アレルギー治療中にかゆみが悪化…膿皮症を発症した柴犬ホタテちゃんの症例

皮膚

いつもの治療で良くなっていたのに、急にかゆみが…と驚く飼い主さんも多いです。
犬がかゆがっている原因は、細菌感染やアレルギー性皮膚炎、ノミ・ダニなどさまざまで、見た目だけでは判断が難しいことも多くあります。
今回は、アレルギー性皮膚炎の治療中にかゆみが悪化し、膿皮症を発症していた柴犬のホタテちゃんの症例をもとに、診断や治療の考え方についてご紹介します。

この記事でわかること 📝
  • 犬の膿皮症の原因と症状
  • アレルギー治療中に起こりやすい理由
  • 診断と治療の基本
  • 自宅で気をつけたいケアと再発予防

症例:柴犬のホタテちゃん 🐾

アレルギー性皮膚炎で、分子標的薬による治療を行っています。

お姉さん
お姉さん

ずっと調子よく、痒みがなかったのですが、最近、いつもの痒み止めを飲んでいても背中にカサブタができてすごく痒いようです。
毛も抜けて、ハゲができてしまいました。

私(獣医)
私(獣医)

あらら、診察していきますね!


診察 🐾

ホタテちゃんの背中の皮膚には、円形の脱毛がみられ、その周囲に黄色いカサブタが付着している部分が、5〜6か所認められました。

私(獣医)
私(獣医)

背中はアレルギー性皮膚炎では症状が出にくい部位ですが、湿疹がいくつか見られました。
そのため、細菌感染など別の原因が関係している可能性を考えられます。
今日は、あらためて皮膚の検査を行いましょう。


皮膚の検査について 🐾

皮膚トラブルの原因を調べるため、以下のような検査を行います。


スタンプ検査(押捺検査)

  • 皮膚にスライドガラスやセロテープを軽く押し当てます
  • **細菌やマラセチア(酵母菌)**の有無を確認します

掻爬(そうは)試験

  • 皮膚を少しこすって検体を採取します
  • ニキビダニや疥癬などのダニを調べます
  • 短時間で終わり、出血はごくわずかです
私(獣医)
私(獣医)

皮膚を少し引っかいて検査し、毛穴に潜んでいるニキビダニの検出に重要です。


抜毛検査

  • 毛を数本抜いて調べます
  • **皮膚糸状菌(カビ)**や毛の異常を確認します
  • 痛みは最小限です
私(獣医)
私(獣医)

皮膚糸状菌(カビ)は、被毛に感染するので確認します。


診断:膿皮症(のうひしょう)🐾

【 膿皮症(のうひしょう) 】

私(獣医)
私(獣医)

脱毛している皮膚の周辺でスタンプ検査を行ったところ、球菌と、その球菌を取り込んだ炎症細胞(好中球)が確認されました。

このことから、アレルギーによる炎症に加えて細菌感染が起こり、かゆみが悪化していた可能性が高いと考えられます。

お姉さん
お姉さん

アレルギーだけじゃなかったんですね!どうしたら良いでしょうか?


犬の膿皮症(のうひしょう)とは?🐶

膿皮症(のうひしょう)は、皮膚に細菌(主にブドウ球菌)が感染して起こる皮膚の病気です。
かゆみや赤み、かさぶたなどが見られ、繰り返しやすいのが特徴です。

⬇️ アレルギー性皮膚炎についてはこちらも参考にしてください。🐶


主な症状

  • 皮膚の赤み、ブツブツ
  • かさぶた、フケ
  • 脱毛
  • かゆみ、なめる・掻く
私(獣医)
私(獣医)

膿皮症やアレルギー、ノミ・ダニによる皮膚トラブルは、原因も治療法も異なりますが、
かゆみの症状が似ているため、見た目だけでは判断が難しいことがあります⚠️。


原因・なりやすい背景

  • アレルギー性皮膚炎
  • 皮膚のバリア機能低下
  • 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)
  • 高齢や免疫力の低下
私(獣医)
私(獣医)

膿皮症は、アレルギー性皮膚炎などに伴って起こることも多く、原因となる病気が隠れているケースも少なくありません。


治療の基本

  • 消毒や外用薬
  • 薬用シャンプー
  • 抗生物質(内服)
  • 原因疾患の治療・管理
私(獣医)
私(獣医)

基本的な治療は、消毒やシャンプーによる皮膚のケアです。
症状が重く、全身に広がっている場合には、抗生物質💊を使用します。

抗生物質の治療は数週間続くことが多く、症状がよくなったからといって自己判断で中止してしまうと、再発したり、薬が効きにくくなったりすることがあります。
必ず獣医師の指示に従って治療を続けてくださいね☝️。


治療 🐾

私(獣医)
私(獣医)

今回はホタテちゃんの湿疹の範囲が広いため、
現在使用しているアレルギーのかゆみ止め(分子標的薬)に加えて、
抗菌薬の飲み薬を2週間、併用していきましょう。

お姉さん
お姉さん

かゆみが治まっても、抗菌薬はやめないほうがいいですか?

