突然の吐き気とぐったり…原因は“胆嚢の病気”でした。

下痢

犬の急な嘔吐や下痢。
「少し様子を見ても大丈夫かな…?」と、不安になりますよね。

今回は、一見よくある嘔吐症状の裏で、
胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)という、
命に関わる病気が隠れていたケース
をご紹介します。


症例:ポメラニアンのすずちゃん

12才のポメラニアンのすずちゃん、女の子。

お姉さん
お姉さん

2日前に急に嘔吐を3〜4回繰り返して、下痢も1回ありました。
それ以降はまったく食欲がなく、震えていて元気もありません。
また、おしっこの色がとても濃くなっていました。

私(獣医)
私(獣医)

それは心配ですね。診察していきますね。


診察 🐾

私(獣医)
私(獣医)

お腹を触ると、少しびくっとして痛そうですね。
それから、白目や耳の内側が、ほんのり黄色く見えます。

うーん……これは、単なる一時的な消化器症状とは少し違うかもしれません。

詳しい検査をしていきましょう。

お姉さん
お姉さん

黄色くなっていたこと、気づきませんでした!検査お願いします💦


検査 🐾

白目や耳が黄色く見えたり、嘔吐や下痢が続いている場合、
一時的な胃腸炎だけではなく、体の中で別の異常が起きている可能性があります。

血液検査

血液検査では、次のようなことを確認します。

  • 本当に黄疸が出ているのか
     目で見える黄色さが、体の中の変化によるものかを調べます。
  • 肝臓や胆のう、胆管に負担がかかっていないか
     食べ物の消化に関わる臓器がうまく働いているかを確認します。
  • 炎症や感染が起きていないか
     単なる胃腸の不調なのか、治療が必要な病気なのかを見極めます。
  • 脱水や体力の低下がどの程度か
     吐き下痢が続くと、水分が足りなくなり、体に大きな負担がかかります。
  • 今すぐ治療が必要な状態かどうか
     点滴や入院が必要かを判断する大切な材料になります。

超音波検査

超音波検査では、主に次のポイントを確認します。

  • 肝臓の状態
     腫れていないか、形や中身に異常がないかを見ます。
  • 胆のう・胆管の異常
     胆のうが大きくなっていないか、胆汁の流れが悪くなっていないかを確認します。
     黄疸が出る原因として、とても重要なポイントです。
  • 膵臓の変化
     膵炎などがあると、嘔吐や下痢、黄疸が同時に起こることがあります。
  • 腸の様子
     腸の動きが弱っていないか、炎症が強く出ていないかを確認します。
  • お腹の中に異常な液体がたまっていないか
     重い病気のサインが隠れていないかをチェックします。

診断 🐾

 胆嚢粘液嚢腫による、総胆管閉塞 

私(獣医)
私(獣医)

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)とは、
胆のうの中で、胆汁が寒天やゼリーのように固まりかけてしまう病気です。

これが原因で、胆汁の流れが悪くなっています。
胆汁は「総胆管(そうたんかん)」という、十二指腸につながるとても細い管を通って腸へ流れますが、
この管が詰まってしまっています。

その結果、体の中に胆汁がたまり、黄疸や嘔吐などの症状が出ていると考えられます。

実際に行った血液検査でも、黄疸を示す数値や、肝臓に関わる数値、炎症を示す数値が、いずれもかなり高くなっていました。

お姉さん
お姉さん

胆嚢粘液嚢腫ですか?どう治療すればいいのでしょうか?!


胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)とは?

胆嚢粘液嚢腫は、
本来サラサラしている胆汁が、寒天やゼリーのように固まりかけてしまい、胆のうの中にたまる病気です。

この異常に粘度が高くなった胆汁が原因で
胆汁の流れが悪くなり、胆管が詰まってしまうことがあります。


どんな症状が出るの?

初期は無症状のことが多いです。
胆汁がうまく流れなくなると、次のような症状が見られます。

  • 白目や耳が黄色くなる(黄疸)
  • 嘔吐や下痢
  • 食欲がない、元気がない
  • お腹を触ると痛がる
私(獣医)
私(獣医)

総胆管というとても細い管に詰まりが起こることで、
元気だった状態から、急に具合が悪くなることがあります。


原因は?

胆嚢粘液嚢腫は、
はっきりとした一つの原因が分かっている病気ではありません
いくつかの要因が重なって起こると考えられています。

考えられている主な原因・関係する要素

  • 特定の犬種で起こりやすい
     シェットランドシープドッグ
     コッカー
     スパニエルミニチュア・シュナウザー
     ポメラニアンなど
  • ホルモンの影響
     甲状腺や副腎などのホルモン異常が関係していると考えられています。
  • 体質・年齢
     中高齢で起こりやすく、体質的な影響も否定できません。
  • 慢性的な胆のうや胆管の炎症
     軽い炎症が続くことで、胆汁が濃くなりやすくなります。
私(獣医)
私(獣医)

胆嚢粘液嚢腫は、
日常のケアや食事管理だけで、完全に防げる病気ではありません。

体質や年齢の影響も大きいため、
症状が出る前に見つけることがとても大切になります。

どうやって診断するの?

