犬のワクチン接種は、当院では年に1回をおすすめしています。
ただ、「もしワクチンでアレルギーが出たらどうしよう…」と不安に思われる飼い主さんも多いですよね。

実は、ワクチン後にみられるアレルギー反応には、大きく分けて次の2つがあります。
1.接種直後に起こるアナフィラキシー
2.接種後1〜2日以内に起こる遅発性のアレルギー反応
どちらも早めの対応がとても大切です。
今回は、実際にワクチン接種後にアレルギー反応が出てしまったワンちゃんの症例を2つご紹介しながら、注意点についてわかりやすくお話しします。
🐶 症例1:ポメラニアンのきなこちゃん
ポメラニアンのきなこちゃん、生後3ヶ月の男の子です。

今日は、ペットショップ以来の、2回目のワクチンです。

1回目は、ペットショップで5種混合ワクチン。
2回目は、8種混合ワクチンをご希望ですね。

犬の混合ワクチンの種類について(レプトスピラの有無)

犬の混合ワクチンは、**「レプトスピラを含まないタイプ」と「レプトスピラを含むタイプ」**の2つに大きく分けられます。
✅ レプトスピラを【含まない】混合ワクチン(5種など)
主に以下の感染症を予防します。
- 犬ジステンパー
- 犬パルボウイルス感染症
- 犬アデノウイルス感染症(1型・2型)
- 犬パラインフルエンザ
▶ 屋内飼育の犬や、外出が少ない犬に選ばれることが多いワクチンです。
▶ 副作用のリスクが比較的低いのも特徴です。

✅ レプトスピラを【含む】混合ワクチン(7種・8種・10種など)
上記5種に加えて、レプトスピラ感染症の予防が追加されます。
- レプトスピラ感染症(血清型が複数含まれる)
▶ 草むら・川・ドッグランに行く機会が多い犬におすすめされます。
▶ レプトスピラは人にもうつる人獣共通感染症です。

どちらを選ぶべき?

ワクチンの種類は、
- 飼育環境
- 生活スタイル(散歩コース、旅行、ドッグランなど)
- 年齢や体調

以上を考慮して、獣医師と相談して決めることが大切です。

ワクチン接種💉、約10分後・・・

きなこが、待合室で急に吐いて、ぐったりして立てなくなりました!!

すぐに状態を確認します!!
きなこちゃんはフラフラしており、立つのがとても辛そうな様子です。
歯ぐきの色は白っぽくなっており、
太ももの内側の血管で血圧を確認すると、ほとんど脈拍を感じることができない状態です。

ワクチン接種による、アナフィラキシーショックの可能性が高いです。
すぐに状態回復のための処置を開始します。
ワクチン接種後のアナフィラキシーショックとは?🚨

アナフィラキシーショックとは、ワクチン接種後、まれに起こる、
命に関わる重いアレルギー反応のことです。
多くは接種後数分〜30分以内に発症します。
✅ 主な症状

- 元気がなくなる、ぐったりする
- 嘔吐、下痢
- 顔や口のまわりの腫れ
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼーする
- ふらつく、倒れる
重症の場合はショック状態になり、早急な治療が必要になります。
✅ 原因

ワクチンに含まれる成分(ウイルス成分、たんぱく質、防腐剤など)に対して、
体が過剰な免疫反応を起こしてしまうことが原因です。
✅ 対応・治療

- すぐに**点滴・注射(抗ヒスタミン薬、ステロイド、アドレナリンなど)**で治療
- 酸素吸入や血圧管理を行うこともあります
- 回復には、早期対応が重要です。
きなこちゃんの緊急処置

アナフィラキシーショックは命に関わる緊急状態のため、発症したらすぐに集中的な治療を行います。
✅ 主な治療内容
- アドレナリンの注射
→ 血圧を上げ、呼吸や循環を回復させる最重要の治療です。 - 点滴治療
→ 血圧の維持、ショック状態の改善のために行います。 - ステロイド・抗ヒスタミン薬の投与
→ アレルギー反応を抑え、再発を防ぐ目的で使用します。 - 酸素吸入
→ 呼吸が苦しい場合に行います。

きなこ、頑張って!!
次第に・・・
きなこちゃんの歯茎の色はピンク色に戻っていき、血圧も感じられるようになりました。


血圧が正常に回復して、ショック状態から脱することができました。

よ、よかった・・・心配しました!

回復後も遅れて症状が再発することがあるため、慎重な観察が必要です。
しばらく入院・経過観察をして、安定していれば夕方にお迎えに来てくださいね。
🐶 症例1:ダックスフントのケントくん
ダックスフントのケントくん。4歳の男の子。


毎年のワクチン、よろしくお願いします!

今年で10種混合ワクチン、4年目ですね。
毎年同じワクチンを使ってますが、具合が悪くなったことはないでしょうか?

全然!いつもなんともないよ!
ワクチン接種💉、3時間後・・・
ケントくんのご家族から、電話がかかってきました。


ケントが、帰ってからなんだかブルブル震えて、抱っこしようとするとキャン!!と泣くんですが・・・どうしたらいいでしょうか?

