食欲もあり、元気に過ごしている愛犬。
「特に気になることはないけれど、念のために」と受けた健康診断で、思いがけない異常が見つかることがあります。
今回ご紹介するのは、健診をきっかけに初期の胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)が見つかった症例です。
元気なまま進行することもあるこの病気について、実際の流れとともにお伝えします。
胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)ってどんな病気?

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)とは、
胆嚢の中にゼリー状の粘液がたまってしまう病気です。

胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を一時的にためておく袋のような臓器です。
この中に粘り気の強い物質がたまり、胆汁の流れが悪くなることで起こります。

進行すると、ゼリー状になった内容物が細い胆管に詰まり、炎症を起こすことがあります。
さらに重度になると、胆嚢が破裂してしまうこともあり、
急に体調が悪化する可能性があるため注意が必要な病気です。
胆嚢粘液嚢腫から突然具合が悪くなり、手術が必要になった例はこちらも参考にしてください。🐶⬇️
なぜ“元気でも”見つかるのか?

症状が出にくい

初期の段階では、胆嚢内の胆汁がゼリー状に変化し始めます。
しかし、明らかな症状が出ることは少なく、元気や食欲も保たれたまま経過します。
そのため、気づかれにくい病気のひとつです。
健診や超音波で偶然見つかる

初期には目立った症状がないため、
健康診断や、別の病気を調べるために行った超音波検査で偶然見つかることが少なくありません。
肝酵素値の異常が見つかるきっかけになることも

胆嚢粘液嚢腫では、ALPやGGTなど胆道系に関連する数値が上昇することがあります。
ただし、初期には血液検査に大きな異常が出ないこともあり、超音波検査が重要になります。

元気だから大丈夫、とは限りません。
胆嚢粘液嚢腫は、健康診断でしか見つけにくい病気のひとつです。
実際の一例

トイプードルのハナちゃん。10歳の女の子です。
10歳の誕生日をきっかけに、血液検査🩸を行いました。

ハナちゃんの血液検査で、ALPが基準値より高いことがわかりました。
ALPの上昇にはいくつか原因が考えられるため、超音波検査で詳しく確認していきます。
⬇️ 肝酵素値については、こちらも参考にしてください。🐶


超音波検査の結果、初期の胆嚢粘液嚢腫が疑われました。
胆嚢内の胆汁の一部がゼリー状に変化している所見がみられます。
しかし、現時点ではまだ症状はほとんどみられない段階です。
治療は?手術は必要?


胆嚢の状態を完全に元通りにすることは難しく、ゆっくりと進行していくことが多い病気です。


治すのが難しく、少しずつ進行してしまうということですね。
このまま進んでしまうと、いずれ手術が必要になるのでしょうか?


すぐに手術が必要というわけではありません。
何年もほとんど変化せず、生涯手術が必要にならない子もいます。
しかし、進行してしまう場合もあるため、慎重に経過をみていくことが大切です。
まずは3か月ごとに検査を行い、進行がないか確認していきましょう。
放置するとどうなる?


もし進行が比較的早く、胆嚢全体が固くなっていく傾向がみられる場合には、胆嚢摘出手術を検討していきます。
進行に気づかないまま胆嚢が破裂したり、胆管に詰まってしまうと、命に関わる状態になることがあります。
そのような緊急の状況では、手術のリスクも高くなってしまいます。

だからこそ、定期的に状態を確認しながら、適切なタイミングを見極めていくことが大切です。

定期検診を続けていけば、今は様子を見ていいのか、それとも手術を考えるタイミングなのかが分かる、ということですね。

その通りです!
放置してしまうと体調の変化に気づけず、急変してしまうこともあります。
しかし、定期検診を行うことで、変化を早めに捉え、適切に備えることができるのです。
飼い主さんに伝えたいこと 🌼
胆嚢粘液嚢腫は、初期の段階ではほとんど症状がなく、
元気や食欲も普段と変わらないまま進行していくことがあります。

しかし、気づかないまま進行すると、胆嚢の破裂や胆管閉塞など、命に関わる状態につながることもあります。
今回のハナちゃんのように、健康診断をきっかけに早期に見つけることができれば、
経過観察でよいのか、手術を検討すべきかを、落ち着いて判断することができます。
元気だから大丈夫、とは限りません。
定期的な健康診断は、
「今は安心して様子を見てよいのか」を知るための大切な機会です。
未来の安心のために、ぜひ健診を活用していきましょう。



※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
Center SA. Gallbladder mucocele in dogs: 30 cases (2000–2002). Journal of the American Veterinary Medical Association. 2004.
Pike FS, et al. Gallbladder mucocele in dogs: 219 cases (2007–2011). Journal of Veterinary Internal Medicine. 2015.
日本獣医内科学アカデミー(JCVIM)監修. 犬と猫の消化器疾患ハンドブック.(胆嚢疾患の項目)




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