「ある日突然、目の下や頬がぷくっと腫れてきた…」
そんな症状で来院するワンちゃんの中に、「根尖膿瘍(こんせんのうよう)」という歯の病気が隠れていることがあります。

根尖膿瘍は、歯の根の先に細菌感染が起こり、膿がたまってしまう病気です🦠
見た目では気づきにくく、痛みを我慢していることも多いため、発見が遅れるケースも少なくありません。
この記事では、根尖膿瘍になったダックスフントのスカイくんの例をあげて、
犬の根尖膿瘍の原因・症状・治療・予防について、わかりやすく解説します。
症例 🐶 ダックスフントのスカイくん
ダックスフント、12歳の男の子、スカイくんです。


ほっぺたが腫れてきたと思ったら、破れて血と膿が出てきたんです。
本人は、破れる前より元気だけど・・・

それはびっくりしましたね!では診察してみましょう。
診察 🩺
スカイくんのほっぺたの傷は、ちょうど右眼の下あたりにあります。
口の中は歯石がたくさんついて、傷のちょうど下のあたりで重度です。

歯肉炎からくる、炎症(根尖膿瘍)の可能性があります

原因は口の中、だったのか!
根尖膿瘍🦠とは?

犬の根尖膿瘍(こんせんのうよう)とは?🦷
根尖膿瘍とは、歯の根っこの先に膿がたまる病気です。
虫歯や歯周病、歯の破折(ヒビ)などが原因で、歯の内部に細菌が入り、炎症が起こることで発生します。


特に、上顎の臼歯(第4前臼歯など)や犬歯で発生することが多いのが特徴です。
症状は?
- 目の下や顔が腫れる
- 歯ぐきを触ると痛がる
- ごはんを食べにくそうにする
- 片側だけで噛む
- 口が臭い
- 元気がない

目の下が突然ぷくっと腫れた場合、根尖膿瘍の可能性が高いです。
主な原因🦠

- ✅ 重度の歯周病
- ✅ 歯の破折(硬い物を噛んだ)
- ✅ 虫歯
- ✅ 過去の外傷
歯の中に細菌が入り、根の先で化膿します。
治療方法💊
状態によって治療は異なりますが、主に次の方法があります。
- 🔹 抗生剤・痛み止めで炎症を抑える
- 🔹 原因となった歯の抜歯
- 🔹 膿がたまっている場合は切開して排膿

薬だけでは一時的によくなっても、原因の歯を治さないと再発しやすいのが特徴です。
ただし、全身状態や年齢などによっては抜歯が難しい場合もあるため、その際は「痛み止め・抗生剤+経過観察」で対応することもあります。
飼い主さんと獣医師でよく相談しましょう。
放置するとどうなる?
根尖膿瘍を放置すると、
- 炎症が広がる
- 骨が溶ける
- 繰り返し腫れる
- 強い痛みが続く
など、犬にとってかなりの負担になります。

予防がとても大切!🪥
- 🪥 毎日の歯みがき
- 🦷 定期的な歯科チェック
- 🦴 硬すぎるおもちゃや骨は避ける
これだけでも根尖膿瘍のリスクは大きく減らせます。

犬の歯は丈夫だから大丈夫!と思う方も多いですが、案外、歯が折れている子が多いです💦
硬いものをガリガリかじるのは要注意⚠️
普通に売られているおもちゃ(鹿の角、牛の蹄など)でも、歯を折る原因になるため避けるべきです。
⬇️ 犬の歯が折れないよう、デンタルケアができるTPR素材などの柔らかい素材でできたおもちゃを選びましょう。 🐶
犬の根尖膿瘍まとめ🦷
- 根尖膿瘍=歯の根の先に膿がたまる病気
- 目の下の腫れは要注意
- 原因は歯周病・歯の破折が多い
- 治療は抜歯+抗生剤が基本
- 放置すると悪化・再発しやすい
- 予防は歯みがきと定期検診

治療 💊


見た目だけでも、根尖膿瘍が「かなり怪しい」と判断できますが、最終的な診断にはレントゲン検査が必要になります。
歯のレントゲンはお口の中で撮影するため、ワンちゃんには全身麻酔をかけて行います。
そのため、歯石除去(スケーリング)や抜歯とあわせて治療計画を立て、後日まとめて処置を行うことをお勧めします。

分かりました!
全身麻酔、ドキドキするけど、ちゃんと歯を処置しないと、再発してしまうってことですね。

おっしゃる通りなんです。
今回は、抗生剤をお渡ししますので、処置の日まで飲ませてくださいね!

スケーリング・抜歯の当日

全身麻酔をかけて、まずはレントゲン検査です。
レントゲン検査

根尖膿瘍では、歯の根の先(根尖)に、異常が写ります。👇
- 骨が溶けて黒く抜けて見える
- 根の周囲の境界がぼやける
- 膿がたまっているスペースが確認できる
これによって
✅ 本当に根尖膿瘍か
✅ どの歯が原因か
✅ 抜歯が必要か
を正確に判断できます。
スケーリング・抜歯🦷

根尖膿瘍は、歯の根の中まで細菌が入り込んでしまっている状態のため、
原因となっている歯を抜歯することが最も確実な治療になります。

スカイくんの右目の下の傷と、右奥歯の抜歯痕がつながっていることが確認できました。🦷
ここが、根尖膿瘍🦠の原因になった部位ですね!
引き続き、スケーリングを行います。
スケーリングは、歯の表面や歯と歯ぐきの境目についた歯石や汚れを超音波などで取り除く処置です。
- 歯周病の進行を防ぐ
- 口臭の改善
- 他の歯を守る
といった目的があります。

その後・・・🐶
スケーリング・抜歯の日から抗生剤を継続して、1週間後の再診です。


右の頬の傷はすっかり良くなっています。抜歯後も食欲は旺盛で元気でした。

よかったです!抜歯痕も落ち着いているので、抗生剤は終了にしますね。
でも、他の歯も、同じように根尖膿瘍になるリスクがありますので、
歯磨きなどで予防を心がけていきましょう!

⬇️ 犬用の歯磨き粉です。フレーバー付きなので、おやつ感覚で楽しく習慣にできるととても良いと思います!🐶
⬇️ いろんな歯ブラシがあります。指サックタイプは歯磨きを始めやすいです。
初めから歯ブラシだと犬が警戒することがあるので、まずは指を口に入れるところから慣らして行くことは効果的です。🐶
まとめ 🌼
犬の根尖膿瘍は、重度の歯周病や歯の破折(折れてしまうこと)が原因で起こることが多く、頬の腫れをきっかけに気づかれるケースがほとんどです。
予防のためには、日頃の歯みがき習慣を身につけること、そして硬すぎるおやつやおもちゃを避けて、歯を折らないように気をつけることがとても大切です。

ただし、しっかりデンタルケアをしていても、体質や年齢によって歯周病が進行してしまうこともあります。
そのため、定期的に動物病院でお口のチェックを受け、必要に応じてスケーリング(歯石除去)を行うことが、根尖膿瘍の予防につながります。

今回ご紹介した、根尖膿瘍になってしまったダックスフントのスカイくんの一例が、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
Holmstrom SE, Frost P, Eisner ER.
Veterinary Dental Techniques for the Small Animal Practitioner, 3rd ed.
Elsevier Saunders, 2004.
Wiggs RB, Lobprise HB.
Veterinary Dentistry: Principles and Practice.
Lippincott-Raven Publishers, 1997.
Verstraete FJM, Lommer MJ.
Oral and Maxillofacial Surgery in Dogs and Cats.
Saunders Elsevier, 2012.

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