「慢性腎臓病です」と言われて、不安になったことはありませんか。
腎臓病は犬にも猫にも多い病気ですが、原因や進行の仕方、治療・管理の考え方は、実は犬と猫で大きく異なります。
インターネットで調べるほど情報が混ざってしまい、「うちの子の場合はどう考えればいいの?」と迷ってしまう飼い主さんも少なくありません。
この記事では、慢性腎臓病(CKD)について、犬と猫で違うポイントを中心に、飼い主さんにもわかりやすく解説します。
愛犬・愛猫に合った向き合い方を考えるための参考にしてください。
慢性腎臓病とは❓

慢性腎不全(慢性腎臓病)とは、
腎臓の機能が時間をかけて少しずつ低下していく病気です。
一度傷んだ腎臓は元に戻ることが難しく、初期は症状が出にくいため、気づいたときには進行していることも少なくありません。
そのため、早期発見と、進行をできるだけゆっくりにする管理が大切になります。
慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病は加齢によるものが多いですが、
背景に明確な原因疾患が隠れていることもあります。
主な原因

- 加齢による腎機能の低下
- 先天的な腎疾患(嚢胞腎など)
- 尿路の異常や感染
- 尿管結石
- 腎盂腎炎
- 腎臓腫瘍
- 高血圧による腎障害 など
早期発見のサイン

- 水を飲む量が増えた、尿の量が増えた
- おしっこの色が薄くなった
- 食欲にムラが出てきた
- 体重が少しずつ減ってきた
- 元気はあるけど、なんとなく年を取った感じがする

これらは「年のせい」と見過ごされやすい変化ですが、
腎臓病の初期サインであることもあります。
気になる変化が続く場合は、早めに血液検査や尿検査を受けることが大切です。
慢性腎不全の犬と猫の違い

一言で慢性腎不全と言っても、犬と猫では病気の傾向や向き合い方が異なります。
| 項目 | 犬 🐶 | 猫 🐱 |
|---|---|---|
| 多い原因 | 基礎疾患(心臓・内分泌など) | 加齢・特発性 |
| 進行 | 原因次第で変動 | 徐々に進行しやすい |
| 初期症状 | 気づきにくい | 体重減少・多飲多尿 |
| 管理の考え方 | 原因治療+腎管理 | 長期管理が中心 |

犬と猫で違いはありますが、実際にはその子、その子で状況は異なります。
あくまで一般的な傾向として、参考にしていただければと思います。
⬇️ 犬と猫の、実際の腎機能低下の症例については、こちらも参考にしてください。🐶 🐱


① 原因の多さと考え方
- 犬 🐶
腎臓そのものの老化だけでなく、- 慢性の炎症
- 免疫疾患
- 心臓病・内分泌疾患
- 歯周病や感染症
など、他の病気が引き金になっていることが多い

- 猫 🐱
明確な原因が特定できないことが多く、
**「加齢に伴う慢性腎臓病」**として進行するケースが中心


犬と猫では考え方に少し違いがあります。
犬では原因となる病気が隠れていないかを調べながら治療方針を立て、
猫では長期的な管理を前提に向き合っていくことが多くなります。
② 進行スピードと見つかり方
- 犬 🐶
比較的進行が早く、
元気消失・食欲不振などで症状が出てから見つかることが多い

- 猫 🐱
とてもゆっくり進行することが多く、
健診で偶然見つかるケースが多い


猫の慢性腎不全は、腎機能の低下がかなり進行してから見つかることが多い病気です。
そのため、元気そうに見えていても、**「早期発見・早期管理」**がとても重要になります。
③ 食事療法への反応

- 犬 🐶
比較的療法食を受け入れてくれることが多い
→ 食事管理が治療の柱になりやすい

- 猫 🐱
食事の好みが強く、切り替えが難しいことも


犬も猫も、「食べない」こと自体が大きなリスクになります。
そのため、腎臓の療法食への無理な切り替えはNGです。
腎臓療法食はさまざまなメーカーから販売されているため、味や形状なども含めて、獣医師と相談しながら続けやすいものを探していきましょう。
⑤ 治療の目標 🚩

犬も猫も、原因疾患が見つかることはありますが、
慢性腎臓病として診断された時点では「進行を抑える管理」が治療の中心になる
という点は共通しています。
検査について 🏥

