猫は好奇心が強く、転がるもの・揺れるもの・小さくて口に入りそうなものを見ると、つい「狩り」のスイッチが入ってしまいます。その結果、おもちゃや日用品を誤って飲み込んでしまい、消化管に詰まって手術が必要になるケースも珍しくありません。
今回ご紹介するのは、実際におもちゃの誤飲で開腹手術となった猫のチビちゃんの一例です。
記事の後半では、猫が飲み込みやすい危険アイテムのリストも掲載しています。
「うちの子は大丈夫」と思っている飼い主さんほど参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください🐱。
症例:5ヶ月齢の猫のチビちゃん
チビちゃん、生後5ヶ月。
お母さんに連れられて、女の子がチビちゃんを抱いて心配そうです。
昨日まではとても元気だったけど、今朝、吐いた後がそこらじゅうにあったとのこと。

チビちゃんがぐったりして、動かないんです・・・
診察

来院時、ぐったりして体温も低く、血圧が下がってショック状態。
危険な状態です!
すぐに静脈留置を入れて、点滴をして体を温めます。

お腹を触ると、腸が全体的に硬く腫れています。
お腹に何か、ありそうです。
検査
1時間くらい点滴をすると、血圧が戻ってきて、体温も回復してきました。

血液検査

- 中毒はないか
- 低血糖になってないか
- 電解質のバランスは良いか
- 血球の状態はどうか
チビちゃんは循環が悪く、腎臓の数値がやや高かったですが他はそれほど問題ありませんでした。
レントゲン検査
小腸が広範囲に膨れて、拡張しています。
腸の中に異物は映っていません。
超音波検査

胃から小腸にかけて、広い範囲で液体が溜まっています。
拡張した腸の先には、何か形のはっきりしないものがあるようです。

チビちゃんは、腸に何かが詰まって危険な状態です。
命を救ってあげるには、なるべく早く開腹手術をして、異物を取ってあげる必要があります。
開腹手術:腸に詰まっていたのは?

紐がついている、ネズミのおもちゃが腸から摘出されました。
⚠️猫が飲み込みやすいものリスト
1. ひも状のもの(特に危険)
猫は細長いものに強く反応し、遊んでいるうちに飲み込みやすいです。
腸閉塞を起こしやすく 最も危険なカテゴリです。

- 紐付きのおもちゃ
一緒に遊んでいない時は、必ず片付けましょう。 - ミシン糸・裁縫糸
(糸の端から飲み込んでいって、針ごと飲んでしまうことも!) - ビニールひも、リボン・ラッピング用のひも、毛糸など
※⚠️腸が“手繰り寄せられる”ように傷むことがあるため緊急手術になりやすい
2. 小さくて口に入りやすいもの
猫が前足でちょいちょい触って遊んでいるうちに誤飲することが多いです。
- ヘアゴム
- 小さなおもちゃのパーツ
- ボタン
- イヤホンの先端(イヤーピース)
- ペットボトルキャップ
- ビー玉・小石
3. ビニール袋

カサカサ音が好きなのか、端からシャクシャクと噛んで飲み込みます。
大きい塊状になると閉塞を起こします。
- プラスチック包装
ゴミ箱に被せてあるビニールや、スーパーの袋などを齧っていることが多いです。
4. 植物・花の一部

植物を口にする猫は多いです。
中毒を起こすものがあるので、要注意です。
- 観葉植物の葉
鉢植え、花瓶、庭植えなど - ポトス・ユリ(※⚠️ユリ科は特に猫に猛毒)
5. 布・スポンジなどの柔らかい素材
噛みちぎって食べてしまう猫もいます。
- ヘアターバンや靴下
- クッションの綿
- メラミンスポンジ
- タオルの端
🐱そのほか、毛玉が詰まる猫ちゃんもいます。⬇️
飲み込んでしまったら・・・
以下のことがありましたら、速やかに動物病院に連絡しましょう。
- 飲み込んだ現場を見ていた。
- 現場は見ていないけど、おもちゃなど見つからないものがある。
- 嘔吐が続いて、ぐったりしている。

飲み込んだかも?と思ったら、
- 無理に吐かせない(傷や中毒を悪化させる場合あり)
- できれば 同じ素材のものを持参
- いつ・何を・どれくらいの量 をメモ
- 早めに動物病院へ
誤飲に対する動物病院での対応🏥
飲み込んだものと、異物の場所によって、以下の対応を検討します。
- 催吐処置
嘔吐を誘発するお薬で、吐き出させます。
飲み込んだものが胃にあって、喉や食道を傷つける恐れのないもの - 内視鏡検査
胃の中にあって、催吐がうまくいかない、あるいは喉や食道を傷つける危険性のあるもの - 開腹手術
内視鏡検査で取れないもの、すでに胃を通過して腸で閉塞しているもの、
🐶内視鏡で異物を取り出した犬のお話はこちら⬇️
その後。チビちゃん退院🐱
手術して5日後。チビちゃんは無事、食事が取れるくらいに回復し、退院となりました。


チビちゃん、元気になって本当によかったです!!
もう間違えて飲み込まないように、紐のおもちゃは片付けるようにします。

そうですね!
紐好きな子は、繰り返し飲み込むことも多いので、今後も気をつけてあげてね!
1週間後に抜糸で、元気に会えるといいです!
そう、チビちゃんは、生後5ヶ月にして、前科一犯🐱💦。
これからの長い猫生、よく気をつけてあげてね〜!
猫の一人遊びは、細かいパーツがない・紐がついていないなど、
安全なものを選びましょう。🐱⬇️
まとめ
猫の誤飲にも嗜好性?があるのか💦、紐好き、ビニール好き、植物好きなど、
繰り返し同じようなものを飲み込む子がいます。
多少飲み込んでも、吐き出したり、便から出ることもあるのですが、
いったん腸に閉塞を起こしたら、緊急手術、あるいは命の危機になってしまいます。
大変なことになってしまうので、油断なく、危ないものはなるべく部屋から取り払って、過ごせるといいと思います!
紐のおもちゃを飲み込んで、開腹手術になってしまった猫のチビちゃんの1例、参考にしていただけましたら幸いです🐱

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
- Crinò C, et al. Gastrointestinal foreign bodies in dogs and cats: 17 cases. J Small Anim Pract. 2023.
- Parlak K, et al. Gastrointestinal linear foreign bodies in cats: 12-case study. J Adv VetBio Sci Tech. 2022.
- Mylostyvyi R. String foreign body lodged under a cat’s tongue. Multiscience. 2023.




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