犬の去勢・避妊手術前に必読:術前検診のチェックリスト

避妊・去勢手術🏥

多くの愛犬にとって、避妊・去勢手術は最初の大きなイベントです。
若い子だからこそ、
「手術は本当に大丈夫?」「安全にできるの?」
とご心配される飼い主さまは少なくありません。

確かに、去勢・避妊手術は日常的によく行われる処置ですが、どんな子でも安全に実施することが最も大切です。

例えば、停留精巣がある場合は手術の方法が変わりますし、乳歯の遺残腹壁ヘルニアが見つかった場合には、同時に治療を行うこともあります。

今回は、チワワのむさしくんの手術前検査を例に、
術前に確認しておきたいチェックポイント
✅手術と同時に行われることの多い処置
✅手術後に向けた準備
について、分かりやすくまとめました。

🐶手術当日の様子、タイムテーブルはこちら⬇️

症例:チワワのむさしくん🐶

チワワのむさしくん、6ヶ月、男の子です。

今日は、去勢手術前の検診に来てくれました!

お姉さん
お姉さん

むさしくん、去勢手術をしたいと思っています。

私(獣医)
私(獣医)

では、去勢手術前の診察をしていきますね!


🐶 手術前の検診チェックリスト(避妊・去勢手術)

① 全身状態のチェック 📝
  • 体格・体重の確認
  • 体温・呼吸・脈拍の確認
② 心臓・呼吸器のチェック 📝
  • 聴診で心雑音や不整脈がないか
  • 気管虚脱や短頭種の呼吸状態(麻酔リスクの評価)
③ お腹・生殖器のチェック 📝
  • 精巣が左右とも陰嚢内にあるか:停留精巣の確認)
  • 発情の有無:手術タイミングの判断)
  • 腹壁ヘルニア(臍ヘルニア・鼠径ヘルニア)の有無
  • 妊娠の可能性(必要に応じて超音波検査)
④ 口腔のチェック 📝
  • 乳歯遺残の有無(あれば同時抜歯を検討)
⑤ 血液検査 📝
  • 肝臓・腎臓など麻酔に関わる臓器の状態
  • 貧血・感染兆候がないか
  • 血液凝固のチェック

私(獣医)
私(獣医)

特にや停留精巣♂発情♀と、乳歯遺残🦷、血液検査🩸について、説明していきますね!


🐶 精巣の確認 ♂

精巣が左右とも正しく陰嚢内に下りているかを確認します。

停留精巣(陰睾)とは?

本来、精巣(睾丸)は生後すぐに陰嚢へ下りてくるはずですが、
お腹の中や鼠径部(足の付け根)に留まったままの状態をいいます。

なぜ問題なの?

  • 腫瘍化のリスクが非常に高い(正常の10倍以上)
  • 精巣ねじれ(精巣捻転)を起こすことがある
  • ホルモンの影響で前立腺や皮膚の問題が出ることもある
私(獣医)
私(獣医)

お腹に隠れた精巣が癌になっても見つかりにくく、さらに治療が遅れる可能性があります!

どうやって見つかる?

  • 身体検査で陰嚢に精巣が触れない
  • 超音波や触診でお腹の中・鼠径部に確認できることもある

去勢手術したほうがいい?

  • 停留精巣がある場合は特に、手術が推奨
  • 唯一の治療は 外科手術(摘出)
    見つかった位置によって手術の方法が異なります。
  • 鼠径部 → 皮膚の下なので浅い場所、比較的簡単
  • 腹腔内 → お腹の中なので深い場所、開腹が必要で難易度が高い
私(獣医)
私(獣医)

停留精巣では、通常の去勢手術より傷が増えたり手術時間が長くなったりと、
犬の負担は大きくなりますが、将来の病気を防ぐために特に手術が強く推奨されます。

⬇️ 去勢手術の当日の流れはこちら 🐶


🐶 発情の確認 ♀

乳腺や外陰部が腫れていたり、発情出血(ヒート、生理)が起きていないかを確認します。

🩸 発情出血(ヒート、生理)とは?

出血は「発情前期」に起こる、正常な生理現象です。

雌犬は年に1〜2回、発情周期があり、最初の段階で少量の出血が見られます。

期間はおよそ7〜10日程度(個体差が大きい)
多い子は2週間ほど続くこともあります。

生後何ヶ月から始まるの?

初回の発情は生後6〜10か月ごろが一般的
小型犬は早め、大型犬は遅めになる傾向があります。

避妊手術前に発情出血が始まってしまったら?

基本は、発情が完全に終わってから手術を行います。
発情中は子宮や卵巣に血流が増えており、出血リスクが上がるためです。

私(獣医)
私(獣医)

発情出血が終わってから、2〜3ヶ月あけて、計画を立て直しましょう!

⬇️ 避妊手術当日の流れはこちら 🐶


乳歯遺残の確認🦷

口を開けて、乳歯と永久歯が並んで生えていたら、乳歯遺残です。

🦷 犬の乳歯遺残とは?

本来、生後4〜7か月で抜けるはずの 乳歯が抜けずに残ってしまう状態 のことです。
特に 小型犬(チワワ・トイプードル・ポメラニアンなど)で多く見られます。


🐶 どうして問題なの?

