猫の口内炎は抜歯で良くなる?|小豆ちゃんの症例でわかる治療と選択肢

口内炎

「最近、ごはんを食べるときに痛そう…」「よだれが増えた気がする」
そんな症状の裏に、猫の口内炎が隠れていることがあります。
口内炎は強い痛みを伴い、食欲低下や体重減少など、生活の質(QOL)に大きく影響する病気です。

この記事では、猫の小豆ちゃんの症例を通して、猫の口内炎の治療、抜歯の効果、そして抜歯ができない場合の治療選択肢について、わかりやすくまとめています。

症例 🐱

猫の小豆ちゃん。口が痛くて1年くらい、歯肉炎の治療を頑張っています。

お母さん
お母さん

毎日、ステロイドを飲んでいても、涎がすごくて。
食べる時に悲鳴をあげることもあります。

私(獣医)
私(獣医)

ステロイドを使用した治療では、コントロールが難しくなってきましたね・・・


診察 🩺

小豆ちゃんの口の中は、歯に沿って歯肉が赤く腫れています。
顎の奥には、大きな潰瘍ができています。

涎で顎と、気にして触ったため、前足が濡れて汚れています。

私(獣医)
私(獣医)

歯肉炎の痛みの影響で、生活の質(QOL)がかなり低下している状態です💦


猫の口内炎とは?🐱

猫の口内炎は、口の中の歯ぐき・舌・頬の粘膜などに強い炎症が起こる病気です。
特に、歯ぐきの赤みやただれ、潰瘍(ただれ)がひどくなり、強い痛みを伴うのが特徴です。


主な症状

  • 食欲が落ちる・ごはんを食べたがらない
  • 口を気にする・前足で口を触る
  • よだれが増える、血が混じることも
  • 口臭が強くなる
  • 毛づくろいをしなくなる
私(獣医)
私(獣医)

「食べたいのに食べられない」様子が見られることも多いです。


原因

猫の口内炎は、はっきりした原因が1つだけではありません。

  • 歯周病による慢性炎症
  • 猫カリシウイルスなどの感染症
  • 免疫の異常
  • 猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)

などが関係していると考えられています。


治療方法

症状や重症度に応じて次のような治療が行われます。

  • 消炎鎮痛薬、抗生物質
  • ステロイドや免疫抑制剤
  • 歯石除去(スケーリング)
  • 重症例では抜歯治療(全臼歯抜歯など)
私(獣医)
私(獣医)

薬だけでは改善しにくいケースも多く、抜歯が必要になることもあります・・・💦


小豆ちゃんの治療の検討 🐱

私(獣医)
私(獣医)

すでに小豆ちゃんには、ステロイドの影響による被毛の薄さや皮膚の弾力の低下が認められています。
このままステロイドの量を増やしてしまうと、糖尿病を発症するリスクも高まってしまいます・・・

ステロイドは、猫の口内炎やアレルギー、炎症性疾患などによく使われる薬で、
強い抗炎症作用があり、つらい症状を素早く抑えてくれる大切な治療薬です。
しかし、長期間の使用や高用量の継続では、副作用に注意が必要です。

✅ 免疫力の低下

  • 細菌やウイルスに感染しやすくなる
  • 口内炎・皮膚炎・膀胱炎などが再発しやすくなる

✅ 糖尿病のリスク増加

  • 血糖値が上がりやすくなる
  • 多飲多尿、体重減少がみられることも

✅ 皮膚・被毛の異常

  • 皮膚が薄くなる
  • 被毛がパサつく、毛が抜けやすくなる
  • 傷が治りにくくなる

✅ 筋肉量の低下・体力低下

  • 後ろ足の筋力が落ちる
  • ジャンプしなくなる

✅ 消化器症状

  • 食欲が異常に増える
  • 嘔吐・下痢
  • 胃腸の粘膜が荒れやすくなる

✅ ホルモンバランスへの影響

  • 副腎機能の低下
  • 急にやめると体調を崩すことがある(離脱症状)

特に注意が必要な猫🐱

  • 糖尿病の素因がある猫
  • 高齢猫
  • 感染症を持っている猫(FIV・FeLVなど)
  • すでに長期間ステロイドを使用している猫

副作用を防ぐために大切なこと

  • 自己判断で増減・中止しない
  • 定期的な血液検査・尿検査
  • できるだけ最低限の量でコントロール
  • 必要に応じて他の治療(抜歯、免疫抑制剤、分子標的薬など)を検討
お母さん
お母さん

そうですか・・・お薬だけでは、楽にしてあげることが難しいのですね。

私(獣医)
私(獣医)

