「今日は犬の去勢手術♂の日でした」― 手術の流れとその後のようす

予防

今日は、子犬の去勢手術(精巣を摘出する手術)を行う予定です。

だいたい、5、6ヶ月くらいで去勢手術を実施することをお勧めしています。
男の子のわんちゃんたちは、その後、足を上げておしっこするマーキング行動が始まりますが、
その前に手術を実施すると、その後も座っておしっこしてくれるようになります。
それ以降でも、去勢手術を実施することは、将来的な病気(会陰ヘルニアや精巣腫瘍など)を予防し
飼いやすさ、犬のストレス軽減など、メリットはたくさんあります。

6ヶ月のトイプードル、レオちゃんは、今日は朝ごはんを我慢してきてくれました。

胃の中に、ご飯が入っていると麻酔をかけた時に、万一吐いてしまうと詰まって危ないので、
手術の日は絶食をお願いしています。

ご家族は、「がんばってね!あとで迎えにくるからね!」と言って、心配そうに、
レオちゃんを動物病院に預け、いったん帰って行きます。

レオちゃんの体重測定、腕の血管に点滴やお薬の投与に使うルート確保の点滴留置と、
同時に採血、血液検査を行います。

エリザベスカラーをつけてもらって、レオちゃんはしばしケージ内で待機です。

今日は去勢手術と同時に、犬歯の乳歯が抜けずに残っているので、同時に抜く予定です。

トイプードルやチワワなどの小型犬では、永久歯が生えても乳歯が抜けず、
並んで生えたまま、残ってしまうことがしばしばあります。
乳歯遺残があると、永久歯との間に食べカスが溜まりやすく不衛生だったり、
歯並びに影響するので、去勢手術のときに一緒に抜いてしまうことを提案してます。

13時過ぎ、外来診察は終了。
手術の準備です!
血液検査は異常なし。
注射(痛み止めと抗生剤)、麻酔薬を準備します。


犬の去勢手術は、動物看護師さんと獣医師の2人で行います。

動物看護師さんは、手術中に器具を出してくれたり、麻酔の確認、調節をしてくれます。

いよいよ、去勢手術を始めます!!
動物看護師さんがレオちゃんを連れてきてくれました。
最初に少しうとうとするお薬、前投薬を、留置から入れます。
すこしレオちゃんの力が抜けてきたのを確認し、
次に麻酔薬をゆっくり、反応を見ながら入れていきます・・・

ここから動物看護師さんとの連携が大切!
気管チューブを、クッタリしたレオちゃんの喉に挿管します!
顎に紐で固定、麻酔機につなげて、酸素・ガス麻酔を入れて、
手足を手術台にロープに固定!
心電図、血圧、血中酸素濃度を測定する器具の装着!

これらをテキパキ手際よくおこなって、
レオちゃんの呼吸数、心拍数、血圧、血中酸素濃度など、安定していることを確認します。

手術で皮膚を切る場所の周辺の毛刈りをします。
動物看護師さんがレオちゃんの皮膚を消毒してくれいる間、私は自分の手を消毒し、
手術ガウンと滅菌手袋をします。

去勢手術で切開するのは、陰嚢の少し上の、陰茎の根本近くの皮膚を1カ所、
犬の大きさによりますが、1〜2cmくらいです。
体重2kgのレオちゃんでは1cmくらいです。
精巣を取り出して、糸で結紮して、切断して・・・
縫合は、3針で済みました。

次に、乳歯抜歯。犬歯の乳歯を4本。根元を折らないように、慎重に・・・

手術時間は、麻酔を入れてから覚醒するまで、だいたい30〜40分程度で終わります。

レオちゃんの麻酔が十分抜けてゆき、自分でしっかり呼吸できるようになったこと確認して、
気管チューブを抜きます。もうしばらく、心拍や呼吸状態を確認して、低体温にも気をつけて、
ケージに移動。点滴を続けて、夕方のご家族のお迎えを待ちます。

夕方5時過ぎ、ご家族が迎えにきてくれました。

レオちゃんのお返しを前に、去勢手術後の注意点をご家族にお話しします↓↓

  • 術前の血液検査では何も問題なし。
  • 手術の傷跡は、陰茎の上に1cmくらい、3針糸がかかっていて、保護テープが貼ってあります。
  • 抗生剤と、痛み止めのお薬を、明日から5日間飲ませてください。
  • 抜糸は、1〜2週間後、また病院に来てくださいね!
    それまで、エリザベスカラーでも良いですが、あっちこっち当たったりご飯の邪魔にはなるので
    エリザベスウェアといって、術後服(手術の傷を隠して、きたままトイレもできるお洋服)も便利です。
  • ご飯について。今日は食べないで、ゆっくり休ませてあげてください。
    明日から、普通にご飯を開始して大丈夫。
    抜歯をしたけど、ドライフードでも問題なく食べれることが多いです。
  • 手術後、同じように良いだけ食べていると、太りやすくなることも確かですが、
    ちゃんとご飯の量を気をつけていれば防げることが多いです。
    手術後の子用のご飯も利用されると便利です。
  • 術後安静は基本的には必要なし、散歩も行ってOKですが、
    激しい運動は避けて、無理しない範囲で、傷が汚れないようにきをつけて下さい。

レオちゃんは、もうすっかり元気で立ち上がり、ケージのなかを落ち着きなく歩き回って、
キュンキュンないて、お迎えを待ち焦がれています。

点滴留置を外して、術後服を着ます。レオタードみたいで、かわいい・・・

レオちゃんはご家族を見つけると、狂気乱舞!!!しっぽをブンブン振って、喜びを全身で表しています。

ご家族も、嬉しそう。ちょっと涙ぐんでいたかも・・・きっととても心配して待っていたんだと思います。

抜歯した乳歯も犬歯4本、お渡ししました。おおっ!と驚き喜んでくれます。

レオちゃん、元気そうでよかったけど、今日はきっとたくさん頑張って疲れたはず。
おうちで安心して休んで、たくさん寝て、明日から元気にご飯食べてね。
また抜糸の時に、元気で会えるのを楽しみにしています。

去勢手術は、決して難しい手術ではありませんし、ほとんどの男の子が経験する、最初の試練です。
私たち獣医師も、元気な子を元気なままお返しできるよう、決して間違いのないよう、
気を引き締めて取り組んでいます。

上記は、私の勤務する動物病院での犬の去勢手術の1例です。参考にしていただけましたら幸いです。


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