猫ちゃんの「目やに」や「目が痛そうな様子」は、飼い主さんが気づきやすいサインのひとつです。
一見すると軽い結膜炎のように見えても、実際には角膜の傷(角膜潰瘍)やまぶた・鼻涙管の問題、さらには〝猫風邪(ウイルス感染)〟が関係していることもあります。
今回は、目やにで目が痛そうにしていた猫の小太郎くんの症例をもとに、考えられる原因や診察のポイント、治療についてわかりやすくまとめました。
猫ちゃんの目のトラブルでお悩みの飼い主さんの参考になれば幸いです。
症例
小太郎くんは、5歳の雑種の猫。


昨日から、左眼をあけることができません。目やにもすごいです。
元気も食欲もあるんだけど・・・
診察 🩺

猫の目の症状、結膜炎などの他にヘルペスウイルスによる猫風邪でもみられることがあります。
全身に異常がないか確認していきますね!
🐱 猫の目に目やにが出るときに考える4つの代表的な原因

① 結膜炎
- まぶたの裏の炎症
- 充血、涙が多い、黄色やネバつく目やに
- アレルギー、細菌、ウイルスなど原因はさまざま
② ウイルス性の風邪(猫風邪:ヘルペス/カリシなど)

- 片目だけでなく、両目であることが多い
- 発熱、くしゃみ、鼻水と一緒に目やにが出る
- 水っぽい涙 → 黄色い目やにに変化することも
- 子猫や多頭飼いで特に多い
③ 角膜潰瘍(目の表面が傷つく)
- 目をしょぼしょぼさせる、痛がる
- 角膜に白っぽいにごりが見えることも
- 喧嘩・誤って手でひっかく・異物などで起きる
- 早期治療が必要な緊急性のある病気
④ その他に考えられること
- 異物(ホコリ・砂)
- 瞼・瞬膜など、目の構造の異常
(ペルシャ系(ペルシャ・エキゾ・ヒマラヤン)などの眼瞼内反など) - 緑内障やぶどう膜炎、腫瘍など、より深刻な眼の病気
- 鼻涙管の詰まり(涙が鼻へ流れず目に溜まる)


小太郎ちゃんは、
猫風邪の症状(発熱、口内炎、くしゃみなど)は認められず、
片目、左眼だけの問題のようですね。
眼の状態を確認していきましょう!
🐱 猫の目やにが出るときに行う主な検査
小太郎くん、目が痛くてあけることができません。

目の痛みを和らげるために点眼麻酔をつけてから、検査しますね!

点眼麻酔を垂らしてしばらくすると・・・
左眼をぱっちり👀あけることができるようになりました。
● スリットランプ検査
- 眼科用の顕微鏡で、暗い部屋で、光を当てて眼球を確認。
まぶた・結膜・角膜・前房(黒目の奥)などを立体的に詳しく観察する検査。 - 結膜炎の重症度、角膜の傷や濁り、ぶどう膜炎の所見などを確認できる。
● フルオルセイン染色検査
- 角膜に傷があると、蛍光色に染まって光る染色液を使う検査。
- 角膜潰瘍(角膜の傷)の有無や深さを評価するのに必須。
- 目やにが多い場合、傷がないかのチェックとしてまず行われることが多い。

角膜にフルオルセイン染色液を垂らすと、傷が染色され、
特殊な光を当てると緑色に光り傷があることがわかります。
小太郎ちゃんの左の角膜に、擦ったような傷が確認されました!
幸い、それほど深くはないようです。

目に傷がついて、痛かったんですね。
その他、このような検査を行うこともあります⬇️
● 細胞診
- 結膜の細胞をこすって取り、炎症のタイプや細菌・真菌の有無を確認する。
- 重度の結膜炎や治りにくい感染症で行われることがある。

● 眼圧測定
- 眼の硬さ(眼圧)を調べる検査。
- 緑内障やぶどう膜炎など痛みが強い病気の鑑別に役立つ。
🐱 猫の角膜潰瘍について

◆ 猫の角膜潰瘍とは?
角膜(黒目の表面)が傷つき、表面の細胞が削れてしまう状態。
放置すると深くえぐれて眼球が破れる危険もあるため、早期治療がとても重要な病気です。

小太郎の目の傷、治るでしょうか?

目の構造と涙の分泌が正常で、感染を抑えることができれば、
数日で角膜の傷が治ってしまうことが多いです。
でも、感染がひどくなったり、痛くて自分の爪でさらに傷つけたりすると、
重症化する可能性があるので要注意です!
◆ 主な原因
- 外傷(爪・草・ケンカ・物にぶつかる など)
- ドライアイ(涙が不足して傷つきやすくなる)
- ウイルス感染(特にヘルペスウイルス)
- まぶたの異常(逆さまつげ・眼瞼内反)
- 異物(砂・ホコリなどの刺激)
◆ 主な症状
- 目を痛そうにする(まばたきが多い、目を細める)
- 涙が増える / 目やにが増える
- 白く濁って見えることがある
- 目を触りたがる、顔をこする


角膜潰瘍は、目が痛い状態です。
目を細めたり、前手で擦ったり、とにかく目を気にします。
🐱 治療
- 点眼治療(抗菌薬・保護剤・痛み止め など)
- エリザベスカラーでこすらないように保護
- 重度(深い潰瘍・融解性潰瘍)では
- 角膜の手術
- 結膜フラップ
が必要になることもある


角膜潰瘍の治療は、猫が目をいじらないことがとても重要です。
よくなってきても、爪で傷つけてしまったら一大事です。
ちょっと不便かもしれないけど、1週間エリザベスカラーをしっかりつけて、点眼頑張ってくださいね!
エリザベスカラーは、病院で売っているか貸してくれるかするかもしれません。
可愛い布製などのソフトタイプもありますが、しっかり守りたい場合は硬い材質の方がおすすめです。
猫は眼のトラブル、皮膚のトラブルで急遽使いたい時があるので、常備していると便利です。
🐱動物病院で使用しているエリザベスカラーはこちら⬇️
🐱 その後・・・
1週間後の再診です。

小太郎、目ヤニはなくなって、目もぱっちり開くようになりました!

確認のフルオルセイン染色でも、傷は確認されなくなりました。
もうエリザベスカラーはとっても大丈夫。
点眼も終了にしましょう!

小太郎ちゃん、痛い目が治ってよかったね!お姉さんもお疲れ様でした🌼
🐱 まとめ
猫の目やにや目が開きにくいときは、目そのもののトラブルだけでなく、猫風邪(ウイルス感染)など全身的な問題が関与していることもあります。
また、まぶたの異常・鼻涙管の閉塞など眼の周辺の構造の異常や、
緑内障、腫瘍など、重大な病気が隠れていることもあります。
角膜潰瘍は猫でよくみられる疾患で、適切に治療すれば早く回復しますが、進行すると視力を失う危険もあるため注意が必要です。
猫ちゃんが目を痛そうにしている、目が開きにくい、目やにや涙が増えているなどの症状がある場合は、早めに動物病院にご相談くださいね。



※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
Feline Ophthalmology: An Atlas & Text(Gelatt & Brooks)Slatter’s Fundamentals of Veterinary Ophthalmology(Maggs, Miller & Ofri)Veterinary Ophthalmology(Gelatt, Gilger & Kern)

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