猫の尿路トラブルの中でも、特に注意が必要なのが シュウ酸カルシウム結晶や結石 です。飲水量や尿の濃さ、pHバランスが影響してできるこの結石は、症状がなく静かに進行することも多く、気づいたときには尿道が詰まってしまう危険な状態に陥ることもあります。
今回ご紹介する銀ちゃんも、元気に見えていたのに突然の尿道閉塞で来院し、検査でシュウ酸カルシウム結石が見つかりました。
溶けないタイプの結石だからこそ、早期発見と日頃の予防がとても大切です。
「うちの猫は大丈夫」と思っている方にも、ぜひ知っていただきたい内容です🐱
症例:猫の銀ちゃん 🐱
雑種の猫の銀ちゃん、男の子です。


昨日までなんともなかったのに今朝から急に、トイレにずっと座って、辛そうにしています💦

診察 🐱
お腹を触診してみると、鶏の卵くらいの大きさの、硬い膀胱に触れます。

膀胱に力が入って、緊張しています。尿道が詰まって尿が出せない状態の可能性がありますので、検査してみましょう!
検査 🐱
レントゲン検査


レントゲンでは、尿道だけでなく、膀胱や腎臓にも結石が写っていました。
この結石が尿道につまってしまい、今回の閉塞を引き起こした可能性が高いです。

血液検査

尿道がつまると腎臓にも負担がかかり、腎機能が落ちてしまうことがあります。
そのため、血液検査で腎臓の状態をチェックします。
緊急処置🚨:尿道の閉塞の解除🐱

血液検査を待つ間に、まずは急いで尿道の詰まりを解除する処置をします。
鎮静をかけてカテーテルを入れ、尿道に詰まった結石をいったん膀胱の方へ戻して、尿が流れるようにします。

わかりました。よろしくお願いします。


同時に採尿をして、尿検査を実施します。
尿検査🐱

膀胱に結石があるときは、尿検査で結石の種類を推測することが大切です。
ストルバイトのように食事で溶けるタイプか、シュウ酸カルシウムのように溶けないタイプかで、治療の進め方が変わります。
⬇️ 尿検査についてはこちらも参照してください 🐱
結果 🐱


銀ちゃんの尿道につまっていた結石🪨は、無事に膀胱へ戻すことができました。
さらに、血液検査🩸の結果にも異常はなく、腎臓の状態も問題ありませんでした。

よかったです💦

ただ、膀胱の中にある結石は再び動いて、いつ尿道に詰まってもおかしくない状態です。
尿検査の結果から、銀ちゃんの結石はシュウ酸カルシウムである可能性が高いと分かりました。このタイプの結石は溶けないため、再度詰まりを起こすリスクが高いことが心配です。
そのため、自然排出を待つ場合もありますが、結石が膀胱内にある今の段階で、手術で取り除く方法も治療の選択肢のひとつになります。


手術、ですか??!
🐱 猫のシュウ酸カルシウム結晶とは?

尿の中で カルシウム+シュウ酸 が結びついて結晶(小さな粒)になったもの。
放置すると 尿石(シュウ酸カルシウム結石) に進行することがあります。
■ どんな時にできやすい?

- 尿が濃い(脱水)
- p Hが低い、酸性に傾いた尿が続く
- 飲水量不足
- カルシウムやビタミンDの代謝異常
- 遺伝的要因
■ ややリスクが高いといわれる猫種

- ペルシャ
- ヒマラヤン
- ラグドール
- シャム(サイアミーズ)
- メインクーン
- スコティッシュフォールド
これらの猫種は、
・腎臓・尿路系のトラブルが比較的多い
・遺伝的な代謝の傾向
などが背景に関係している可能性が指摘されています。

ただし、どの種でも起こりうるので、注意が必要です⚠️
■ 主な症状🚽
■ ほとんどは無症状!

- 健康診断の 尿検査で偶然見つかる ケースが多い
- 小さな結晶だけでは痛みや炎症を起こしにくい
■ 症状が出るパターン

- 頻尿、トイレに何度も行く
- 尿が少ししか出ない
- 血尿
- 排尿時に痛がる
- オス猫では 尿道閉塞(命に関わる急変) の原因にも
- 腎臓に石がある猫は、嘔吐、食欲低下、腎盂腎炎
など、腎臓関連の症状が出ることがあります。

膀胱炎のような症状が出ることもありますが、無症状のことも多いです。
気づいた時には進行している場合もあるため、注意が必要です。
手術 🐱
後日、銀ちゃんは、膀胱内の結石を取り出す手術を行いました。


膀胱内の結石は無事に取り出すことができました。
大きさは2〜5mmほどのものが、全部で5つありました。
これから結石分析に出して、成分を詳しく調べていきます。


またいつ尿道に詰まって、銀が苦しむかもしれないことを思うと、手術が出来てよかったです。

今後は、再び結石ができないように、予防と定期的な検診がとても大切です。
シュウ酸カルシウム結石は再発しやすいタイプのため、食事管理や水分摂取、尿検査などを継続していくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

シュウ酸カルシウム結晶の予防について🐱
シュウ酸カルシウム結石は再発しやすいタイプのため、食事管理や水分摂取、尿検査・超音波検査などを継続していくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
1)食事療法(重要)🍽️

- シュウ酸カルシウム結晶のコントロール用療法食
- 尿を、適正pHに維持するよう調整
- ミネラルバランス(Ca、Mg、Na)を適正化

シュウ酸カルシウム結晶を溶かすことはできませんが、新たにできないように、予防することが大切です。
⬇️このような療法食を主におすすめしています。🐱
⬇️**尿路疾患に考慮した**、一般食と療法食は違うので、注意してくださいね!動物病院で確認すると安心です🐱
2)飲水量を増やす

- 自動給水器や複数の水飲み場を用意する。
- ウェットフード、スープやふやかしフードも◎
⬇️猫は、流水を好み、飲水が促される傾向があるようです。このような水飲み場もおすすめです🐱
まとめ 🌼
シュウ酸カルシウム結晶は、飲水量の不足・尿の濃さ・尿のpH が大きく影響して形成されます。なりやすい猫種は知られていますが、どんな猫にも起こりうる結石です。
尿検査で pH が酸性寄り であったり、微細な結晶が見つかった段階で治療を始められれば、尿管や尿道の閉塞、あるいは大きな結石による腎障害を防ぐことができます。

さらに、シュウ酸カルシウム結石は無症状のことも多く、気づいたときには進行しているケースが少なくありません。進んだ状態では、突然の尿管・尿道閉塞を引き起こし、命に関わる事態につながることもあります。
この結石は溶けないため、治療が難しいのも特徴です。だからこそ、早めの尿検査と生活管理が、とても重要なポイントになります。
今回、尿道閉塞が起きてシュウ酸カルシウム結石が見つかった銀ちゃんのケースが、皆さまの猫ちゃんの健康管理の参考になれば幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
小動物の医学(エデュワードプレス)猫泌尿器疾患の章
Ettinger SJ, Feldman EC. Textbook of Veterinary Internal Medicine. 8th ed.
International Society of Feline Medicine (ISFM). Guidelines on Feline Lower Urinary Tract Disease.


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