慢性腎不全の診断や経過観察では、ひとつの検査だけで判断するのではなく、複数の検査を組み合わせて評価します。
血液検査

BUNやクレアチニン、SDMAなどを測定し、腎臓のろ過機能がどの程度低下しているかを確認します。
尿検査

尿の濃さ(尿比重)やたんぱくの有無を調べ、腎臓がきちんと尿を作れているかを評価します。
血液検査よりも早い段階で異常が見つかることもあります。

腎機能が低下すると、尿を濃くする力が弱くなり、
薄いおしっこがたくさん出るようになることが特徴です。
血圧測定

高血圧は、腎臓・目・脳・心臓にダメージを与える全身性の問題です。
腎臓病では高血圧を伴うことが多く、合併症予防のためにも重要です。

血圧が高い状態が続くと、腎臓に負担がかかり、腎機能低下がさらに進行してしまいます。
また、高血圧は食欲の低下や視力や心臓への影響を引き起こすこともあります。
超音波検査

腎臓の大きさや形、構造の変化を確認し、結石や腫瘍、尿管の異常など、原因となる病気がないかを調べます。
腎臓の超音波検査では、次のような異常が見つかることがあります。

- 腎結石・尿管結石
→ 尿の流れが悪くなり、腎機能低下の原因になることがあります。 - 腎臓腫瘍
→ 腎臓の形がいびつになったり、しこりとして確認されます。 - 嚢胞腎
→ 腎臓の中に液体のたまった袋状構造が見つかります。 - 腎盂腎炎
→ 腎盂の拡張や腎臓内部の構造変化がみられます。 - 腎萎縮・腎腫大
→ 慢性腎臓病や炎症などを疑う所見です。

超音波検査は、原因の特定や病状の把握に役立つ検査です。
病気の進み方を予測したり、治療計画を立てるうえで、非常に重要な役割を果たします。
治療について

慢性腎不全の治療は、腎臓の機能を元に戻すことではなく、進行をできるだけゆっくりにすることが目的です。
- 食事管理
腎臓への負担を減らすため、療法食を中心に管理します。 - お薬による治療
脱水や高血圧、たんぱく尿、吐き気などの症状に応じて薬を使用します。 - 水分管理
十分な水分摂取を保ち、脱水を防ぎます。 - 定期的な検査
血液検査や尿検査で状態を確認し、治療内容を調整します。

慢性腎不全は完治が難しい病気ですが、適切な治療と管理によってコントロールすることは可能です。

治療は、IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のステージ分類を参考に、
病気の進行度を評価したうえで検討します。
さらに、その子の性格やご家庭でのケアのしやすさなども踏まえ、
無理のない治療方針を一緒に相談しながら進めていきます。
IRISステージ分類とは?🐾

慢性腎臓病の治療方針は、
IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のステージ分類を参考に決めていきます。
これは、血液検査や尿検査、血圧などをもとに、
腎臓病の進行度を段階的に評価する考え方です。
ステージごとの考え方(要約)

- 初期(ステージ1〜2)
まだ症状が少ない時期
→ 早期発見・進行を遅らせる管理が重要 - 中期(ステージ3)
食欲低下や体調変化が出やすい
→ 症状を和らげ、生活の質を保つ治療を行う - 後期(ステージ4)
腎機能が大きく低下している状態
→ その子に合わせた無理のない治療・ケアを重視
👉 「どのステージか」よりも、
👉 「今どんな管理が必要か」を考えることが大切です。

それぞれのステージに応じて、食事療法や血圧管理などの治療方針を検討していきます。
詳しい数値については動物病院で説明を受け、担当の獣医師と相談しながら、その子に合った管理を進めていきましょう。
まとめ 🌼
慢性腎不全は、犬や猫に多くみられる病気で、一度低下した腎機能を元に戻すことは難しいのが現実です。
しかし、早期に発見し、その子の状態に合った治療や管理を続けることで、病気の進行をゆるやかにし、生活の質を保つことは可能です。
治療では、原因や病気の進行度だけでなく、その子の性格やご家庭の環境も大切な要素になります。
不安なことや気になる変化があれば、ひとりで悩まず、かかりつけの獣医師に相談しながら向き合っていきましょう。
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
- 日本獣医腎泌尿器学会 編
『犬と猫の腎泌尿器疾患診療ガイド』 インターズー - International Renal Interest Society(IRIS)
IRIS Staging of CKD in Dogs and Cats - BSAVA
BSAVA Manual of Canine and Feline Nephrology and Urology



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