ワクチンの副反応の可能性があります。
今から動物病院へ、もう一度いらっしゃることは可能でしょうか?診察して、ケントくんの状態を確認してみましょう。
ケントくんの診察 🩺

再び動物病院に来てくれた、ケントくん。
元気な様子で、心拍や血圧、血色は問題なし。
ワクチンを打ったのは右腰だから・・・その辺りを触ってみると、ギャン!!

ワクチンを接種した部分が腫れて、痛いようですね。
やはり副反応が出てしまったようです。

ワクチンが合わなくなってしまったのか?
ワクチン後の遅発性アレルギーとは?

ワクチン接種後、すぐではなく、数時間〜1日ほど経ってから出るアレルギー反応を
「遅発性アレルギー」と呼びます。
アナフィラキシーよりは軽症なことが多いですが、注意が必要です。
✅ 主な症状

- 顔や目のまわりの腫れ
- かゆみ、じんましん
- 元気・食欲の低下
- 嘔吐、下痢
- 接種部位の腫れや痛み
✅ 治療内容

- 抗ヒスタミン薬の投与
→ かゆみや腫れを抑えます - ステロイドの内服・注射
→ 症状が強い場合に使用します - 嘔吐や下痢がある場合は吐き気止め・点滴治療を行うこともあります。

多くの場合、1〜2日で症状は落ち着きますが、ぐったりした様子があればすぐ動物病院へ連絡くださいね!

ケントくんの治療💉

今日は、アレルギーの反応を抑えるステロイドの注射を打って、様子をみましょう。


毎年大丈夫だからって、安心してちゃだめってことですね!

おっしゃる通りです。
ワクチンによるアレルギー反応は、
それまで何回も問題なく接種できていた子でも、ある年に突然起こることがあります。
今回アレルギー反応が出たため、来年以降に再び接種した場合、症状がより強く出る可能性があります。
そのため、来年以降のワクチン接種については、慎重に検討していく必要があります。
ケントくんその後・・・

その後は、すぐに元気になったとのこと。
次の年からは、
別メーカーの8種混合ワクチンに変更したところ、痛みを含むアレルギー反応は認められなくなりました。
⚠️ワクチン接種後のアレルギー反応に注意するために大切なこと

✅ 接種前に気をつけること

- 当日は元気・食欲があり、体調が良い日に接種する
- 過去にワクチンアレルギーの経験があれば必ず伝える
- 持病や治療中の病気がある場合も事前に相談する
✅ 接種直後に気をつけること

- 接種後30分ほどは院内で様子を見る
- フラつき、ぐったり、顔の腫れ、嘔吐がないかを観察する

アナフィラキシーショックの発生はとても稀ですが、起きると命に関わる事態です。「起こる可能性はゼロではない」 ので、ワクチン後の観察は重要です!
✅ 帰宅後〜翌日に気をつけること

- 元気・食欲・呼吸・顔の腫れ・かゆみ・嘔吐・下痢をチェック
- 当日と翌日は激しい運動やシャンプーは控える
⬇️なかなかずっと様子をみているのは難しい時もありますよね。ペットカメラは、不在の時にもワクチン後の状態が確認できて、便利です🐶
✅ すぐに動物病院へ連絡すべき症状

- ぐったりして動かない
- 呼吸が苦しそう
- 顔や口のまわりが急に腫れた
- 嘔吐や下痢が何度も続く
来年以降のワクチンはどうする?💉

ワクチン接種後にアレルギー反応が出た場合、来年以降は「同じ方法での接種は避ける」ことが基本になります。
✅ 来年以降に検討される主な対応
- ワクチンの種類・メーカーを変更
- 接種回数を分割する
- 事前にアレルギー予防の注射(抗ヒスタミン薬など)を行う
- 接種間隔をあける・本当に必要なワクチンだけに絞る
- 抗体価検査で免疫が足りているか確認する

重いアレルギー(アナフィラキシー)が出た場合は、次回以降のワクチンは原則として「慎重に検討」または「中止」をお勧めします。
まとめ 🌼
犬のワクチンアレルギーには、接種直後に起こる「アナフィラキシーショック」と、数時間〜2日ほど経ってから現れる「遅発性のアレルギー症状」の、大きく2つのパターンがあります。
接種後30分程度は動物病院のそばで過ごし、アナフィラキシーショックに備えましょう。
また、接種後2日程度は、遅発性のアレルギーが現れないか、元気や食欲、顔の腫れ、嘔吐・下痢などがないかをよく様子を見てあげることが大切です。

ワクチンは、犬の健康を守るためにとても重要なものです。
副反応にしっかりと警戒しながら、安全に接種を行っていきましょう。
今回ご紹介した、ワクチンアレルギーが出てしまったきなこちゃんとケントくんの例が、少しでも参考になれば幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
日本獣医師会 編:
犬と猫のワクチン接種ガイドライン
Day MJ, et al.:
WSAVA Guidelines for the Vaccination of Dogs and Cats
Moore GE, et al.:
Adverse events diagnosed within three days of vaccine administration in dogs
Journal of the American Veterinary Medical Association


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