先ほど初めて発作を起こしました・・・!!!
トイプードルのミルキーちゃんを連れたご家族は、とても慌てて、ショックを受けた様子です。
大切な愛犬が発作を起こしたら、それは本当に心配ですよね。
しかし、多くの痙攣発作は2分程度で収まり、
すべての痙攣発作がすぐに治療が必要、というわけではないのです。
しかし、長時間続く痙攣発作はなるべく早く対応が必要です。
今回は、初めて痙攣発作を起こした犬の一例と、痙攣発作が起きた時の考え方と治療についてまとめました。
症例:3歳のトイプードル、ミルキーちゃん
ミルキーちゃん、3歳のトイプードル、女の子。
診察室でのミルキーちゃんは、何事もなかったかのように尻尾を振っています。

ですが・・・

いきなり痙攣しだして・・・ショックで・・・・
お姉さんが、ショック状態です・・・。
今まで元気で遊んでいた子が、急に豹変して痙攣し出したら、それはショックだと思います。
ショック状態のご家族に、獣医師の私は、落ち着いてもらうよう、なるべく穏やかに、ゆっくり話すように意識しています。

初めての痙攣、だったのですね🌼
どんな感じだったのか、もう少し詳しく教えてください☺️
ミルキーちゃんの痙攣発作の時の様子
- しばらくガクガクして、
- おしっこが出てしまい、
- 呼びかけに応じず、意識はなかった。
- 多分5分くらい?長く感じた・・
- その後、1時間くらい興奮状態で、部屋中ウロウロし続けていた。
- そして現在、すっかり元通りで、ご飯も食べることができた。

診察:頭?それ以外?
身体検査では、特に問題ありませんでした。
栄養状態、心拍、呼吸、体温、姿勢反射、脳神経反射、問題なし。
先にちょっと安心するようなことを言います。

詳しく教えてくださりありがとうございます🌼
今は落ち着いていますね。
実はほとんどの痙攣発作は、2分以内で収まりいつもの状態に戻ることが多いです。
そして、検査の目的と、検査では❌分からないことも言います。

お話の様子から、頭の中の問題、”てんかん発作”の可能性があります。
しかし、今、頭の中を調べることはできません。
なぜなら、頭の中を調べるにはMRI検査が必要で、この病院にはその施設がありません。
なので、今日は、頭の中以外に、痙攣発作を起こす原因がないか、しっかり調べていきましょう!
MRI検査の施設は、一部の大きい動物病院や専門の検査施設にしかありません。
そして動物では、全身麻酔が必要になります。

つまり、一般的な町の動物病院ではMRI検査がすぐにできないので、
ミルキーちゃんの痙攣の原因が頭の中、以外であれば、原因は頭の中であろう、
という消去法によって、診断に近づけていこうという作戦です。
検査:血液検査でわかること
頭の中以外でも、
低血糖・肝臓や腎臓の病気・電解質の異常・中毒など、
体の代謝が乱れたときにも痙攣が出ることがあります。
血液検査で確認していきます。

ミルキーちゃんは特に問題ありませんでした。
検査:心臓発作?
「心臓発作」と「痙攣発作」は発作の時の見た目が異なります。
🫀 心臓発作が疑われるとき
- 倒れたけど 手足は動かない(痙攣しない)
- 目は開いていることが多い
- 数秒で元に戻る
- 興奮時や運動時に起こりやすい
→ 特徴:力が抜けて「ペタッ」と倒れる

🧠 痙攣発作が疑われるとき
- 手足が突っ張る / ガクガク動く
- 目が見開いて焦点が合わない
- よだれ / 尿 / 便が漏れることあり
- 発作後も数分〜数時間 興奮状態だったり、ぼんやりする。
→ 特徴:体が勝手に動く / 意識がない
倒れ方の様子が、診断の大切な手がかりになります。
ミルキーちゃんの発作は、”心臓発作”ではなく、”痙攣発作” の可能性が高いです。
てんかん発作:頭の中の問題
発作時の状況、身体検査、血液検査から、ミルキーちゃんの痙攣発作は、
てんかん発作(脳の中の電気の流れが一時的に乱れることによる発作)の可能性が高くなりました。
確定診断は、MRI検査で頭の中を調べることですが、
初めて発作を起こした年齢別に、考えられる原因が違ってきます。⬇️
初めて発作が起きた年齢から考えられる原因
| 年齢 | 考えられる原因(例) |
|---|---|
| 1歳未満(子犬) | 先天的な脳の発達の問題、水頭症など |
| 1〜5歳(若い成犬) | 特発性てんかん、脳炎など |
| 高齢(5歳以上) | 脳腫瘍、脳炎、脳梗塞など |

