「最近、愛犬が耳をかゆがる」「耳がにおう」「外耳炎を何度も繰り返している」
そんなお悩みで動物病院を受診される犬は、実はとても多くいます。
犬の外耳炎の中でも、マラセチア性外耳炎はよくみられ、
炎症や皮脂分泌の増加がきっかけとなって、症状を繰り返しやすいのが特徴です。
今回は、繰り返すマラセチア性外耳炎で来院したアンディくんの一例をもとに、
外耳炎の原因や治療の考え方、
ご自宅でできるケアのポイントについて、分かりやすくご紹介します。
症例:柴犬のアンディくん🐶
柴犬のアンディくん、10歳の男の子です。


今日は左の耳を痛がっているみたいだから、診てみてください。
2ヶ月くらい前に、右耳が外耳炎だったから同じかな?

確かに、2ヶ月前に右側の外耳炎でいらしてますね。
今回は左耳ですね。確認してみましょう。
診察 🐶

アンディくんの耳の中を確認してみると、
赤く腫れており、茶色っぽい耳垢が大量に付着していました。
見た目からも、かなり痛みがありそうな状態です。

そうですね。やっぱり外耳炎を起こしていますね。
耳を消毒しつつ、耳垢を採取して検査しましょう。
検査 🐶
耳垢検査 🐾

耳垢検査は、耳の中の汚れ(耳垢)を少量取って顕微鏡で調べる検査です。
犬や猫の外耳炎の原因を調べるために行います。
耳垢検査でわかること

耳垢検査で大切なのは、
原因が「細菌性」なのか「マラセチア(真菌)性」なのか、
それとも「耳ダニ」が関係しているのかを見極めることです。

外耳炎の原因に合った治療を選ぶために、とても大切な検査です。

外耳炎の治療は、原因に合わせて行うことが大切です。
同じ外耳炎でも、原因が違えば治療法も変わります。
🦠 細菌性外耳炎

治療の基本
- 抗菌薬入りの点耳薬
- 耳の洗浄(必要に応じて)
症状が強い場合は、内服薬を併用することもあります。
🍞 マラセチア(真菌)性外耳炎

治療の基本
- 抗真菌薬及びステロイド入りの点耳薬
- 耳の中を清潔に保つケア
皮膚炎や体質が関係していることも多く、
再発予防が重要になります。
耳ダニが原因の場合

治療の基本
- 駆虫薬の投与(スポットタイプなど)
- 同居動物も一緒に治療
強いかゆみが出ることが多く、早めの治療が必要です。
🌼 アレルギーが関係している場合

治療の基本
- 点耳治療+かゆみを抑える治療
- 食事や生活環境の見直し
外耳炎を繰り返す場合に疑います。

繰り返す外耳炎では、アレルギーが関与していることも少なくありません。
その場合、耳の治療だけでは改善しにくく、
皮膚や体全体を含めた治療が必要になることがあります。
まとめ
外耳炎は、
原因を見極めたうえで治療することが再発予防のカギです。
「なかなか良くならない」「何度も繰り返す」場合は、
原因の再評価がとても大切になります。
診断 🐶
【 マラセチア性の外耳炎 】


耳垢検査からは、マラセチアという酵母菌が見つかりました。
今回も、2ヶ月前と同じ原因ですね。
マラセチア性外耳炎とは?

マラセチア性外耳炎は、**マラセチアという酵母菌(カビの一種)**が
耳の中で増えすぎることで起こる外耳炎です。
犬でとてもよく見られます。
どんな症状が出る?

- 茶色〜黒っぽいベタベタした耳垢
- 独特のニオイ
- 耳をよくかく、頭を振る
- 耳が赤く腫れる

マラセチアが増殖すると、特有の酸っぱいようなにおいが感じられることがあります。
なぜ起こるの?

