ酸カルシウム結晶など、尿路疾患の治療・管理において療法食はとても重要です。
一般食との大きな違いは、療法食が病気の管理や再発予防を目的として設計されている点にあります。
尿路疾患を指摘されたことがある場合は、
必ず獣医師に相談のうえ、療法食を使用するようにしましょう。
尿道閉塞は、腎機能の低下を引き起こし、命に関わる危険な状態になることがあります。
また、繰り返すことで尿道が狭くなり、重症例では手術が必要になることもあります。

日頃から療法食の継続や飲水量を増やす工夫に加え、
定期的な診察や尿検査を行うことが大切です。
今回ご紹介した、療法食から一般食へ変更したことで
ストルバイト結晶が再発してしまった猫のらんまるくんの一例が、
皆さまの参考になれば幸いです。


※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
プリナ・インスティテュート
「猫のストルバイト尿石症」
(猫の尿路結石症と食事療法についての解説)
坂根 弘
「猫の特発性膀胱炎―再発率低減のための栄養学的戦略」
(日本語・FLUTDと栄養管理に関する総説)
Kruger JM et al.
Risk factors and clinical presentation of cats with feline idiopathic cystitis
(猫の特発性膀胱炎・尿道閉塞のリスク因子に関する研究)

コメントやご相談もお待ちしてます。
