「夜になると咳が悪化…」心臓?感染?咳で来院したチワワの診察

呼吸器

犬の咳の原因は、喉・気管・肺と原因になる場所によって、感染症、アレルギー、そして心臓病まで、本当にさまざまです。
見た目だけでは判断がつかず、軽い咳に見えても、実は肺炎や心臓病など命に関わる病気が隠れている場合もあります。

今回は、咳を主訴に来院したチョコちゃんの一例を通して、咳の診察・検査で何が分かるのか、そして特に犬で多い僧帽弁閉鎖不全症の治療について分かりやすく解説します。


症例:チワワのチョコくん

チワワ、12歳、チョコくん

お姉さん
お姉さん

1ヶ月くらい前から、遊んでいる時や明け方に、軽い咳をするようになりました。
ここ1週間くらいひどくて、昨晩は夜中も起きて咳をしていました。


診察

私(獣医)
私(獣医)

了解しました!
チョコくんの診察してみますね。

体重減少、脱水、発熱はなし。

喉を軽く押すと、咳が出る
:(コフテスト。首や気管に軽く圧をかけて咳が誘発される場合、気道の炎症や過敏性がある可能性が高くなります。)

聴診器🩺を当てると、心臓の雑音が聞こえます。

肺の聴診で、肺の音は問題ない。

私(獣医)
私(獣医)

(気道の炎症がありそうだな、気管虚脱?感染による咳?
心臓からくる咳の可能性もありそうだな・・・)


気管虚脱とは?

気管(空気の通り道)が押しつぶされて細くなる病気です。
気管虚脱では、気管を覆っている軟骨が弱くなり、呼吸のたびに気管がつぶれてしまいます。
チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、トイプードル
など、小型犬に多く見られます。
ガーガー、ブーブーという独特の咳が特徴で、興奮時・散歩後に咳が悪化します。

私(獣医)
私(獣医)

ガチョウが鳴いているような、大きな咳が特徴です。
咳をしている時の動画も診断の役に立つかも!

犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)とは?

ウイルスや細菌が関わり、咳が続くのが特徴。
犬同士で感染する病気で、ドッグラン、ペットホテル、トリミングなどで広がりやすい。

心臓性の咳(僧帽弁閉鎖不全症による)とは?

左心房と左心室の間にある「僧帽弁」がゆるんだり変形したりして、血液が逆流します。
心臓や肺に負担がかかり、進行すると 咳・疲れやすい・呼吸困難 などが出ます。

キャバリアトイ・プードルポメラニアンチワワマルチーズヨークシャー・テリアシーズーなど小型犬で、加齢とともに発症率が高くなります。

心臓による咳は、大きく分けて『①心臓が拡大することによる咳』と、『②肺に水が溜まることによる咳』があります。

①心臓が拡大による咳

心臓が大きくなり、気管や気道を押してしまうことで起こる咳のことです。

②肺に水が溜まることによる咳(肺水腫)

犬では、進行した心臓病(特に僧帽弁閉鎖不全症)による心不全が原因で、肺に水(血液の成分)が染み出してしまい、空気の通り道が水で満たされて呼吸が苦しくなる状態です。


検査

私(獣医)
私(獣医)

咳の原因によって治療は大きく変わります。
適切な検査を行い、咳の主な原因をしっかり特定していきましょう。

レントゲン検査

レントゲンは 「心臓が原因なのか」「肺・気管が原因なのか」 を見極めるのにとても有効です。

  • 心臓が大きい → 心臓病由来の咳を疑う
  • 肺に影がある → 肺炎・肺水腫・肺腫瘍など
  • 気管がつぶれている → 気管虚脱

など、大まかな方向性を決めることができます。

超音波検査(心臓)

僧帽弁閉鎖不全症では、僧帽弁の肥厚や変形、逆流の有無を心エコーで確認でき、確定診断が可能です。
さらに、心臓がしっかり縮んで血液を送り出せているか(収縮機能)を評価することで、治療が必要な状態かどうかの判断にも役立ちます。

血液検査

炎症や感染の程度を評価します。

  • 白血球の増減や炎症マーカー(CRPなど)で
    細菌性肺炎や感染症の可能性を推測します。

🐶 チョコくんの検査結果

私(獣医)
私(獣医)

レントゲンでは肺の状態はきれいで、肺炎の心配はありません
また、血液検査でも炎症反応は見られませんでした。

一方で、心臓🫀のサイズがやや大きくなり、気管を背中側に押し上げている状態が確認されました。

超音波検査でも、**僧帽弁の変性と血液の逆流(僧帽弁閉鎖不全症)**が認められ、血流の状況からみても、そろそろ治療を開始した方がよい段階💊と判断されます。

もちろん、気管虚脱や感染性の咳を完全に否定することはできませんが、
まずは心臓の治療を開始し、咳の改善が見られるかを1週間ほど様子を見るのが良いでしょう。

お姉さん
お姉さん

チョコ、心臓が悪くなっていたんですね。
お薬頑張ってみます。


🐶 治療

心臓の収縮を助け、負担を少なくする薬を1週間分処方しました

1週間後・・・

お姉さん
お姉さん

チョコ、ほとんど咳をしなくなりました。
お薬も全部飲めました。

私(獣医)
私(獣医)

よかったです!
今回の検査で、咳の原因が心臓の拡大によるものだとわかりましたね。

ただ、心臓のお薬は心臓そのものを治す薬ではなく、弱ってきた心臓を助ける薬です。
お薬をやめると症状が戻ってしまうため、今後も継続していくことが大切です。

心臓のお薬を継続処方して、1ヶ月後の再診にしました。


🐶 僧帽弁閉鎖不全症の治療について

内科的治療(お薬による治療)

強心薬、降圧薬、利尿薬、補助的治療(咳止め、酸素吸入)など。
定期的な心臓エコーやレントゲンで経過観察し、進行した場合は薬の組み合わせや量を調整します。

私(獣医)
私(獣医)

内科治療(薬による治療)は、症状の進行を遅らせることが目的であり、心臓そのものを治すことはできません。
そのため、基本的にお薬は今後ずっと継続して使用する必要があります。

🐶 犬の心臓の療法食🍽️は、
「弱ってきた心臓に負担をかけにくいように作られた特別なごはん」です。⬇️

外科的治療(手術)

僧帽弁形成術(弁の修復)は、専門施設で行われる高度医療です。
この手術により、弁逆流の根本的な改善や、長期的な予後の改善が期待できます。

私(獣医)
私(獣医)

手術について相談・希望されるご家族には、専門病院を紹介させていただきます。


まとめ

咳の原因はさまざまですが、診察や検査を行うことで原因を特定し、それに合わせた治療を進めていきます。
咳が出る時間帯や状況、そして咳の動画は診断にとても役立つので、可能であれば記録しておきましょう。

軽い感染症が原因のこともありますが、肺炎心臓の病気による咳は命に関わることもあります。
特に犬で多い僧帽弁閉鎖不全症では、早期の治療介入と生涯にわたる継続治療が重要です。

「なんとなく咳が増えたかな?」と感じた時点で、悪くなる前に一度ご相談いただくと安心です。
大切なワンちゃんのためにも、早めの受診をおすすめします。

咳をするようになったチョコちゃんの一例、参考にしていただけましたら幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

Brown AJ, Rush JE. Small Animal Internal Medicine. 6th ed. Elsevier; 2020.

Tilley LP, Smith FWK. The 5-Minute Veterinary Consult: Canine and Feline. 7th ed. Wiley-Blackwell; 2022.

Atkins C et al. Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Canine Chronic Valvular Heart Disease. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2019.

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