マラセチアは、皮脂を栄養にして増える常在菌です。
そのため、
- 炎症が強い🔥
→ 皮脂分泌が増える
→ マラセチアが増える⤴️
という悪循環が起こります。

マラセチア性外耳炎では、
炎症🔥を抑えて皮脂分泌を減らすことが、
マラセチアの増殖を抑えることにつながります。
- アレルギー体質
- 湿気がこもりやすい耳の構造
- 皮膚のバリア機能低下
などが悪化の要因になり、繰り返すことも多いです。
⬇️ 犬のアレルギー性皮膚炎についての記事はこちらも参考にしてください🐶


マラセチア性外耳炎の治療薬は💊

実際のマラセチア性外耳炎の治療では、
ステロイド・抗菌薬・抗真菌薬が配合された点耳薬を使用することが多くなります。
- ステロイド💊:炎症やかゆみを抑える
- 抗真菌薬🍞:マラセチアを減らす
- 抗菌薬🦠:二次的な細菌感染を抑える

これら3種類の成分が、**1つの点耳薬(耳に直接ぽたっと入れるお薬)**に配合されています。
症状に合わせて、1日1〜2回、1〜2週間を目安に点耳を続けます。
ジェルタイプの点耳薬について

最近では、1回の点耳で効果が長期間続くジェル状の点耳薬もあります。
- 毎日の点耳が難しい場合
- 耳を触られるのを嫌がる犬
- 炎症が強いケース
などで選ばれることがあります。

ジェルタイプの点耳薬は便利な反面、
通常の点耳薬に比べてやや費用が高くなることがあります。
また、効果を維持するために1週間前後で追加投与が必要となる場合があり、
その際には再度動物病院に来院する必要がある点もデメリットといえるでしょう。
治療 🐶


それではアンディくん、
ご自宅では毎日点耳をやってもらいたいと思います。
2か月前と同じように、ご自宅でできそうでしょうか?

はい!毎日、アンディを押さえながら、格闘しつつ点耳を頑張っていました。
今回もまた、頑張ります!

(痛い耳をまいにち触られるのは、絶対イヤだわん🐶!)

おっと、かなりご苦労なさったようですね💦
それでは今回は、効果が長期間続くジェルタイプのお薬を使ってみましょう。
これを今ここで点耳すれば、ご自宅で行っていただくケアは基本的になくなります。
こちらを試してみますか?

そんな便利なお薬があったんですか!?
毎日格闘しなくて済みますね(笑)。
ぜひ、ジェルタイプのお薬でお願いします。

了解です。
それでは、1週間後に再度ご来院いただき、
耳の状態を確認しながら耳の洗浄と、ジェルタイプのお薬の追加を行いましょう。

自宅でできるケア 🏠
外耳炎の治療では、動物病院での治療に加えて、自宅でのケアも大切です。
- 点耳薬は指示通りに使用する
症状が良くなっても、自己判断で中止せず、獣医師の指示に従いましょう。 - 耳を触りすぎない
頻繁な耳掃除や強い刺激は、かえって炎症を悪化させることがあります。
⬇️ 耳掃除のしすぎも場合によっては悪化要因になってしまいます。参考にしてみてください🐶
⬇️ このような洗浄液を耳道に入れ、耳の付け根をやさしくマッサージします。
その後、タオルやコットンで軽く拭くか、
可能であれば屋外でブルブルしてもらいましょう。
なお、綿棒は耳道を傷つけたり、汚れを奥に押し込んでしまうことがあるため、使用はおすすめしません。
- かゆみや痛みの変化を観察する
頭を振る、耳を掻く、においが強くなるなどの変化があれば、早めに受診しましょう。

まとめ 🌼
犬の外耳炎では、マラセチア性外耳炎が多くみられ、
耳の中の炎症そのものが悪化の要因になります。
耳の中は皮脂の分泌が多いため、
マラセチアが増殖しやすく、外耳炎を繰り返すケースも少なくありません。

治療には、抗炎症作用・抗真菌薬・抗菌薬が配合された点耳薬を使用することが一般的です。
ただし、点耳を嫌がる犬では、ご自宅でのケアが負担になることもあります。
そのような場合には、効果が長く続くジェルタイプの点耳薬を使用することで、
治療が楽になることもあります。
治療方法については、ぜひ動物病院で相談してみてくださいね。

今回ご紹介した、繰り返すマラセチア性外耳炎のアンディくんの一例が、
同じようなお悩みをお持ちのみなさまの参考になれば幸いです。
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
日本獣医皮膚科学会
「犬と猫の外耳炎」
Scott DW, Miller WH, Griffin CE.
Muller & Kirk’s Small Animal Dermatology, 7th ed.
Saunders Elsevier.
Moriello KA.
“Malassezia dermatitis.”
In: Veterinary Dermatology, Wiley-Blackwell.


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