猫の急な嘔吐…診察で見えてきた原因と、むぎちゃんの実際のケース

嘔吐

猫の急な嘔吐は、食べ過ぎや毛玉だけでなく、胃腸炎・膵炎・腎臓病・異物・感染症など、実にさまざまな原因で起こります。また、嘔吐を繰り返すことで食道が炎症を起こし、さらに吐き気が悪化する“悪循環”に入ってしまうことも少なくありません。

今回は、急な嘔吐で来院した猫のむぎちゃんの症例を通して、
猫の急性嘔吐で考えるべき原因、食道炎との関係、そして早めに吐き気を抑える重要性について分かりやすくまとめました。

同じように「急に吐き始めた」「何度も続く嘔吐が心配」という飼い主さんの参考になれば幸いです。


症例:猫のむぎちゃん

スコティッシュの女の子、4歳、むぎちゃん。

お姉さん
お姉さん

昨日の夜、最初に大きな毛玉を吐き出しました。
その後、夜ご飯を食べたけど、1時間くらいして吐きました。

今朝、朝ごはんをあげると食べたけど、また吐いてしまって・・・
なんだか元気もない様に見えます。


🐱 診察 🩺

私(獣医)
私(獣医)

脱水や、体重減少、発熱はない様です。

では、お腹を触っていきますね!

触診(腹部触診)は、嘔吐の原因を探るうえでとても重要な検査です。
お腹を触っただけでも、
お腹の中の“痛み・硬さ・異物・しこり・蓄便”などを直接確認できます。

私(獣医)
私(獣医)

特に、痛みや異物は確認されません。便秘もなさそうですね。


🐱 急な嘔吐の鑑別

私(獣医)
私(獣医)

猫が吐く原因は、こんなにたくさん!
重大な問題が隠れてないか、注意が必要です⚠️

  1. 毛玉
    嘔吐のきっかけになりやすい
  2. 飲み込みトラブル(異物)
    紐状のものは要注意⚠️、おもちゃ、髪ゴムなど
  3. 便秘
    いきんだ時に嘔吐することがある
  4. 感染性胃腸炎(ウイルス・細菌など)🦠
  5. 食事の変更・いつもと違う食べ物 🍽️
    食事アレルギーなど
  6. 中毒
    ユリ(⚠️危険)、タマネギ、殺虫剤、人の薬など
  7. 膵炎
    猫では慢性膵炎がよくみられます
  8. 腎臓病
    中毒、尿管結石などで急に進行することも
  9. 胆管肝炎
    黄疸になることがあります
  10. 甲状腺機能亢進症
    高齢の子で鑑別が大切
  11. 胃や腸の腫瘍
    リンパ腫、腸腺癌など

🐱毛玉や異物が原因で吐いていた猫の症例についてはこちら⬇️


🐱 検査

私(獣医)
私(獣医)

嘔吐が始まったきっかけは毛玉だった、とのことですが、
他に問題がないか調べていきますね!

超音波検査

超音波検査は、
「胃腸」「膵臓」「肝臓」「腎臓」「子宮」
といった“お腹のほとんど”を一度にチェックできるので、
嘔吐の原因特定に非常に役立つ検査です。

痛くない検査なので、嘔吐で来院したほとんどの子で実施します。

血液検査

血液検査では、
腎臓・肝臓・膵臓・甲状腺など、内臓の機能の問題がわかります。

また、炎症の程度、繰り返しの嘔吐で電解質異常が起きていないか?がわかるので、

現在の全身状態を評価するのにとても役立ちます。


🐱 診断

急性の胃腸炎の疑い 📝

私(獣医)
私(獣医)

腹部超音波検査、血液検査でも大きな問題はありませんでした。

毛玉を吐いたことがきっかけで始まった一時的な嘔吐の可能性が高いです。
今の吐き気をしっかり止めてあげれば、落ち着くのではないかと思います。

お姉さん
お姉さん

重大な問題がなくてよかったです・・・


🐱 治療

今回は、吐き気止めの注射と、脱水の予防のために皮下輸液を実施しました。

私(獣医)
私(獣医)

ご飯は、半日くらいは控えてください。嘔吐がなければいつもの1/4くらいの量から始めて、少しずつ増やして様子を見てくださいね。

お姉さん
お姉さん

わかりました!

私(獣医)
私(獣医)

毛玉やビニールなど、柔らかいものが不完全に腸に詰まっている場合など、
超音波検査でもわかりにくく見落としてしまうこともあります・・・
明日もまだ吐いてしまうようなら、やっぱりまた明日も来院してくださいね。


🐱 嘔吐による嘔吐、の悪循環

私(獣医)
私(獣医)

猫は吐きやすい動物ですが、嘔吐自体が嘔吐の原因になっている、ということもあるんです。

① 胃酸で食道が炎症を起こす(食道炎)

嘔吐すると胃酸が食道を逆流して、
食道の粘膜がただれて痛み・炎症(食道炎) が起きる。

② 食道炎があると、さらに気持ち悪くなる

食道炎になると

  • 気持ち悪さ(悪心)
  • よだれ
  • 咳ばらい
  • 嚥下時の痛み
    などが出やすく、結果として 嘔吐を誘発 する。
③ 胃の動きが悪くなる(胃運動低下)

ストレスから胃の動きが弱くなり、さらに 吐きやすい状態 に。

④ 食道炎 → 逆流性食道炎 → 再嘔吐 のループに!

胃の動きが悪くなることで胃酸が増えやすく、
「逆流→炎症→さらに嘔吐」
というループに入りやすい。

私(獣医)
私(獣医)

嘔吐が繰り返される場合は、一旦しっかり嘔吐を止めてあげることも大切です。

吐いていると飲み薬だと難しいので、動物病院に来院していただき、
吐気止めの注射を使うと効果的です。

🐱 毛玉による嘔吐の予防はこちら⬇️
甘い匂いのする潤滑剤で、毛玉をスルッと便から排出させます。
猫の嗜好性も高く、多くの猫ちゃんがそのまま与えても舐めてくれます。

🐱 毛玉を吐きにくくするご飯はこちら ⬇️
飲み込んだ被毛を食物繊維が巻き込んで便への排出を促します。
毛玉を吐きやすい子は試してみても良いかもしれません。


🐱 まとめ

猫ちゃんが嘔吐を繰り返しているときは、食道の炎症などによって吐き気がさらに強まり、悪循環で嘔吐が続いてしまうことがあります。そんなときは、一度しっかりと吐き気を抑える治療をしてあげることがとても大切です。

ただし、猫の嘔吐には本当に多くの原因があり、症状の出方もさまざまです。
「猫は吐きやすい」と言われることもありますが、決して“吐いていて大丈夫な動物”という意味ではありません。

もし「何度も続けて吐く」「普段と明らかに違う吐き方をしている」と感じたら、早めに動物病院での診察を受けてくださいね。飼い主さんの気づきが、早期治療につながります。

急に繰り返しの嘔吐が始まったむぎちゃんの一例、参考にしていただけましたら幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

BSAVA Manual of Canine and Feline Gastroenterology, 3rd Edition
Textbook of Veterinary Internal Medicine (Ettinger & Feldman)
Feline Internal Medicine Secrets

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