  • 超音波検査(エコー)
     胆のうの中に、ゼリー状の胆汁がたまっている様子や、特徴的な模様が確認できます。
  • 血液検査
     黄疸を示す数値や、肝臓・炎症に関わる数値の上昇が見られます。

治療はどうするの?

状態によって治療は異なりますが、
進行している場合は手術が必要になることもある病気です。

早い段階で見つかれば、重症化を防げる可能性があります。


大切なポイント

胆嚢粘液嚢腫は、
👉 見た目以上に急に悪化することがある病気です。
👉 嘔吐や黄疸が見られたら、早めの受診がとても大切です。

⬇️ 他に、黄疸が起こることがある【犬の急性膵炎】についてはこちら🐶


治療 🐾

私(獣医)
私(獣医)

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)になってしまうと、
胆のうの中で固まりかけた胆汁を、元のサラサラした状態に戻すことはできません

根本的にしっかり治すためには、外科手術が必要になる病気です。
ただし、今は全身の状態が不安定で、すぐに手術を行うにはリスクが高い状態です。

そのため、まずは点滴などの入院治療を行い、
総胆管の詰まりが改善するかどうかを慎重に見ていきましょう。

お姉さん
お姉さん

よろしくお願いします。すず、入院は寂しいけど、頑張って!

私(獣医)
私(獣医)

詰まりが取れず、黄疸が解消されなければ、やはり手術が必要になってしまいます。
さっそく、治療を開始しましょう。


内科治療から、外科治療へ 🐾

入院治療

静脈点滴、痛み止めと、吐き気止め、抗生剤など使用し、3日後•••

私(獣医)
私(獣医)

総胆管の詰まりが一旦解消し、黄疸も改善しました。
食事も自分で食べられるようになってきています。

この状態であれば、いったん退院することが可能です

お姉さん
お姉さん

元気になって、よかったです!

私(獣医)
私(獣医)

しかし、一度硬くなってしまった胆嚢(胆嚢粘液嚢腫)は、元の状態に戻ることはありません。
そのため、いつ再び総胆管が詰まってしまうか分からない状態が続きます。

外科的に胆嚢を摘出することで、総胆管が再び閉塞するリスクを大きく下げることができます。

お姉さん
お姉さん

また今回のように、急に具合が悪くなり、
いつ命に関わる状態になるかわからないということですよね。

手術は正直とても心配ですが、
すずには、まだまだ元気でいてほしいと思っています。

そのため、手術を受けさせたいと思います。


手術:胆嚢(たんのう)摘出 🐾

いったん退院し、2週間後。

すずちゃんは胆嚢を摘出する手術を受け、無事成功!

(手術、がんばったよ〜🐶!!)

私(獣医)
私(獣医)

手術は無事に終了しました。
術後の状態も安定しています。

食欲や痛みの様子を確認しながら、
安全にお家へ帰れるタイミングを判断していきますね。

お姉さん
お姉さん

よかったです💦よく頑張ったね、すず!


その後、再診 🐾

退院後、1週間の検診です。

お姉さん
お姉さん

すずはすっかり良くなって、毎日とても元気に過ごしています。
一時はあんなに心配な状態だっただけに、
今こうして元気な姿を見られるなんて、本当に嬉しいです。

私(獣医)
私(獣医)

本当に、すずちゃんよく頑張りましたね。

胆嚢を摘出しても、
肝臓や胆管はこれからも引き続き働き続けていきます。

今後は、1〜3か月ごとの定期健診を行いながら、
体の状態を一緒に見守っていきましょう。

お姉さん
お姉さん

はい!よろしくお願いします。


まとめ 🌼

犬は全身が被毛に覆われているため、
皮膚が黄色くなる黄疸は、人と比べて気づきにくいことがあります。

また、胆嚢粘液嚢腫や総胆管閉塞のように、
超音波検査でなければ診断が難しい病気
も存在します。

今回のケースは、
早めに動物病院を受診してもらえたこと、
そして超音波検査を行えたことが、早期対応につながった一例
でした。

犬が
・繰り返し吐いている
・ぐったりして元気がない
・嘔吐が頻回でおさまらない

このような状態が見られる場合は、
できるだけ早めに動物病院へご相談ください。

今回ご紹介した、
急な嘔吐・下痢をきっかけに入院・手術へと至った
ポメラニアンのすずちゃんの一例が、
皆さまの判断の参考になれば幸いです。


※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

  • 日本獣医内科学アカデミー 編
     『獣医内科学 第2版』 文永堂出版
     (胆道系疾患・胆嚢粘液嚢腫の項)
  • Center SA.
     Diseases of the gallbladder and biliary tree.
     Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice.
  • Pike FS, Berg J, King NW, et al.
     Gallbladder mucocele in dogs: 30 cases (2000–2002).
     Journal of the American Veterinary Medical Association.

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