年齢を重ねたわんちゃんと過ごす時間は、愛おしく、かけがえのないものです。
同時に、体の変化や病気、介護など、悩みや不安が増える時期でもあります。
今回は、20歳になったももちゃんの歩みを振り返りながら、高齢犬との暮らしについて考えてみたいと思います。
症例:トイプードルのももちゃん 🐶

今日は、トイプードルのモモちゃんが再診に来てくれました。
モモちゃんは先月20歳を迎えた、立派な“超・高齢犬”です。


ここまで、いろいろあったけど、20歳を迎えることができました。

ついに20歳!おめでとうございます👏!
ももちゃんの治療歴 🐶

ここで、ももちゃんの20年の治療の歴史を振り返ってみます。
2歳ごろ〜 🐾
🔸 分離不安
若い時には、
分離不安があって、精神安定剤を使っていたこともありました。


分離不安とは、飼い主と離れることで強い不安やストレスを感じ、問題行動が出てしまう状態のことです。
よく見られる症状

飼い主が外出すると、次のような行動が見られます。
- 無駄吠え・遠吠え
- 物を壊す、ドアや床をひっかく
- トイレの失敗
- 過剰なよだれ、パンティング
- 食欲低下、嘔吐や下痢
※「わがまま」ではなく、不安による行動です。
原因・なりやすい犬

- 飼い主への依存が強い
- 生活環境の変化(引っ越し、家族構成の変化)
- 高齢犬(認知機能低下が関与することも)
- 子犬期の社会化不足
対策・治療の基本

- 短時間の留守番から練習する
- 出かける・帰宅時に過度に構わない
- 知育トイや安全なおもちゃを活用
- 重症例では行動療法+抗不安薬を併用することも

※他の病気(認知症、消化器疾患など)が隠れていないかの確認も大切です。
⬇️ 不安を和らげるサプリメントも選択肢のひとつです。
抗不安薬💊を使用する前に、サプリメントで症状の改善がみられるか確認してみるのも良いでしょう。
受診の目安

- 留守番のたびに強いパニックがある
- 自傷や激しい破壊行動がある
- 高齢になって急に症状が出た

この場合は、早めに動物病院に相談しましょう。
7歳ごろ 🐾
🔸 皮膚炎(膿皮症)

細菌感染による皮膚炎(膿皮症)を繰り返しながらも、
消毒や内服薬、薬用シャンプーでの治療を一生懸命続けてきました。

膿皮症(のうひしょう)とは、皮膚に細菌(主にブドウ球菌)が感染して起こる皮膚炎です。
かゆみや赤み、かさぶたなどがみられ、繰り返しやすいのが特徴です。
主な症状 🐾

- 皮膚の赤み、発疹
- フケ・かさぶた
- 脱毛
- かゆみ、なめる・掻く行動

膿皮症(のうひしょう)は、細菌感染が原因で起こる皮膚のトラブルです。
かゆみなどの症状が似ていても、アレルギー性皮膚炎とは発症の仕組みや治療方法が異なるため、注意が必要です。
⬇️ アレルギー性皮膚炎についてはこちらも参考にしてください🐶


原因・なりやすい背景 🐾
- アレルギー(食物・環境)
- 脂漏症、皮膚のバリア低下
- 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群)
- 高齢、免疫力の低下

膿皮症は原因となる病気が隠れていることも多いです。
治療の基本

- 消毒や外用薬
- 薬用シャンプー
- 抗生物質(内服)
- 原因疾患の治療・管理
症状や再発頻度により、治療期間は数週間〜数か月になることもあります。
⬇️ 症状に応じて使用するシャンプーの種類は変わりますが、まずは低刺激シャンプーが使いやすいでしょう。🐶
受診の目安

- 何度も繰り返す
- 治療してもなかなか良くならない
- 強いかゆみや脱毛がある
このような場合は、原因の精査が大切です。
10歳ごろ 🐾
🔸 脾臓の腫瘤
超音波検査の際、偶然、脾臓に1cmほどの小さな出来物が見つかりました。

定期的にエコーで確認してきましたが大きな変化はなく、現在は様子を見ています。

🔸 僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
心臓の聴診で雑音が確認され、軽度の僧帽弁閉鎖不全症が見つかりました。
その後も定期的に検査を行いましたが、投薬治療が必要ない程度で安定して経過しています。
⬇️僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらも参考にしてください🐶


