「耳が汚れているから、こまめに耳掃除をした方がいい」
そう思っていませんか?
実は、犬の耳掃除はやりすぎることで、かえって外耳炎を悪化させてしまうことがあります。
今回は、耳掃除を続けてもなかなか改善せず、動物病院を受診したミッキーちゃんの症例をもとに、
犬の正しい耳掃除の考え方と、受診の目安について解説します。
症例:ミニチュアダックスフントのミッキーくん 🐾
2歳になったばかりの
ミニチュアダックスフントのミッキーくん。


耳掃除を毎日してるんですが、
黒っぽい汚れがたくさん出て来て、
頭をブンブン振って耳をかゆがります。
綿棒を使っても、奥の方までは取れなくて•••


わかりました。ミッキーちゃんの耳を診てみましょう。
診察 🐾

ミッキーちゃんの耳は、ぱっと見たところ、汚れもなくきれいです。
しかし、耳鏡という道具を使って、耳の奥をみてみると・・・

耳鏡で確認すると、耳の奥には茶色い汚れがびっしりと付着しています。
耳道は赤く腫れ、ただれています。

やっぱり。どうやって耳掃除したらいいんですか?
⚠️犬の耳掃除は要注意

- 犬の耳は、本来こまめな耳掃除は必要ありません
- むやみに掃除をすると、かえって外耳炎の原因になることがあります
- 綿棒の使用は要注意⚠️
耳道を傷つけたり、汚れを奥へ押し込んでしまい、外耳炎を悪化させる可能性があります

炎症や皮膚のアレルギーがなければ、耳は自然ときれいな状態を保てるため、特別なお手入れは必要ありません。
自宅でのケアについて

外耳炎は繰りしに悩む子も多いです。
原因は、アレルギー体質、耳の構造(垂れ耳・耳道が狭い)などが挙げられます。
外耳炎を繰り返す子は適切な洗浄が効果的です。
🏡 自宅でできる犬の耳掃除の方法
① 準備するもの
- 犬用のイヤークリーナー(アルコール不使用のもの)
- コットン or ガーゼ
※綿棒は奥に押し込みやすいので基本使わない
② 掃除の手順
- 耳を軽くめくって中を確認
赤み・腫れ・悪臭があれば無理せず病院へ。 - イヤークリーナーを耳の入口から入れる
直接入れるタイプなら 耳道が満たされる量(通常数滴〜数 mL)。 - 耳のつけ根を優しくもむ
肩の付け根に近い部分を「クチュクチュ」と数回優しくマッサージする。
→ 汚れを浮かせる工程。 - 犬にブルブルしてもらう
浮いた汚れが外に出る。室外でやるのがおすすめです。 - 出てきた汚れをコットンで拭き取る
見える範囲だけでOK。奥には入れない。
③ 頻度
- 通常:1〜2週間に1回
- 外耳炎になりやすい犬:獣医師の指示に従う(毎日〜週数回など)
④ やってはいけないこと
- 綿棒を奥まで入れる
- アルコール入りや刺激のある液を使う
- 汚れが多いのに何度もゴシゴシする
- 匂いが強い・痛がるのに続ける(悪化のサイン)
🐶犬用イヤークリーナーの例です⬇️
処置 🐾


つまり、耳が汚れていた原因は外耳炎だったということですね。
耳掃除は、無理に行わない方が良かったのですね。

耳掃除が有効な場合もありますが、耳道を傷つけないよう、頻繁に行わないことが大切です。
耳の洗浄や消毒は動物病院で行います。あわせて耳垢を採取し、検査をしてみましょう。
検査 🐾

耳垢検査は、耳の中の汚れ(耳垢)を少量取って顕微鏡で調べる検査です。
犬や猫の外耳炎の原因を調べるために行います。
耳垢検査でわかること

耳垢検査で大切なのは、
原因が「細菌性」なのか「マラセチア(真菌)性」なのか、
それとも「耳ダニ」が関係しているのかを見極めることです。

外耳炎の原因に合った治療を選ぶために、とても大切な検査です。

外耳炎の治療は、原因に合わせて行うことが大切です。
同じ外耳炎でも、原因が違えば治療法も変わります。
🦠 細菌性外耳炎

治療の基本
- 抗菌薬入りの点耳薬
- 耳の洗浄(必要に応じて)
症状が強い場合は、内服薬を併用することもあります。
🍞 マラセチア(真菌)性外耳炎

治療の基本
- 抗真菌薬及びステロイド入りの点耳薬
- 耳の中を清潔に保つケア
皮膚炎や体質が関係していることも多く、
再発予防が重要になります。
耳ダニが原因の場合