私(獣医)
私(獣医)

はい、必ず継続して飲んでください☝️

途中で中止してしまうと、再発したり、抗菌薬が効きにくくなることがあります💦

2週間後の再診時に、皮膚の状態を確認し、継続が必要かどうか判断しましょう。

お姉さん
お姉さん

わかりました!しっかり続けていきたいと思います。

私(獣医)
私(獣医)

そして、脱毛した部分には、消毒薬をお渡ししますので、1日2回優しく拭いてください。

週2回ほど、低刺激なシャンプーを使って洗浄と、保湿もしっかり行ってくださいね。


犬のシャンプーの基本的な方法 🐶

シャンプーは皮膚を健康な状態に保つために重要ですが、方法を誤ると皮膚を傷つけたり、乾燥を悪化させてしまうことがあります。
そこで、正しいシャンプーの方法についてまとめました。

私(獣医)
私(獣医)

シャンプーの頻度や方法は、皮膚のコンディションによって変わるので、担当の獣医さんと相談してくださいね☝️

① ブラッシング

  • シャンプー前に毛のもつれや汚れを落とします
  • 皮膚への刺激を減らすため大切です
私(獣医)
私(獣医)

皮膚を傷つけないために、先端の尖ったブラシはおすすめできません。

⬇️ スリッカーブラシは使い方が難しく、皮膚を傷つけてしまうことがあるため、先端が尖っていないブラシをおすすめします。🐶


② ぬるま湯でしっかり濡らす

  • 皮膚までしっかりお湯を行き渡らせます
  • いきなり洗剤をつけないのがポイント
私(獣医)
私(獣医)

お湯の温度は、人が触って「少しぬるい」と感じる程度がおすすめです☝️
熱すぎるお湯は、皮膚を乾燥させる原因になります。


③ シャンプーはよく泡立てて

  • 原液を直接つけず、手やスポンジで泡立ててから使います
  • 皮膚を傷つけないよう、ゴシゴシこすらないようにしましょう。
    カサブタをやさしく取り除くよう、優しくマッサージしながら洗いましょう
私(獣医)
私(獣医)

スポンジなどを使ってシャンプーを少量の水で薄め、しっかりとした硬めの泡を作ってから使用すると、泡切れがよくなり、洗浄力も高まるためおすすめです。

⬇️ シャンプー剤には薬用シャンプーなどさまざまな種類がありますが、まずは低刺激のシャンプーが使いやすいと思います。🐶


④ すすぎは丁寧に

  • 洗い残しはかゆみの原因になります
  • 脇や指の間、首まわりは特に念入りに

⑤ 乾燥

  • しっかりとタオルで水分を取った後、ドライヤーで乾かします
  • ドライヤーの熱に注意(ぬるめ〜送風がお勧めです)
私(獣医)
私(獣医)

ドライヤーの熱をかけすぎると、乾燥から痒みが悪化することがあります。

⑥ 保湿

皮膚の乾燥はコンディションを悪化させ、炎症を引き起こす原因になります。
そのため、保湿剤を使用することが望ましいです。

⬇️ ローション剤はサラッとしてベタつきにくく、シャンプー後はもちろん、乾燥が気になるときにも随時使えるため、使いやすい保湿剤です。


その後、再診 🐾

お姉さん
お姉さん

抗菌薬のお薬を使って、かなり痒みが引いてきました。禿げている部分も、少し毛が生えてきたようです。

私(獣医)
私(獣医)

よかったですね!
細菌感染による黄色いカサブタもすっかりなくなっています。
膿皮症は落ち着いたので、抗菌薬はここで終了しましょう。

引き続き、アレルギー性皮膚炎の治療は継続していきましょう。

もし今後、膿皮症を繰り返すようなことがあれば、
まずはシャンプーや保湿、湿疹部分の消毒などで対応していきましょう。


まとめ 🌼

犬がかゆがっている場合、細菌感染、アレルギー性皮膚炎、ノミ・ダニの感染など、原因はさまざまで、それぞれ治療方法も異なります。
しかし、かゆがる様子はどれもよく似ているため、見た目だけで判断するのは難しいことが多いです。

動物病院では、かゆみの出ている場所や湿疹の状態、皮膚の検査結果などをもとに、原因を見極めたうえで治療を検討します。

犬の膿皮症は細菌感染が原因の皮膚病で、治療は消毒やシャンプーによる局所ケアを基本とし、症状が重い場合には抗菌薬の内服を行います。
また、アレルギー性皮膚炎などが背景にあり、皮膚のバリア機能が低下した状態で発症することも少なくありません。

今回ご紹介した、アレルギー性皮膚炎の治療中にかゆみが悪化し、膿皮症を発症していた柴犬のホタテちゃんの一例が、皆さまの参考になれば幸いです。


※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

辻本 元・ほか編『小動物皮膚科臨床ノート』インターズー

日本獣医皮膚科学会「犬の膿皮症」解説ページ

Miller WH, Griffin CE, Campbell KL. Muller & Kirk’s Small Animal Dermatology, Elsevier

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