犬の下痢は日常的によく見られる症状ですが、原因はさまざまで、すぐに受診が必要なケースもあります。本記事では、犬の下痢について「様子を見てよい場合」と「動物病院を受診すべきサイン」を獣医師の立場から解説します。
犬の下痢で考えられる主な原因 🐾

- ストレス・緊張性
- 食事・おやつの影響🍽️
- 感染症・寄生虫🦠
- 内臓疾患(膵臓・肝臓、腎臓、子宮蓄膿症など)

特に原因が思い当たらない下痢も多いですが、
中毒や感染症など原因がはっきりしているものもあれば、
その背景に病気が隠れているケースもあり、さまざまです。
⬇️ ストレスが下痢の原因と考えられるケースはこちらも参考にしてください。🐶
【重要】自宅で様子を見てよい下痢 🐾

- 元気・食欲がある
- 1日以内に改善傾向
- 血が混じらない

元気や食欲があり、自分で水分が取れている状態であれば、少し様子を見るという選択肢もあります。
ただし、動物病院で治療を受けることで、結果的に回復が早まるケースも多いため、迷う場合は早めにご相談ください。
【受診推奨】すぐ病院に行くべき下痢 🐾

- 繰り返しの嘔吐を伴う
- ぐったりしている
- 子犬・高齢犬

急性膵炎や胆管炎など、重い病気が背景に隠れていることもあります。
ぐったりしている、繰り返し嘔吐がみられる場合には、早めに動物病院を受診することが大切です。
⬇️ 下痢から始まり、入院治療が必要になった症例は、こちらも参考にしてください 🐶


動物病院で行う検査の例 🏥
便検査

便検査は、下痢の原因を調べるために重要な検査です。

便検査では、顕微鏡で寄生虫や原虫がいないかを確認することが重要です。

一方で、細菌性やウイルス性の胃腸炎を便検査だけで断定することは難しい場合があります。

受診時にうんち💩を持参していただくと診断の助けになります。
(ティスプーン1杯程度でOKです。)
便の状態が分かる写真を撮ってきていただくのもおすすめです。📱
⬇️ 便検査で、原虫の感染がみつかった症例は、こちらも参考にしてください 🐶
超音波検査

下痢の場合、お腹の超音波検査で腸や周囲の臓器を確認します。
| 検査の目的 | 説明 | 見つかることがある異常 |
|---|---|---|
| 腸の状態をみる | 腸の厚み・動き・内容物をリアルタイムで観察 | 腸炎、腸閉塞、腫瘍、リンパ節の腫れなど |
| 胃や膵臓の評価 | 下痢と一緒に嘔吐がある時に重要 | 胃炎、膵炎、腫瘍、異物の詰まりなど |
| 肝臓・胆のう・腎臓の確認 | 下痢の原因が消化器以外にあるかを確認 | 肝疾患、胆のう炎、腎障害など |
| 腹水の有無を確認 | 炎症や腫瘍による液体の貯留を見つける | 出血・炎症・リンパ管拡張症など |

超音波検査は、急性膵炎や胆嚢炎、子宮蓄膿症など、便検査だけでは分からない原因を調べるための検査です。
血液検査

血液検査では、脱水や電解質異常、炎症の程度などの全身状態を確認できます。
さらに、肝臓・腎臓・膵臓など内臓の異常がないか調べるのにも役立ちます。
病院で行う治療の例 🏥
補液治療

脱水の補正を目的として、補液治療を行います。
軽度から中等度の脱水であれば皮下輸液を行い、
重度の場合には入院治療とし、静脈点滴を行います。

皮下輸液は、皮膚の下に針を刺して行う点滴方法で、短時間で終わるのが特徴です。
体への負担も少ないため、軽い下痢の治療ではよく用いられます。
注射治療 💉

下痢の治療では、症状や原因に応じて注射による治療を行うことがあります。
主に、症状を和らげる目的と原因に対処する目的で使い分けます。
- 制吐剤(吐き気止め)
嘔吐を伴う場合には、使用します。 - 消化管の炎症を抑える注射
腸の炎症が強い場合。症状や状態に応じて、短期間の使用にとどめるのが一般的です。 - 鎮痛・鎮痙作用のある注射