乳歯と永久歯が 二重に生える(二枚歯) ことで、こんなトラブルが起きやすくなります。

  • 歯並びが悪くなる
  • 歯垢・歯石がたまりやすく 歯周病が早く進行
  • 噛み合わせがズレて口内を傷つけることも
  • 将来の歯科トラブルの原因になる
私(獣医)
私(獣医)

この時期に残っている乳歯は、自然には抜けにくい可能性が高いです。
避妊・去勢手術のタイミングで一緒に抜歯をしましょう!


腹壁ヘルニア(臍ヘルニア、鼠径ヘルニア)

腹壁ヘルニア(お腹の壁の弱い部分から臓器などがはみ出る状態)、
「お腹の壁(腹壁)」にできるヘルニアの総称で、
その中に 臍(さい)ヘルニア鼠径(そけい)ヘルニア などが含まれます。

1️⃣ 臍(さい)ヘルニア(いわゆる“でべそ”)

おへその部分が閉じきらず、脂肪や腸が飛び出している状態。
犬で最もよく見られる、生まれつきのヘルニアです。


2️⃣ 鼠径(そけい)ヘルニア

足の付け根(鼠径部)にできるヘルニア。
片側・両側どちらにも発生します。

私(獣医)
私(獣医)

多くは腹腔内の脂肪がはみ出している状態ですが、将来的に穴が開き、内蔵(腸や膀胱など)が出てきて挟まる(嵌頓)可能性もあります。

この避妊・去勢手術の同時に、一緒に腹壁の穴を閉じてしまいましょう!


血液検査🩸

麻酔を安全にかけることができるかどうかの検査です。
腎機能や肝機能、(麻酔の代謝や排泄は問題ないか)、栄養状態は大丈夫かなど。

🩸 去勢手術前の血液検査で見るポイント

  • 肝臓:麻酔薬を分解できるかチェック
  • 腎臓:麻酔中の体のバランスが保てるか確認
  • 貧血:炎症、出血や、生まれつきの増血機能の低下など
  • 炎症・感染:白血球数の増減で確認
  • 血糖:若い子で起こりやすい低血糖の確認
私(獣医)
私(獣医)

若い子なので問題ないことがほとんどですが、まれに生まれつきの腎機能低下や門脈シャントなどの血管異常を見つけるきっかけになることもあります。


症例:むさしちゃんの去勢手術の場合🐶

むさしくんは、

  • 停留精巣(左、鼠径皮下)
  • 上の左右、乳歯犬歯の遺残
  • 臍ヘルニア(腹壁に5mmくらい)

が見つかりました。

私(獣医)
私(獣医)

むさしくんの停留精巣は、鼠径部にもう一つ傷ができますが、皮膚の下にあるためお腹を開けずに取り出すことができます

おへそのヘルニアは小さいですが、将来的に腸などが飛び出さないよう、この機会に閉じておきましょう

また、乳歯が残っているため、抜歯も同時に行います

お姉さん
お姉さん

わかりました。
一緒にできる処置があることがわかって、よかったです!
むさし、頑張ろうね!

🐶手術当日の様子、タイムテーブルはこちら⬇️


手術後の準備 🎒

傷の保護

手術後は、傷の保護のためにエリザベスカラーを使うことが多いですが、術後服はそのままトイレもでき、普段の生活ができます。抜糸までの1〜2週間を快適に過ごすことができてお勧めです。

【🐶男の子用♂⬇️

【🐶女の子用♀】⬇️


手術後の食事について 🍽️

去勢・避妊手術後は体重が増えやすくなる傾向があります。

なぜ太りやすくなるの?

① 基礎代謝が下がる
ホルモンの変化でエネルギー消費量が約10〜30%ほど低下します。

② 食欲が増えやすくなる
性ホルモンが減ることで満腹感が得にくくなり、食べる量が増えがちです。

私(獣医)
私(獣医)

獣医師目線では、
「体重管理さえしっかりすれば、術後に太って困ることはほとんどない」
という印象です。

  • ご飯の量をきちんと計測する(とても大事!)
  • 術後用(避妊・去勢後用)のフードに切り替える
  • おやつの量を控える

といった、食事管理を意識していきましょう🍽️

🐶 手術後の子用のご飯も活用すると良いと思います。⬇️

まとめ 🐶

去勢・避妊手術は、犬と長く健康に暮らしていくうえで、とても大切なステップです。
手術前の検診では、手術が安全に行えるか、同時に必要な処置がないかなどを詳しく確認し、ひとつひとつ慎重に計画していきます。

大切な家族として迎えたばかりの愛犬が、これからも元気に、楽しく過ごしていけるように——。
その思いに応えるためにも、私たち獣医師は、元気な子を元気なままお返しできるよう、細心の注意を払って手術に臨んでいます。

今回ご紹介したのは、当院に来てくれたムサシくんのの去勢手術の一例です。
同じように手術を検討している飼い主さんの参考になれば幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

American Veterinary Medical Association (AVMA). Neutering and Spaying of Dogs and Cats. https://www.avma.org/resources-tools/pet-owners/petcare/neutering-and-spaying

小林俊介. 『犬と猫の避妊・去勢手術と術後管理』. どうぶつ医療出版社, 2019.

Fossum, T.W. Small Animal Surgery, 4th Edition. Elsevier, 2013.

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