治療の基本
- 駆虫薬の投与(スポットタイプなど)
- 同居動物も一緒に治療
強いかゆみが出ることが多く、早めの治療が必要です。
🌼 アレルギーが関係している場合

治療の基本
- 点耳治療+かゆみを抑える治療
- 食事や生活環境の見直し
外耳炎を繰り返す場合に疑います。

繰り返す外耳炎では、アレルギーが関与していることも少なくありません。
その場合、耳の治療だけでは改善しにくく、
皮膚や体全体を含めた治療が必要になることがあります。
まとめ
外耳炎は、
原因を見極めたうえで治療することが再発予防のカギです。
「なかなか良くならない」「何度も繰り返す」場合は、
原因の再評価がとても大切になります。
診断 🐶
【 マラセチア性の外耳炎 】


耳垢検査からは、マラセチアという酵母菌が見つかりました。
マラセチア性外耳炎とは?

マラセチア性外耳炎は、**マラセチアという酵母菌(カビの一種)**が
耳の中で増えすぎることで起こる外耳炎です。
犬でとてもよく見られます。
どんな症状が出る?

- 茶色〜黒っぽいベタベタした耳垢
- 独特のニオイ
- 耳をよくかく、頭を振る
- 耳が赤く腫れる

マラセチアが増殖すると、特有の酸っぱいようなにおいが感じられることがあります。
なぜ起こるの?

マラセチアは、皮脂を栄養にして増える常在菌です。
そのため、
- 炎症が強い🔥
→ 皮脂分泌が増える
→ マラセチアが増える⤴️
という悪循環が起こります。

マラセチア性外耳炎では、
炎症🔥を抑えて皮脂分泌を減らすことが、
マラセチアの増殖を抑えることにつながります。
- アレルギー体質
- 湿気がこもりやすい耳の構造
- 皮膚のバリア機能低下
などが悪化の要因になり、繰り返すことも多いです。
⬇️ 犬のアレルギー性皮膚炎についての記事はこちらも参考にしてください🐶


マラセチア性外耳炎の治療薬は💊

実際のマラセチア性外耳炎の治療では、
ステロイド・抗菌薬・抗真菌薬が配合された点耳薬を使用することが多くなります。
- ステロイド💊:炎症やかゆみを抑える
- 抗真菌薬🍞:マラセチアを減らす
- 抗菌薬🦠:二次的な細菌感染を抑える

これら3種類の成分が、**1つの点耳薬(耳に直接ぽたっと入れるお薬)**に配合されています。
症状に合わせて、1日1〜2回、1〜2週間を目安に点耳を続けます。
⬇️ 長期作用する、ジェル状の薬についてはこちらも参考にしてください。🐶
治療 🐾


耳の洗浄と消毒が終わりました。
これから1週間、ステロイド・抗菌薬・抗真菌薬が配合された点耳薬を、1日2回、1〜2滴ずつ耳に入れてくださいね。

わかりました!耳掃除は、しなくていいですか?

耳の炎症が改善してくると、耳の汚れは自然に減っていきますので、無理に耳掃除をする必要はありません。耳の外側を、やさしく拭うくらいで十分です。
まとめ 🌼
耳は、炎症やアレルギー性皮膚炎などがなければ、基本的に汚れが溜まりにくく、耳道の自浄作用によって、定期的な耳掃除をしなくてもきれいな状態が保たれます。
一方で、頻繁な耳掃除、特に綿棒を使った耳掃除は、耳道の壁を傷つけてしまい、外耳炎を引き起こしたり、治りを遅くしてしまうこともあるため注意が必要です。
犬が耳をかゆがる、汚れやニオイが気になってきた場合は、自己判断で掃除を続けるのではなく、動物病院で診察を受けることをおすすめします。

適切な治療を行うことで、耳の炎症が改善し、耳の汚れも自然と少なくなっていくことが多いです。
今回ご紹介した、「耳掃除をしてもなかなか耳の汚れが改善せず、動物病院を受診した外耳炎のミッキーちゃんの一例」が、皆さまの参考になれば幸いです。
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
日本獣医皮膚科学会
「犬と猫の外耳炎」
Scott DW, Miller WH, Griffin CE.
Muller & Kirk’s Small Animal Dermatology, 7th ed.
Saunders Elsevier.
Moriello KA.
“Malassezia dermatitis.”
In: Veterinary Dermatology, Wiley-Blackwell.


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