ミルキーちゃんは3歳。
特発性てんかん発作の可能性が最も高いです。
❓ 特発性てんかん発作とは
脳腫瘍、外傷、感染症などの明確な原因がない状態を指します。
MRI検査などで調べても異常がない場合、”特発性”という名前がつきます。

特発性てんかん発作・・・どうしたら良いですか?
治療:まずは経過観察

すぐに治療が必要、というわけではないんですよ。
しかし、発作の間隔が狭すぎると、脳が発作を覚えて悪化しやすいので、
その場合はコントロールしたほうが予後が良いとされています。
痙攣発作の治療を開始する目安
抗てんかん薬維持療法開始ガイドラインに基づく、痙攣発作の治療を開始する目安です。
- 6か月に2回以上のてんかん発作があるとき
- てんかん重積(発作が止まらず続く発作、目安は5分以上)
あるいは群発発作(止まるけどまた起きる発作、1日のうちに)の場合 - 発作後徴候(発作後のぼんやりや興奮状態)が特に重篤あるいは24時間以上続く場合
- 発作頻度、持続時間、発作強度が3回の発作の中で悪化してきている場合
- 構造的てんかんが明らかな場合(脳腫瘍や炎症がわかっている場合)


次にくる発作が、数日以内かもしれないし、1年以上先かもしれません。
抗けいれん薬の治療は、治す薬❌ではなく、発作の頻度を減らす薬⭕️です。
1日2回の飲み薬を、これからの生涯、ずっと切らさずに飲み続けることになります。
ガイドラインと、ミルキーちゃんが快適に生活できるかを考えて、まずは次の発作の様子をみてみましょう!
お家でやって欲しいこと
発作が起きた時のチェックポイントと、対応についてです。
- 動画を撮る
発作のタイプ判定・治療方針に役立ちます。 - 時間を計る
5分を過ぎて、痙攣発作が止まらなければ、可能であればすぐに動物病院へ!
脳に大きなダメージが生じる可能性があるため、緊急対応が必要です。

診察してもらって、お話を聞いて、少しホッとしました。
実は私、人間の看護師なのですが、人間の痙攣発作は慣れてるけど、犬はもうどうしたらいいかわからなくて(笑)
人間の看護師さんだったんですね!私にしてみたら・・・人間の痙攣の方が、怖い!!🥶
日中、家を空けることが多い方でも、ペットカメラがあると安心です🌼⬇️
見ていない時間の発作の有無も確認できますね!
まとめ
痙攣発作の診察では、一般的な動物病院ではすぐにMRI検査を行うことができないので、
頭の中か?その他か?を検討するため、まず、血液検査などを行います。
頭の問題:てんかん発作が疑わしければ、初発発作の年齢によって考えられる原因を推察します。
治療は、発作の頻度や症状が重くなければ、必ずしも必要ではありません。
治療の必要性を検討するためにも、動画はとても有用です。心づもりをしていれば、きっと撮影できるので、やってみてください!
もし5分以上、発作が継続するようであれば、なるべく早く動物病院に連絡し、対応してくださいね。
📚 参考文献
- Berendt M, et al. International Veterinary Epilepsy Task Force consensus report on epilepsy classification and terminology in companion animals. BMC Veterinary Research. 2015.
- Podell M, et al. 2015 ACVIM Small Animal Seizure Consensus Statement. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2016.
- Platt S, et al. BSAVA Manual of Canine and Feline Neurology, 4th Edition. BSAVA. 2013.
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

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