抜歯を行うことで、症状を軽くしてあげることができるかもしれません。
抜歯について、検討してみましょうか。


猫の口内炎と抜歯治療について 🐱

猫の口内炎は、炎症が強く、薬だけではコントロールが難しい病気です。
そのため、重症例では炎症の原因となる歯を抜歯する治療が行われます。


なぜ抜歯が必要になるの?🦷

猫の口内炎は、歯の表面に付着した細菌や歯石に対して、免疫が過剰に反応してしまう病気と考えられています。


どれだけ薬で抑えようとしても、歯が残っている限り炎症が再発しやすいため、原因そのものを取り除く目的で抜歯が選択されます。

抜歯の対象になる歯🦷

状態によって異なりますが、以下のような方法が選ばれます。

  • 奥歯(臼歯)だけを抜く
  • 犬歯を除いてほぼすべての歯を抜く
  • 炎症の強い歯だけを部分的に抜く

多くの重症例では「全臼歯抜歯」または「ほぼ全抜歯」が選択されます。


抜歯の効果🦷

  • 痛みが大きく軽減する
  • 食欲が回復する
  • よだれや口臭が減る
  • 薬に頼る期間が短くなる
私(獣医)
私(獣医)

すべての猫で完全に治るわけではありませんが、7~8割の猫で症状の改善が期待できるとされています。
一方、約3割は効果が乏しいあるいは再発するという報告もあるため、抜歯=完治ではないという理解が必要です。


抜歯後の生活は大丈夫?🦷

  • 歯がなくなってもほとんどの猫は問題なくごはんを食べられます
  • カリカリも丸飲みできる子が多い
  • 体重が増えるケースも珍しくありません
私(獣医)
私(獣医)

抜歯後、すぐにご飯を食べる子もいますが、抜歯は体に大きな負担のかかる処置でもあるため、食欲の回復に時間がかかる場合もあります💦

お母さん
お母さん

今より良くなって、ご飯を苦労せず食べることができる可能性があるなら、抜歯をやってみようと思います。
小豆、頑張ろうね・・・!


小豆ちゃんの抜歯🐱

抜歯当日。小豆ちゃんは朝ごはんを我慢して、来院です。

お昼に全身麻酔をかけて、小豆ちゃんの抜歯が行われました。

そして夕方、お母さんが迎えにきました。

私(獣医)
私(獣医)

小豆ちゃんの抜歯処置、無事終了しました。

小豆ちゃんの場合は、すでにグラグラしている歯も多く、犬歯も炎症が強かったので、全ての歯を抜歯しました🦷。歯肉の傷を縫合して、終了しています。

痛み止めと、長期で効果が持続する抗生剤の注射をしています💉

お母さん
お母さん

小豆、本当によく頑張ったね!!!

私(獣医)
私(獣医)

今日はゆっくり休ませてあげてください!

明日から、ご飯をスタートして大丈夫ですが、食べにくければ柔らかいものにするなど、工夫が必要かもしれません。食事ができないようであれば、連絡くださいね!


その後・・・🐱

1週間後、再診です。

お母さん
お母さん

2、3日は元気がなかったけど、最近はとても元気になりました。
ご飯を食べる時の辛さがなくなって、ほっと一安心です。

私(獣医)
私(獣医)

口の中の傷の経過も良いようですね。
抗生剤は終了して、経過を見ていきましょう!


抜歯ができない、抜歯の効果がなかった場合・・・😿

猫の口内炎は、抜歯が最も効果的な治療法のひとつとされていますが、
すべての猫で「抜歯ができる」「抜歯で完全に治る」とは限りません。


抜歯ができない主なケース

  • 重度の心臓病・腎臓病などがあり、全身麻酔のリスクが高い場合
  • 高齢で体力が著しく落ちている場合
  • 飼い主さんが麻酔・手術を希望されない場合
私(獣医)
私(獣医)

このようなケースでは、内科的な治療(お薬中心)でのコントロールを選択します💊

抜歯をしても効果が乏しいケース💧

  • ウイルス感染(FIV・FeLV・カリシウイルス)が強く関係している場合
  • 免疫異常が強い体質の場合
  • 炎症が歯ぐき以外(舌・喉)まで広がっている場合

この場合、抜歯後も一定期間、薬の継続が必要になることがあります。


抜歯ができない・効かない場合の治療法

  • 消炎鎮痛薬・抗生物質
  • ステロイド
  • 免疫抑制剤
  • 分子標的薬
  • サプリメントなどの補助療法

👉 症状を「抑えながら付き合っていく治療」になるケースもあります。

⬇️カプセル内容物を歯茎・歯肉に塗りつける(直接舐めさせてもOK)サプリメントです。
口内の粘膜に直接作用し、炎症を抑えます。🐱


まとめ 🌼

猫の口内炎は、薬だけで治すのが難しい病気です。
重症例では、抜歯によって痛みを取り除き、生活の質(QOL)を大きく改善できる可能性があります。

一方で、
・抜歯ができない場合
・抜歯をしても十分な効果が得られない場合
も、残念ながら存在します😿

その場合は、内科治療を組み合わせながら、痛みや炎症をコントロールし、生活の質(QOL)を守ることが治療の目標になります。

「なかなか良くならない」「ごはんがつらそう」と感じたら、早めに動物病院へご相談ください。

歯肉炎が重症化し、抜歯を行った小豆ちゃんの一例が、少しでも参考になれば幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

日本獣医口腔歯科研究会 編:「犬と猫の歯科診療ガイド」 インターズー
Harvey CE, Emily PP:Small Animal Dentistry Mosby
Hennet PR:Feline chronic gingivostomatitis Journal of Veterinary Dentistry

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