犬や猫の皮膚に何かできものを見つけると、
何だろう?ニキビ?もしかして癌??だったらどうしよう・・・
と不安になってしまうのではないでしょうか。
不安でいるよりは、まずは細針吸引検査(細胞診)をしてみましょう!
そのできものが何者なのか?だいたい、その日のうちに判明します。
今日は、おでこにできものができた、猫のミルクちゃんの例を紹介します。
症例:おでこのできもの、猫のミルクちゃん
雑種猫、8歳、女の子のミルクちゃん。


2ヶ月くらい前から、ミルクのおでこにプツッと何か出来ました。
引っ掻いて血が出て止まって、また血が出て、治ってを繰り返しています。
蚊に刺されか何か、でしょうか??
診察
おでこに、5mmくらいの肌色のできものがあります。
表面は傷ついて、血の瘡蓋がくっついています。

確かに、5mmくらいのできものがありますね。
皮膚のできものは、見た目で判断はするのは危険です。
どんな細胞からできているのか、確認してみましょう!

細針吸引検査(細胞診、FNA)とは
皮膚や体にできた しこり・できもの に、細い針を刺して、中の細胞を少しだけ採取する検査です。
採った細胞は、染色して 顕微鏡で確認します。

✅ この検査でわかること
- 腫瘍か、炎症か
- 腫瘍なら、良性か悪性かのおおまかな見分け
- 次に取るべき 治療の方向性
炎症なのか、腫瘍なのか、ほっといて良いのか、手術したほうが良いのか。
だいたいの判断ができます。


針を刺すって・・・ミルクに我慢できますか?痛いですか??
✅ 細針吸引検査(細胞診)の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 痛み | 予防注射の針と同じくらい。ほとんどの犬、猫は我慢できます。 |
| 麻酔 | 基本 不要(じっとできない場合は補助) |
| 時間 | 数分で終了 |
| リスク | 非常に少ない(出血はごくわずか) |

検査はほとんど一瞬です。
チクチクっとして終わるので、ミルクちゃん、頑張りましょう!
できものの正体、皮膚の肥満細胞腫とは
検査のスライドを見てみると・・・
青っぽく染色された小さい粒々をたくさん含んだ、細胞がたくさん取れています。
肥満細胞腫の可能性が高い、ということがわかりました。
🐱 猫の「皮膚の肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)」とは?
皮膚にできる しこり(腫瘍)の一種です。
猫では 比較的よくみられる皮膚腫瘍で、
良性の場合も悪性の場合もあるため、まずは検査が大切です。
痒みを伴い、猫が引っ掻いたり、舐めたりすると、
周辺が赤くなったり、血が出たら止まりにくいのが特徴です。

ミルク、癌だったんですか!?どうなっちゃうんでしょうか・・・
🌸 予後(よくなる見込み)
- 皮膚にできたタイプ → 手術でとれる場合は 良好なことが多い
- 脾臓や肝臓、消化管にできるタイプ → 進行性のことがあり、別の治療が必要になる
→ 皮膚に見つかった時点で 早めに検査・治療することが大切です。

ほとんどの皮膚の肥満細胞腫は、手術して取ってしまえば、あまり心配ありません。
しかし、脾臓や肝臓など、お腹の中にも肥満細胞腫が見つかることがあります。
まずはミルクちゃんの詳しい検査をしましょう。
皮膚の腫瘍から、全身の検査へ
ミルクちゃんは、詳しい検査(血液検査やレントゲン、超音波検査)を行って、
他に肥満細胞腫は見つからず、皮膚だけに限局した腫瘍だということがわかりました。


できものは、おでこの皮膚だけの様でよかったです!
しかし、腫瘍なので、自然と消えてなくなることはありません。
小さいうちに、手術して取った方が良いと思います。
手術と、病理検査へ
ミルクちゃんのおでこの肥満細胞腫の手術が行われました。

切り取った腫瘍は、病理の検査に提出します。
病理検査
しこりを“正確に診断”するために必要な検査です。
切り取った組織全体を見ることで、
腫瘍の種類・悪性度・切除の状況 を詳しく調べます。
✅ 病理検査で分かること
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 腫瘍の種類 | 良性か悪性か、どのタイプの腫瘍かが明確になる |
| 悪性度(グレード) | 進行しやすいか、転移しやすいかが分かる |
| 切除断端(マージン) | 手術で「取り切れているか」どうかが分かる |
🐾 病理検査はなぜ大事なの?
- 治療方針(経過観察/追加治療)が変わる
- 予後(今後の見込み)が分かる
- 再発・転移のリスクの目安になる
つまり、病理検査の結果で、「その後の適切な対策」を立てることができます。

ミルクちゃん、本当によく頑張ったね!!
1週間後、病理の検査結果のお話と、抜糸の予定です!
ミルクちゃんのできものは小さかったので、手術したその日のうちに退院できました。
病理検査の結果と、その後
ミルクちゃんの腫瘍の病理検査結果は、
- 皮膚の肥満細胞腫
- 悪性度は低い
- しっかり切り取ることができているので、再発の可能性は低い。
ということで、抜糸をして今回で治療は終了です。


手術はドキドキしたけど、腫瘍が小さいうちに見つかって、
取り切ることができて、本当によかったです!
まとめ
皮膚のできものは、腫瘍なのか、炎症なのか、そのほかなのか、
見た目で判断することはできません。
見つかった時は小さくても、悪性の出来物や、大きくなるのが速いものもあります。
小さいうちに見つかった方が治療もしやすいです。
癌だったらどうしよう💦・・・と心配になって過ごすよりは、
早めに動物病院に相談し、細針吸引検査(細胞診)を受けてみることをお勧めします。
おでこに出来物ができた猫のミルクちゃんの一例でした。
参考にしていただけましたら幸いです。
参考文献
Mast Cell Tumors in Cats: Clinical update and possible new treatment avenues — Carolyn Henry & Chamisa Herrera. J Feline Med Surg. 2012;15(1):41-47. PMC+1
Feline cutaneous mast cell tumours: a UK‑based study comparing signalment and histological features with long‑term outcomes — K. Melville, K. C. Smith, M. J. Dobromylskyj. J Feline Med Surg. 2015. PubMed+1
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

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