猫が毛玉を吐くのは、当たり前のことでしょうか?
実際、グルーミングをして、飲み込んでしまった毛玉を吐き出すのは、
“ある程度は” 通常の出来事です。
しかし、吐き出す頻度が多いことは問題で、対策が必要かもしれません。
そして毛玉を飲み込むことが、一大事になることもあるんです。
今日は毛玉が小腸に閉塞して手術になってしまった、猫の1例と、毛玉対策についてお話しします。

症例:猫が何度も吐いている
むぎちゃん、メインクーン、5歳、男の子

昨日から、何度も吐いています。水を飲んでは吐いて、何もなくなってもえづいて・・・とても辛そうです。
検査:超音波検査、腸閉塞のうたがい
胃から十二指腸にかけて、液体がたくさん溜まっています。その先に、もやもやしているものが詰まっているようです。

何かが腸閉塞を起こしているようです・・・。このままでは腸に負担をかけ、危険なので、手術をして腸の異物をとった方が良いと思います!
治療:手術(腸切開)
その日のうちに、手術が行われました。
お腹を開いて、十二指腸を過ぎた空腸から、毛玉を摘出しました。

3日後、無事退院し、
10日後にお腹の傷の抜糸をして、無事終了しました。
毛玉対策について
猫が毛玉を吐くかどうかは、かなり個体差がありますが、
頻度は、月1回〜数回までが正常でしょうか。
大体、2週に1回でも多いかな、週1は多過ぎ、という印象です。
嘔吐の頻度が高いと、吐くことで食道の炎症を起こし、
さらに吐きやすい状態になる、悪循環になってしまいます。
- 吐く時苦しく、何も出ないこともある。
- 食欲の低下や、元気がなくなる。
- 食事が十分取れず、体重が減少する。
- 便が出にくかったり、細くなる。
毛玉も程度によっては、猫の健康をおびやかす存在になるのです・・・

これから、毛玉の対策について、いくつかご紹介します。
1.ブラッシング
換毛期には、なるべくブラッシングすることをお勧めします。
お勧めは、ブラシは猫の皮膚に負担をかけないものを選ぶことです。
先端が尖っているものは、皮膚を傷つけるので要注意です。
2.ご飯
こんなご飯も販売されています⬇️
毛玉を吐きやすい子は試してみるのも良いかもしれませんね。
3.胃腸潤滑剤
お腹の中で毛玉の滑りをよくして、便から排出しやすくします。
この商品は⬇️、猫の嗜好性が高く、与えやすく、お勧めです。
手に出して口元に持っていってあげると、自分からペロペロ舐めてくれる子が多いです。
舐めない子は、歯茎や口元、猫の手に塗りつけ自分で舐めとってもらったり、ご飯に混ぜたりします。
3.トリミングで被毛をカットする
長毛の子で、毛玉が問題になる子は検討した方が良いかもしれません。
実はむぎちゃん、毛玉の閉塞で3回、手術しています・・・。
現在は定期的なトリミングで被毛を短くすることにしています。

まとめ
うちの子は毛玉はよく吐くけど、元気だよ!と、毛玉をあまり問題に感じない方もいらっしゃいますが、猫は実はしんどい思いをしているのかもしれません・・・
毛玉対策をすると、毛玉を吐く頻度が減って、猫が健やかに過ごすことにつながるかもしれませんね!

吐いている原因が毛玉以外のこともあります。
他に病気が隠れていることもありますので、猫ちゃんの嘔吐が気になりましたら
ぜひ、動物病院で相談してみてくださいね。
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
Cannon, M. “Hair balls in cats: a normal nuisance or a sign that something is wrong?” Journal of Feline Medicine & Surgery. 2013; 15(1):21-29. DOI: 10.1177/1098612X12470342 PubMed+1
Loureiro, B. A., et al. “Sugarcane fibre may prevent hairball formation in cats.” Journal of Nutritional Science. 2014; Cambridge University Press & Assessment
Woerde, D. J., Hoffmann, K. L., Kicinski, A., Brown, N. L. “Oesophageal obstruction due to trichobezoars in two cats.” Journal of Feline Medicine & Surgery Open Reports. 2020;
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