猫のおしっこトラブルはとても多いのですが、なかでも 尿道閉塞(尿閉)は命に関わる緊急疾患 です。
今回のコハクくんは、おしっこが出ずにぐったりし、嘔吐も見られ、急性腎障害を起こした状態で緊急処置・入院治療 が必要になりました。
この記事では、
緊急処置の様子、急性腎障害について、尿道閉塞の治療と再発予防 について、コハクくんの例を通してわかりやすくまとめました。
症例:おしっこが出ない、ぐったりのコハクくん
猫のコハクくん、5歳の雑種猫。


昨日から何度もトイレに行ってはおしっこが少ししが出なくて、今日になって何度も吐いて、ぐったりしています。
お腹を触診してみると・・・

膀胱が強く拡張していて、かなり圧がかかっている状態です。
このままでは危険なので、早めに処置させてください。
診察 🩺


静脈留置をとって、尿道閉塞の解除のために必要な鎮静の準備と、採血を行います🩸
検査
血液検査

尿道閉塞を起こすと、腎機能低下と高窒素血症、電解質異常が起こることがあります。

超音波検査

膀胱内は尿が溜まって拡張し、緊張しています。
膀胱破裂はおきていないようです。
🚨緊急処置:尿閉解除
コハクちゃんに鎮静剤を投与し、体の緊張が十分にゆるんだことを確認してから尿道の状態をチェックしました。

すると、陰茎の先端は舐めた影響で赤くただれたようになっていました。
尿道カテーテルや潤滑剤、生理食塩水を使いながら、尿道内に詰まっている閉塞物を少しずつ取り除いていきます。

陰茎の先端から約1cmほどの位置で、砂状の結晶がしっかりと詰まっていることが確認されました。
その部分の結晶を取り除くと、尿道カテーテルが膀胱まで無事に通過し、尿閉を解除することができました。
膀胱内にたまっていた尿は、ワインのように濃い赤色をしていました。

膀胱を圧迫すると、膀胱破裂を起こすことがあるので家庭で絶対に行ってはいけません!必ず動物病院で処置してくださいね。
検査の結果 📝

🔴 腎臓の数値の上昇、高カリウム血症が認められました。

コハクくんは尿が出なかった影響で、急性腎障害になり、危険な状態でした。
尿が出る状態を確保して、しっかり点滴を行う必要があります。
今日は入院して、明日また検査しましょう。

尿道の詰まりが取れて、おしっこが出るようになってよかったです。
腎臓の状態、心配です・・・
尿閉による腎機能低下(急性腎障害)とは?

尿閉(おしっこが出ない状態)が続くと、膀胱の内圧がどんどん上がり、その圧力が腎臓へ逆流するようにかかってしまいます。
その結果、以下のような流れで腎機能が急速に低下することがあります。
✔ 圧力で腎臓がダメージを受ける
尿が腎臓側へ押し戻されるような状態になり、腎臓のろ過機能(GFR)が低下します。
✔ 血中の老廃物が急上昇
本来、尿として排泄されるべき クレアチニン・尿素窒素(BUN) が血液中にたまります。
これが「急性腎障害(AKI)」の状態です。
✔ 放置すると命に関わる
尿閉が24–48時間以上続くと、腎障害が重度になり
・嘔吐
・脱水
・元気消失
など全身症状が強くなり、治療が遅れるほど予後が悪くなります。

✔ 尿閉解除で改善することが多い
急性腎障害は、原因である尿閉を速やかに解消すれば 比較的改善しやすい腎障害 です。
ただし、重度の場合は点滴や入院管理が必要になります。

入院治療へ・・・🏥

尿量のモニタリング
尿がきちんと出ているかを常に確認します。
- 尿道カテーテルを留置して、再閉塞を予防して尿量をモニターします。
点滴治療
腎臓の血流を改善し、老廃物を希釈・排泄させるために点滴を行います。

- 静脈点滴
- 電解質の調整(高カリウム血症は重度なら致死的不整脈のリスク)
- 脱水の改善、循環の安定化
痛み・炎症の管理
尿閉による炎症や手技による痛みや炎症が強いため、適切な管理を行います。

翌朝☀️退院へ・・・


血液検査では、高窒素血症・高カリウム血症ともに、正常値になりました。
尿道カテーテルを抜いてから、排尿もできることも確認しました。
もう退院しても大丈夫です。

本当によかったです!
🐱 尿閉になる原因

尿閉の原因は、
👉 若いオス猫は特に、結晶+粘液の「尿道プラグ」が最も多い原因です。

ほかにも尿道結石や、重度の便秘症、腫瘍、神経のトラブルや炎症など、さまざまな要因が尿閉を引き起こすため、迅速な診察と治療が必要になります。
若いオス猫の尿道プラグは、
膀胱炎による粘液増加・結晶生成・脱水など複数の要因が重なって発生します。
雄猫の細い尿道構造も、閉塞を起こしやすい大きな要因です。

🐱 治療

コハクちゃんの場合も、尿中のストルバイト結晶と炎症により、「尿道プラグ」ができて、尿道が詰まってしまったことが原因です。
🔵 療法食(結石溶解用)
🔵 1週間程度の抗生剤、消炎剤
🔵 しばらくエリザベスカラー


尿閉を繰り返すと、炎症によってオス猫の細い尿道がさらに狭くなり、ますます詰まりやすい状態になります。
この狭窄が進んでしまうと、最悪の場合は外科手術が必要になることもあります。

今は、コハクちゃんが陰茎を舐めて悪化させないよう エリザベスカラーを着けて,
処方したお薬と療法食をしっかり続けて 管理していきましょう。

わかりました!二度とコハクが尿閉にならないように、気をつけていきます!

🐱 お勧めの結石溶解食はこちら ⬇️
尿路閉塞になったことのある子は、今後も継続して続けることをお勧めします。
⚠️結石の溶解食の『療法食』のほか、“猫の下部尿路に配慮”や、“猫の下部尿路の健康維持のために”といった、『一般食』もたくさんあります。猫によって効果が不十分な場合もあるので、使用の際は動物病院に相談することをお勧めします。
🐱食事の変更で尿閉が再発してしまった猫のお話はこちら⬇️
🐱 飲水量の確保も大切です。流水が好きで飲水が促される子が多いので、お勧めです。⬇️
まとめ 🌼
尿道閉塞は急性腎障害を引き起こし、重症化すると 膀胱破裂など命に関わる状態 になることもあります。
「おしっこが出ていないかも?」と感じた場合、特に 嘔吐・ぐったりしている といった症状があれば、できるだけ早く動物病院を受診してください。
また、尿道閉塞を繰り返したり、陰茎を舐め壊して尿道に炎症が起きると、尿道がさらに細くなり ますます詰まりやすい状態 になります。
こうした状態が進行すると、最悪 外科手術が必要 になることもあります。
再発を防ぐためには、療法食を中心とした管理の継続 や 定期的な検診 がとても大切です。
今回は、尿閉で緊急処置・入院治療となった 猫のコハクちゃんの症例 をもとにまとめました。参考にしていただければ幸いです。



※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
Ettinger SJ, Feldman EC, Côté E. Textbook of Veterinary Internal Medicine. 8th ed. Elsevier; 2017.
Polzin DJ. Chronic Kidney Disease and Acute Kidney Injury in Dogs and Cats. In: BSAVA Manual of Canine and Feline Nephrology and Urology. BSAVA; 2011.
Cooper ES, Owens SD. “Evaluation and Management of Feline Urethral Obstruction.” Journal of Veterinary Emergency and Critical Care. 2004.
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