犬の急な下痢の原因には、食事の変化、ストレス、細菌感染など、さまざまなものがあります。
しかし、便検査で確実に診断できるのは寄生虫が原因のときに限られる、という事実は意外と知られていません。
寄生虫感染は、昨今の下痢の原因ではそれほど多くはないかもしれません。
しかし、ペットショップやブリーダー、お散歩やドッグランなど、どこでうっかり口に入れて感染しているか、わかりません。

今回は、便検査で思わぬ原因が見つかったシニア犬・ジニーちゃんの症例を紹介しながら、動物病院での便検査がどれほど重要かをわかりやすくまとめました。
症例:高齢犬のジニーちゃん
今日は、マルチーズの男の子、16歳のジニーちゃんが来院されました。

ジニーちゃんはいつもは担当は別で、私が診察するのは初めてでした。
今日は担当獣医師が不在で、急な下痢をして、急遽受診しにきた、とのこと。

初めまして!今日はジニーちゃん、下痢をしてしまったとのことですね。

すぐ治るかな?とも思ったけど、高齢だし、早めにきました。
下痢の便、持ってきました!💩
カルテを確認すると、いつもは眼の傷の治療と、甲状腺機能低下症で治療している様子。
あまり下痢で受診されたことはないようでした。
便検査
🐕 犬の下痢で観察する「便の性状」
便の性状を確認することで、獣医師が犬の下痢の重症度や原因の推察をするのに役立ちます。
1. 形状

- 正常、持っても崩れない:これでも回虫など寄生虫の虫卵が見つかることも。
- 形はあるが柔らかい:形は留めるが、持つことができない
- 泥状〜水様便:排便した時の形がない
- ゼリーのような粘液がつく:大腸炎でみられます
2. 色
- 黄色🟡:脂肪分の多い食事変化・吸収不良
- 緑色🟢:胆汁の移動が早い/腸の通過が早い
- 黒色タール状⚫️:上部消化管出血の可能性(重要)
- 赤い血が混じる🔴:大腸炎・直腸出血
- 白っぽい/灰色⚪️:胆汁不足 → 肝・胆道トラブルの可能性
3. におい
- 酸っぱいようなにおい:小腸性下痢
- とても強い悪臭:寄生虫・感染症・吸収不良
便の顕微鏡検査

便検査では、基本的にウイルス感染や細菌感染を特定するには至りません❌
しかし、寄生虫や、原虫が見えることがあります⭕️
犬は、お散歩などで寄生虫などに汚染された何かを口にしてしまう機会があるので、下痢の時は必ず便検査を推奨しています。

検査でわかること⭕️
寄生虫の有無(回虫・鉤虫・鞭虫・コクシジウム・ジアルジアなど)

検査でわからないこと❌
ウイルス、細菌感染、アレルギー、炎症性腸症(IBD)、肝臓や膵臓など、消化器以外の問題

🐶急性下痢を起こした犬の症例はこちら⬇️
ジニーちゃんの便検査💩をしてみると・・・
うちわのような、木の葉のような原虫の姿。ジアルジアの姿が確認されました。

ジアルジア原虫は、小腸に寄生して、吸収不全と下痢をおこします。
ジアルジア感染とは?
- 原虫(寄生虫)の一種・ジアルジアが小腸に寄生して起こる感染症
- 特に 子犬・免疫が弱い犬 で症状が強く出やすい
- 汚染された 水・土・フード・お尻周りの毛づくろい などで経口感染
- 多頭飼育・ブリーダー・ペットショップなどでは広がりやすい


引き取ってきたばかりの子犬でよく見る感染症ですが、室内で穏やかに過ごしている高齢犬ではあまり見かけません。
どこかで、感染するような機会はあったでしょうか??

実は、3ヶ月前に新しい子犬を迎えて、その子が下痢でジアルジアの治療をしていました!

なるほど・・・。
ジニーちゃんは高齢と、甲状腺機能低下症もあって免疫力が下がり、感染してしまったようですね。
ジアルジアになった時の家での対策✨
- 便をしたらすぐに片付けて消毒
- 犬のお尻や被毛を清潔に保つ
- おもちゃ・ベッドは洗濯・熱湯消毒(73℃で1分間以上)
- 多頭飼育の場合は 全頭検査・治療 を検討

治療
ジアルジアを駆除する内服薬を3日間飲んでもらって、1週間後に確認の便検査、としました。

🐶下痢の時には、このようなご飯もおすすめです⬇️
その後
その後、ジニーちゃんはお薬を始めて数日で、下痢は治ったとのこと。
1週間後の便検査で、ジアルジアが確認されなくなり、抗原検査でも陰性になりました。

今回は、ご家族がうんち💩を持参してくれたおかげで、確実な診断に繋げることができました!

しかし、ジアルジアは環境中で残りやすいです。
一旦治療は終了ですが、再感染する可能性もあります。
また下痢をしたら便検査させてくださいね!
まとめ
下痢の原因は本当にさまざまですが、実際に寄生虫が見つかるケースは、それほど多くないかもしれません。
それでも、お散歩中やドッグランで何かを口にしてしまったり、新しくお迎えした子が寄生虫を持っていることは決して珍しくありません。
だからこそ、下痢の診察では便検査がとても重要です。
愛犬が下痢をしてしまった時には、ぜひ便を一緒に持って動物病院を受診してみてくださいね!
ジアルジアの感染が見つかった、ジニーちゃんの一例。参考にしていただけましたら幸いです。

参考文献
CAPC: Giardia. Companion Animal Parasite Council.
https://capcvet.org/guidelines/giardia/
ESCCAP Guideline 06: Control of Intestinal Protozoa in Dogs and Cats.
https://www.esccap.org/guidelines/
Dryden MW, et al. Diagnosis, Treatment, and Prevention of Giardia infections in Dogs and Cats. Veterinary Therapeutics. 2006;7(1):21–30.
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

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