元気なのに肝酵素が高い?ALT・AST・ALP・GGTの見方を解説

消化器

元気・食欲があるのに、健診で「肝酵素が高い」と言われて不安になったことはありませんか。
ALT・AST・ALP・GGTは、肝臓の病気だけを示す数値ではありません。
この記事では、犬猫共通での肝酵素の見方と、慌てなくていいケース・注意が必要なケースについて解説します。

この記事でわかること 📝
  • 肝酵素値(ALT・AST・ALP・GGT)が上がる意味と基本的な考え方
  • 肝酵素値の上昇=肝不全ではない理由
  • 元気・食欲があっても肝臓の異常が隠れていることがある
  • 肝酵素値が上がる原因は、軽いものから重い病気までさまざま
  • 原因に応じた検査・対応が大切で、自己判断は注意が必要

肝酵素ってなに?

肝酵素値は、肝臓やその周辺で起きている変化を知るための血液検査の項目です。
数値が高いからといって、必ずしも重い肝臓病があるとは限りません。

  • ALT:肝細胞がダメージを受けたときに上がりやすい
  • AST:肝臓のほか、筋肉などの影響も受ける
  • ALP:胆道系の異常や成長期、薬、骨の影響で上昇することがある
  • GGT:胆道のトラブルや薬の影響を受けやすい

これらの数値は、単独ではなく他の検査結果や症状とあわせて判断することが大切です。

私(獣医)
私(獣医)

肝酵素値は、肝臓が“傷ついているサイン”として上がることが多い数値です。
一方で、肝不全のように「肝臓が十分に働けていない状態」を直接表す数値ではありません。


肝酵素値が上がる原因 🐾

肝酵素値が上がる原因は本当にさまざまです。
肝臓にはある程度の再生能力があり、一時的な軽い原因で上昇することもあります。
一方で、重篤な障害が隠れている場合には、命に関わることもあります。


比較的軽い・一時的なもの

  • 薬の影響(ステロイドなど)
  • 誤食(人の薬・サプリなど)
  • 古くなったフードや不適切な食事
  • タバコ、一部のアロマ製品など、有害物質への暴露
  • 年齢・個体差

※ 一時的な上昇で、原因が取り除かれれば、数値が元に戻ることもあります。

私(獣医)
私(獣医)

肝臓には、体に入った有害な物質を処理する「解毒」という大切な役割があります。
そのため、タバコの煙や一部のアロマ製品、古くなったフードなどを摂取・吸入することといった、日常の何気ない出来事が、肝酵素値の上昇につながることがあります。


重い病気が隠れていることもある(元気でも上がる)

  • 腫瘍
  • クッシング症候群
  • 門脈シャント
  • 胆嚢粘液嚢腫
  • 肝硬変
  • 慢性肝炎
  • 胆管炎・胆管閉塞
  • 膵炎に伴う二次的な影響など

※ 症状が乏しく、健診で初めて見つかることも少なくありません。

私(獣医)
私(獣医)

肝臓は「沈黙の臓器」とも言われています。
そのため、肝臓の異変がすでに進んでいても、見た目には元気そうに見えるケースがあり、注意が必要です。

⬇️ 肝酵素値の上昇から、肝臓に腫瘍が見つかった症例はこちらも参考にしてください。🐶


必要に応じて行う追加検査 🐾

  • 追加の血液検査(肝臓の機能検査、総胆汁酸など)
     肝臓が実際に仕事をできているか、関連した変化がないかについて評価します。
  • 肝臓の超音波検査
     肝臓や胆嚢の形・内部構造の異常を確認します。
  • レントゲン検査
     肝臓の大きさや周囲の臓器との関係を確認します。
  • 細胞診・肝臓生検
     腫瘍や炎症など、原因を詳しく調べるために行います。
私(獣医)
私(獣医)

