高齢になると、少しずつ行動や生活リズムが変わってくるワンちゃん。
今回ご紹介するシーズーのまめちゃんも、その変化のひとつとして認知症の症状が見られるようになりました。
突然の夜鳴きや、ぐるぐると目的なく歩き続けてしまう徘徊…。
「どう接してあげればいいのだろう」「これも認知症なのかな?」と、不安や迷いを抱える飼い主さんは多いと思います。
この記事では、まめちゃんの様子を例に、犬の認知症でよくみられる症状と、
“治す” というより 今の状態を受け入れながら、安心して過ごせるためのサポート をわかりやすくまとめました。
大切なわんちゃんの変化と向き合う皆さまの参考になれば嬉しいです。
症例:シーズーのまめちゃん
シーズーのまめちゃん、15歳、男の子

まめちゃんは、心臓の病気(僧帽弁閉鎖不全症)があり、2ヶ月ごとの定期検診で来院してくれました。

様子はどうでしょうか?咳や、呼吸数の増加はないでしょうか?

はい!咳もないですし、とても調子が良いです!
食欲もあって、元気なんですが・・・
最近、聞き分けがなく怒りっぽいし、鳴くことが増えました。
部屋をぐるぐる歩き回っていることも多いし。
犬も認知症があるんでしょうか?
◆ 犬の認知症(犬認知機能不全症候群:CCDS)とは?

高齢になると脳の働きが低下し、記憶・学習・行動パターンに変化が出る病気です。
人の認知症に似ており、ゆっくり進行します。
🔎 だいたい何歳ごろに発症?小型犬と大型犬の違い
- 小型犬:寿命が長いため、認知症が目立ち始めるのはおおむね 10歳~
- 大型犬:老化がやや早く、 8~9歳頃から 認知症の兆候が出ることがある
◆ 主な症状(よく見られる行動変化)
- 昼夜逆転(夜に徘徊、吠える)
- 怒りっぽくなる、我慢が効かなくなる
- 呼んでも反応しない(耳が遠いだけでないことも)
- 同じ場所をぐるぐる回る
- トイレの失敗が増える
- 家族を認識しにくくなる
- ぼんやり立ち尽くす、狭いところに入り込む

◆ 原因
- 加齢による脳の変性、神経細胞の働きの衰え
- 脳腫瘍、脳梗塞など

原因を確定するためには、脳のMRI検査を行う必要があります。
しかし全身麻酔が必要な検査で、認知症を発症する高齢な子には負担となり、あまり行うことがありません。
診断は、身体検査や血液検査、神経チェックを行い、
他の病気(関節痛・視力低下・聴力低下・内分泌疾患など)を除外して診断します。
◆ 治療・サポート


まあ、まめも15歳だし、仕方ないですよね・・・

今まで、大切にお世話してきていただいたからこそ、向き合うことになる問題と言えますね。
まめちゃんとご家族が幸せな日常が送れるように。どのように認知症と向き合うか、考えていきましょう!
🟡 犬の認知症を受け入れて行うサポート
今の状態を受け入れながら、犬が安心して穏やかに過ごせるようにサポートする
という視点はとても大切で、ご家族の心の負担も軽くしてくれます。
不安を減らす環境づくり

認知症の犬にとって、世界は「知らないことが増えていく」状態です。
その不安を減らすことがケアになります。
- 家具の配置を変えない
- 徘徊時にぶつからないよう、クッション材を家具の角につける
100均の「コーナークッション」「スポンジガード」でOK - 滑らない床にしてあげる
ヨガマットなどを活用 - 常夜灯をつける
暗くなることで不安がまし、夜泣きが始まる場合には有効なことも

歩き回っている場合、止めるより、安全に歩き回れるようなルートを確保してあげると良いと思います。
🐶壁にゴンっと当たってしまう子には、目や顔の保護に使えるかもしれません⬇️
しんどさを減らすための医療ケア💊

大切なまめのため、飼い主として最後まで、責任をもってしっかりみてあげたいです!

素晴らしいです!でも・・・
認知症との付き合いは、長期戦になることが多いです。
頑張りすぎると、ご家族がしんどくなって、体調を崩してしまうかもしれません。頑張りすぎない。この気持ちも忘れないでくださいね!

動物病院では、不安を軽減するサプリメントのような軽いものから、
短期間眠らせる薬まで、さまざまな投薬治療を認知症の段階に応じて提案します。
- 夜鳴きが強い → 睡眠リズムを整える薬
- 不安が強い → 軽い抗不安薬、サプリメント併用
- 食欲低下 → 食欲刺激剤
🐶動物病院でも置いている、
犬や猫の不安やストレスを和らげるための健康補助食品(サプリメント)です💊⬇️
飼い主さん自身が無理をしない

受け入れるケアでは、 飼い主さんの心の余裕 が最も大切。
- 夜鳴きが続くなら、薬の使用も前向きに
- なるべく自分の生活リズムも守る
- 家族と役割を分担
- ペットシッター・デイケアも遠慮なく利用

夜泣きや徘徊が続くと、ご家族やご近所への配慮、そして寝不足による心身の負担で、飼い主さんが限界まで頑張ってしまうことがあります💦
「抱っこしていると少し落ち着くから…」と、ご自身の睡眠時間を削って介護されている方も珍しくありません。
高齢のワンちゃんに使うお薬は慎重に判断する必要がありますが、
不安や夜間の興奮を和らげるサポートは、状況に応じてご提案できます。
ひとりで抱え込む必要はありませんので、どうぞ気軽にご相談くださいね。
「完璧な介護」より、
飼い主さんが笑って接してあげられる余裕があることがいちばん です。


認知症の介護、頑張りすぎなくて良いんですね。ちょっと気が楽になりました。
まめちゃんその後・・・
まめちゃんはその後、2ヶ月ごとの心臓の検診に来てくれています。
現在、精神安定のサプリメントと、寝る前に眠気を誘発するお薬を使っています。

まめちゃんの心臓の状態は、進行はなく、落ち着いているようでした。
その後、夜間は眠れていますか?

まちまちで、やはり1時間くらいで起きてしまうこともありますけど💦
しばらく歩いて、また寝てしまいます。
お薬を使っていた方が、良いようです。
家族は休めているので、今はこのままで大丈夫です。


わかりました!
もしもう少しお手伝いが必要であればお薬を検討しますので、相談してくださいね。また2ヶ月後、お待ちしてますね!
まとめ
大切なワンちゃんの高齢化に伴い、認知症は決して珍しいものではありません。
長く一緒に過ごしてきたからこそ、向き合うことになった“新しいケアのステージ”とも言えると思います。
なかでも夜泣きや徘徊は、ご家族の睡眠や生活に大きな負担がかかることがあり、
「大丈夫です」とおっしゃる方ほど、無理をしてしまっていないか心配になることもあります。
頑張りすぎないことも、とても大切なケアのひとつです。
飼い主さんご自身の心と体が元気でいることが、ワンちゃんの安心にもつながります。
動物病院では、介護グッズのご提案や、お薬によるサポートなど、できる限り負担を減らすお手伝いができますので、どうぞ一人で抱え込まずご相談くださいね。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
Landsberg GM, Madari A, Žilka N. “Canine Cognitive Dysfunction Syndrome: A Review.” Veterinary Medicine: Research and Reports. 2012.
Landsberg G, Hunthausen W, Ackerman L. Behavior Problems of the Dog and Cat. Saunders, 2012.
Head E, Zicker SC. “Nutritional Management of the Canine Cognitive Dysfunction Syndrome.” Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry. 2004.
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