抗菌薬は、細菌感染🦠が疑われる場合や、重度の炎症がある場合に限り、使用することがあります。
単なる下痢では必ずしも必要ではなく、検査結果や全身状態を見て判断します。
内服治療 💊

下痢の治療では、症状や原因に応じて内服薬(飲み薬)を使用することがあります。
主に、腸の環境を整える目的や症状を和らげる目的で処方されます。
- 整腸剤・プロバイオティクス
腸内環境を整え、下痢の回復を助ける目的で使用されます。
軽度の下痢や、回復期の治療としてよく用いられます。 - 消化管保護薬
腸の粘膜を保護し、刺激を和らげる作用があります。
下痢に伴う腸の炎症や不快感を軽減する目的で処方されます。 - 下痢止め(止瀉薬)
腸の動きを穏やかにすることで、下痢の症状を抑えます。
原因によっては使用を控えることもあり、獣医師の判断のもとで使用します。 - 抗菌薬の内服
細菌感染が疑われる場合に限り、抗菌薬を内服することがあります。
すべての下痢に必要なわけではなく、検査結果や症状を見て慎重に判断します。

下痢の原因によっては、自己判断で市販薬や手元に残っている薬を使用すると、かえって症状が悪化することがあります。注意が必要です。
下痢のときの食事について 🍽️

下痢の治療では、薬だけでなく食事管理もとても重要です。
症状の程度や元気・食欲の有無によって対応が変わります。
食欲がない・嘔吐を伴う場合

元気がなく、嘔吐を繰り返している場合には、無理に食事を与えないことが大切です。
状態によっては一時的に絶食とし、点滴や注射による治療を優先します。
元気・食欲がある場合

可能であれば、半日ほど絶食するか、食事を再開する場合は半量程度から始めます。
下痢が悪化しないか様子を見ながら、徐々に量を増やしていきましょう。

ただし、子犬や高齢犬、痩せている子の場合は無理に絶食を継続せず、早めに動物病院へ相談しましょう。
また、食事を再開して下痢が悪化する場合も、受診をおすすめします。
下痢のときの食事内容は?

下痢のときは、腸に負担をかけない食事が基本です。
基本の考え方⭕️

- 消化しやすい
- 脂肪が少ない
- 刺激が少ない
⬇️ 下痢のときには、消化にやさしいドッグフードを選ぶことが大切です。🐶
ただし、急性膵炎や腎臓の病気などがある場合は、別の療法食が必要になることがありますので、事前に獣医師へ相談しましょう。
▶ 腸内環境を整える療法食(腸内バイオーム)
避けたほうがよいもの❌

- 脂肪分の多い食事
- おやつ
- 人の食べ物
飼い主さんへのひとこと
下痢のときは「食べさせた方がいいのか」「控えた方がいいのか」で迷いがちですが、元気や嘔吐の有無が判断の目安になります。
まとめ|迷ったら早めの受診を 🌼
下痢は一時的な体調不良で起こることもありますが、感染症や中毒、内臓の病気など、背景に原因が隠れている場合もあります。
元気や食欲があり軽度であれば様子を見ることもできますが、ぐったりしている、嘔吐を伴う、症状が続く場合には早めの受診が大切です。

動物病院では、検査によって原因や体の状態を確認し、補液や注射、内服薬、食事管理などを組み合わせて治療を行います。
下痢の原因によっては、自己判断での市販薬や残っている薬の使用が症状を悪化させることもあるため注意が必要です。

下痢のときの食事は回復を左右する重要なポイントです。
消化に配慮したフードが役立つこともありますが、基礎疾患がある場合には適さないこともあるため、迷ったときは獣医師に相談しましょう。
※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
日本獣医内科学アカデミー(JCVIM)
『犬と猫の消化器疾患の診断と治療』
(総論として下痢・嘔吐の鑑別や検査方針の参考)
Ettinger SJ, Feldman EC, Côté E.
Textbook of Veterinary Internal Medicine, 8th ed.
Elsevier, 2017.
(犬猫の急性・慢性下痢、膵炎、全身疾患との関連)
Marks SL, Kather EJ.
“Bacterial-associated diarrhea in the dog: A critical appraisal.”
Journal of the American Veterinary Medical Association (JAVMA).
(下痢における抗菌薬使用の考え方)
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