すべての検査を一度に行うわけではなく、症状や数値の変化に応じて、必要な検査を選択します。

特に超音波検査などの画像診断は、得られる情報量が多く、体への負担も少ないため重要です。

さらに詳しい評価や確定診断が必要な場合には、肝臓の細胞診や生検へ進むこともあります。


肝酵素値の、Q&A 🐾

Q. 肝臓の数値が上がる=肝不全ですか?

A. いいえ、肝酵素値の上昇は「肝臓の細胞がダメージを受けているサイン」であり、肝不全そのものを示す数値ではありません。

肝酵素値が高くても、
・解毒
・体に必要な栄養素の合成
といった肝臓の働きが、まだ保たれているケースは多くあります

肝機能が本当に低下しているか(肝不全かどうか)は、
血液検査の他の項目や症状、超音波検査などを総合的に判断します。

私(獣医)
私(獣医)

怪我はしていても仕事はできる!という状態があるように、
肝酵素値の上昇=肝機能不全とは限りません。


Q. 肝臓の数値が高いと言われたので、肝臓の療法食を食べさせた方がいいですか?

A. 必ずしも必要とは限りません。
肝臓の療法食は、「肝臓の機能低下」がある子向けに設計されているものがあります。
そのため、肝臓の機能低下を伴わない場合には、必ずしも適していません。

⚠️多くの肝臓用療法食は低タンパクに調整されているため、状態によっては栄養の偏りが生じる可能性があり、推奨されないケースもあります。
必ず、主治医と相談の上、使用を検討してください。

私(獣医)
私(獣医)

肝臓の療法食は、「肝臓に良いごはん」という意味ではなく、特定の状態に合わせて設計された食事です。
そのため、自己判断での切り替えには注意が必要です。


Q. 肝臓にいいと言われているサプリを飲んでいれば治りますか?

A. サプリメントは補助的な役割にとどまります。
原因が解決されなければ数値は改善しないことも多く、サプリだけで治るわけではありません。

私(獣医)
私(獣医)

肝酵素値の上昇には、さまざまな原因があります。
サプリメントが役立つケースもありますが、原因によっては改善につながらないこともあります。
そのため、自己判断での使用は、原因への対応が遅れてしまうことがある点に注意しましょう。


Q. 元気で食欲があれば、様子見でも大丈夫ですか?

A. 元気・食欲があっても、数値の推移によっては追加検査や再検査が必要なことがあります。
「元気だから大丈夫」と自己判断せず、経過を確認することが大切です。

私(獣医)
私(獣医)

肝臓に異常があっても、元気で食欲があり、見た目では気づきにくいことが多い病気です。だからこそ、注意が必要です⚠️


Q. 肝臓の数値が正常に戻れば、もう安心ですか?

A. 一度改善しても、原因によっては再び上昇することがあります。
定期的なチェックが安心につながります。


まとめ 🌼

肝酵素値(ALT・AST・ALP・GGT)の上昇は、肝臓の細胞がダメージを受けているサインであり、必ずしも肝不全を意味するものではありません。
元気や食欲があっても数値が上がることはあり、肝臓の異変が静かに進んでいるケースもあります。

肝酵素値が上がる原因は、生活環境や薬剤などの一時的なものから、内分泌疾患、胆道系疾患、腫瘍などの重い病気までさまざまです。
そのため、「とりあえず療法食やサプリメント」ではなく、まずは原因を見極めることが大切です。

検査はすべてを一度に行う必要はなく、状態に応じて段階的に進めていきます。
特に超音波検査は、体への負担が少なく、多くの情報が得られる重要な検査です。

肝臓は「沈黙の臓器」とも言われます。
気になる数値の変化があった場合は、元気だからと様子見せず、早めにかかりつけの動物病院で相談することが、愛犬・愛猫の健康を守る第一歩になります。


※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

日本獣医内科学アカデミー(JCVIM)編
 「獣医内科学」 文永堂出版

日本獣医師会
 「小動物臨床における血液検査の考え方」

石田卓夫 監修
 「小動物臨床検査ガイド」 インターズー

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執筆者:獣医師 pawmyan(小動物臨床/犬・猫の診療経験15年)

犬・猫の小動物臨床に15年以上携わってきた獣医師です。
診察室でよくある質問や、飼い主さんが不安に感じやすいポイントを中心に、わかりやすく解説しています。

記事内容は一般的な獣医学的情報をもとにしています。診断や治療については、必ず動物病院でご相談ください。

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