16歳ごろ 🐾

🔸 緑内障
右眼が緑内障となり、残念ながら視力はなくなってしまいました。
眼圧が下がらず痛みが強かったため、苦痛を軽減するために眼圧を下げる処置を行いました。

緑内障とは、眼圧(目の中の圧)が異常に高くなり、視神経が障害される病気です。
進行が早く、強い痛みを伴うことがあり、放置すると視力を失ってしまいます。
主な症状

- 目の充血、白く濁る
- 目をしょぼしょぼさせる、触られるのを嫌がる
- 元気・食欲の低下
- 視力低下、失明

眼の痛みによって元気がなくなり、生活の質(QOL)が低下してしまいます。
また、進行すると失明につながることがあります。
原因 🐾
- 先天的な眼の構造異常
- 水晶体脱臼、ぶどう膜炎などの眼の病気
- 加齢に伴う変化

比較的なりやすい犬種に、
- 柴犬
- シー・ズー
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ビーグル
- トイ・プードル
- ダックスフンド
- チワワ
などが知られており、注意が必要です🐶
治療の目的

- 眼圧を下げること
- 痛みを抑えること
- 残っている視力をできるだけ守ること

点眼薬、内服薬、必要に応じて処置や手術が選択されます。
すでに視力がない場合でも、痛みの管理はとても重要です。
受診の目安

- 目が赤い、急に様子がおかしい
- 片目を強く気にする
- 高齢犬で突然の眼の変化がある
早期治療が視力と生活の質を左右します。
18歳ごろ 🐾
🔸 けいれん発作
初めてけいれん発作が起こりました。
モモちゃんは高齢であることから、ご家族と相談のうえMRI検査は行いませんでした。
その後、発作が何度か続いたため抗けいれん薬を開始し、
1日2回の内服で、現在はけいれんはほぼ落ち着いています。

⬇️ 痙攣(けいれん)発作については、こちらも参考にしてください 🐶
19歳ごろ 🐾

🔸 高齢犬の介護へ
筋力が衰え、立つことができなくなりました。
寝たきりの状態が続き、肩や腰の皮膚に床ずれができてしまいました。
傷を消毒し、敷物を工夫しながら、こまめに寝返りをさせてケアを続けていました。
認知機能の低下により、夜鳴きをするようになりました。
その影響で、ご家族の負担も大きくなってきました。
効果は穏やかですが、精神安定剤を試してみることにしました。
「夜に鳴くことはありますが、以前よりはかなり楽になりました」と、ご家族は話されています。

⬇️ 高齢犬のケアについては、こちらも参考にしてください。🐶
診察:20歳になりました。🐶

高齢となり、筋肉が減ってとても痩せてしまいましたが、
それでも元気な姿を見せてくれた、ももちゃん。
緑内障の処置後、落ちくぼんだ右眼には目やにもなく、
口まわりも清潔で、床ずれもよくなっていました。
日々のケアを続けてこられたご家族の努力には、
本当に頭が下がる思いです。

ももは、食欲だけはずっとばっちりです!
今日は、抗けいれん薬と、
精神安定剤があると、夜に眠れる時間が長くなるので追加で欲しいです。
それから、お尻や口まわりを拭くための消毒薬もなくなってきたので、そちらもお願いします。

よく食べてくれるのは安心しますよね。
今月も心臓の状態は安定しています。
お薬は、追加でお渡ししますね。
また元気な姿を見せてくれるのを、楽しみにしています。
まとめ 🌼
犬も高齢化の時代を迎えています。
大切に育ててこられたからこそ、一緒に過ごせる時間が長くなり、喜びも増えますが、その一方で、さまざまな問題に直面することも増えてきます。
高齢のわんちゃんとの生活は、必要なケアが多く、決して楽なものではないかもしれません。
それでも、そばにいてくれるだけで心が温かくなる、かけがえのない日々があります。
痛みや苦しみをできるだけ減らし、穏やかに過ごしてもらえるように。
そんな想いに寄り添い、少しでも支えになれる存在でありたいと、私自身も日々感じています。
20歳を迎えたももちゃんの一例が、皆様の参考になれば幸いです。

※本記事は、獣医師としての臨床現場での経験に基づいてまとめています。
個々の動物によって症状は異なりますので、気になる場合は動物病院での診察をおすすめします。
参考文献
日本獣医師会:
「高齢動物(犬・猫)のケアと生活の質」
(高齢犬・猫の健康管理やQOLについての総説)
Ettinger SJ, Feldman EC, Côté E.
Textbook of Veterinary Internal Medicine, 8th ed.
Elsevier, 2017.
Landsberg G, Hunthausen W, Ackerman L.
Behavior Problems of the Dog and Cat, 3rd ed.
Saunders, 2013.


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