犬が繰り返し嘔吐・下痢したら?急性膵炎の症例と治療のポイント

下痢

犬が急に吐いたり下痢をしたりすると、「少し様子を見ても大丈夫?」と悩む飼い主さんも多いでしょう。
しかし、嘔吐が何度も続く、ぐったりしているといった症状は、注意が必要なサインです。

今回は、急性膵炎になったシュナウザーのももちゃんの症例を通して、速やかな受診と治療の重要性、そして急性膵炎についてまとめました。


🐶 症例

シュナウザーのももちゃん、10歳、女の子

お母さん
お母さん

昨日の夕飯後、何度も何度も吐いて、ぐったりしています。
朝になっても震えてぐったりして、下痢もしています。
おしっこは濃いオレンジ色でした・・・


診察 🩺

ももちゃん、診察台でも元気がなく、俯いて震えています。

私(獣医)
私(獣医)

お腹を触ると強い痛みがあり、皮膚の弾力が低下していて脱水も認められます。
さらに、耳や白目が黄色く見えるため、黄疸が起きている可能性があります。

この状態は、単なる一時的な嘔吐や下痢による症状とは考えにくいため、
原因を特定するために より詳しい検査 をさせていただく必要があります。


検査 📝

腹部超音波検査

超音波検査では、胃腸炎、膵炎、胆嚢疾患、腫瘍、腎臓の異常、子宮蓄膿症(未避妊のメス)など、さまざまな病気の鑑別に役立ちます。

私(獣医)
私(獣医)

ももちゃんのお腹の中では、膵臓が腫れて、腹膜炎が起きているようです。

血液検査

血液検査では、脱水や電解質異常、炎症の程度などの全身状態を確認できます。
さらに、肝臓・腎臓・膵臓など内臓の異常がないか調べるのにも役立ちます。

私(獣医)
私(獣医)

ももちゃんは炎症が強く、肝臓の数値も上昇しており、黄疸が見られます。
さらに、犬膵特異的リパーゼ(Spec cPL)の値が高値でした。

診断:急性膵炎🔥

私(獣医)
私(獣医)

以上の検査結果から、ももちゃんは急性膵炎である可能性が高いと考えられます。
犬の急性膵炎は、症状の程度によっては命に関わることもある怖い病気です。
そのため、さっそく入院して、治療を開始することをおすすめします。

お母さん
お母さん

もも、軽い胃腸炎ではなかったんですね!


🔥 急性膵炎とは?

膵臓が急に強い炎症を起こし、
激しい腹痛・嘔吐・食欲不振 などの症状が出る命に関わる病気。

膵臓の消化酵素が“自分の膵臓を消化してしまう”ことから起こります。

✅ 主な原因

はっきりはしていませんが、危険因子は以下のものがあります。

  • 高脂肪食
  • 肥満
  • 高脂血症
  • 糖尿病
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
  • 薬剤の影響(まれ)
  • ストレス・手術後など
私(獣医)
私(獣医)

ミニチュア・シュナウザーは、生まれつき高脂血症になりやすいので、膵炎の好発犬種です。

🔥 急性膵炎の特徴(重症になりやすい)

  • 激しい嘔吐を繰り返す下痢(ときに血便)
  • 強い腹痛(うずくまる/動きたがらない)
  • ぐったりして元気がない
  • 食べ物・水も受け付けない
  • 重症では
    黄疸、ショック、腹膜炎 など命に関わる症状へ進行
私(獣医)
私(獣医)

激しい嘔吐、ぐったりなど、全身症状が目立つのが大きなポイントです!

✅ 治療

急性膵炎は 早期治療が重要。主な治療は入院管理が多い。

  • 輸液(点滴):最重要
  • 痛み止め吐き気止め抗生剤(必要時)
  • 食事管理(低脂肪食)
  • 重症例では ICU 管理、栄養チューブが必要になることも。
私(獣医)
私(獣医)

🔥炎症を抑える薬(犬膵炎急性期用抗炎症剤、ステロイド、蛋白分解酵素阻害薬など)も駆使して、お腹の中の炎症を治めることが大切です!


入院治療、退院へ

ももちゃんは入院治療を開始し、点滴と炎症を抑える薬、痛み止め、吐き気止めなどを組み合わせて治療を進めていきました。

翌日には嘔吐は治まりましたが、黄疸や炎症の改善には時間がかかり、慎重に経過を見ていきました。

入院から5日目には食事も自力で取れるようになり、無事に退院となりました。

お母さん
お母さん

もも、元気が出てきて、ご飯も食べれるようになってきて本当によかったです!

私(獣医)
私(獣医)

ここで退院となります。ただし、膵炎は体質によって再発しやすい子も多く注意が必要です。
今後は低脂肪食を意識しながら、再発予防に取り組んでいきましょう。

✅ 自宅でできる膵炎の予防

  • 高脂肪のおやつ・人の食べ物を控える
  • 体重管理(肥満を防ぐ)
  • 持病(糖尿病・クッシングなど)のコントロール
  • 手術後や旅行など、急な生活変化に気を付ける

⬇️ 病院でお勧めしている、低脂肪食です。🐶
膵炎だけではなく、胆嚢疾患や高脂血症など「脂肪が負担になる病気」全般で使うことがあります。


まとめ 🌼

犬の下痢や嘔吐は、動物病院でもよく見られる症状ですが、中には重大な病気が隠れていることもあります。
ぐったりしている、嘔吐が頻繁に続く場合は、早めの受診をおすすめします。

急性膵炎は軽症では回復例も多いですが、重症では命に関わることもある怖い病気です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、食生活や肥満、高脂血症、ホルモンの異常などが発症の素因になります。
高脂肪のおやつ・人の食べ物を控えるなど、普段から膵炎を予防する生活を心がけることも大切です。

今回は、急性膵炎になったシュナウザーのももちゃんの一例、参考にしていただければ幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。

参考文献

Management of acute pancreatitis in dogs: a critical appraisal with focus on feeding and analgesia — Mansfield C. & Beths T. (2015).

Advances in the diagnosis of acute pancreatitis in dogs — Cridge H., Twedt D.C., Marolf A.J. 他 (2021).

この1年で診断治療した犬の急性膵炎の20例 — 日本動物臨床医学会誌 (2015).

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